目次
IEC 62471(光生物学的安全性)の試験報告書を受け取った後、「リスクグループ3とはどういう意味か」「このデータで製品ラベルにどう記載すればよいか」「曝露限界値との比較結果はどう解釈するか」といった疑問を持つ担当者は少なくありません。
この記事では、IEC 62471試験報告書の構成と各項目の読み方を整理し、リスクグループ判定結果を製品開発・製品対応に活かすための実務的な解説を行います。
IEC 62471試験報告書は、試験機関によって様式が異なりますが、一般的に以下のセクションで構成されます。
| セクション | 主な記載内容 |
|---|---|
| 発行機関情報 | 試験機関名・認定番号・認定マーク・署名 |
| 試験対象の識別情報 | 製品名・型番・シリアル番号・サンプル状態 |
| 適用規格情報 | 適用したIEC 62471のバージョン・評価ハザード |
| 測定条件 | 測定距離・方向・動作条件・使用機器 |
| 測定結果・判定 | 各光ハザードの測定値・基準値・リスクグループ判定 |
| 参考情報 | 免責事項・再試験条件・報告書の有効範囲 |
試験機関によっては、測定データを附属書(Annex)として別添するケースもあります。
報告書受領時に最初に確認すべきは、発行機関の認定情報です。以下を確認してください。
ILAC-MRAマークが付いた試験報告書は、ILAC-MRA加盟認定機関から認定を受けた機関が発行したものであり、国際的な取引先への提出にも対応しやすいです。ILAC-MRAマークの意味についてはcal01記事、ISO/IEC 17025認定についてはcal02記事をご参照ください。
報告書が自社の依頼した製品について発行されたものであることを確認するために、以下の情報を確認してください。
IEC 62471の評価は、製品から特定の距離・方向で測定した放射照度・放射輝度などを用いて行います。測定距離・方向の設定は試験結果のリスクグループ判定に直接影響します。
報告書に記載された測定距離・方向が、製品の実際の使用条件(ユーザーが光源からどの距離で使用するか)に対応しているかを確認してください。測定条件と実際の使用条件の乖離がある場合は、試験機関に確認することを推奨します。
試験で使用した測定機器(分光放射照度計・放射輝度計等)の情報と、その機器が適切に校正されているかが記載されていることを確認してください。
使用機器が校正されていることが試験結果の信頼性の基盤です。校正証明書の読み方についてはcal05記事をご参照ください。
製品がどのような動作条件で試験されたかを確認してください。
依頼時に指定した動作条件と一致していることを確認し、相違がある場合は試験機関に問い合わせてください。
IEC 62471では、光生物学的ハザードのレベルに応じて製品を4段階のリスクグループに分類します。
| リスクグループ | 英語表記 | 主な意味 |
|---|---|---|
| 免除(Exempt) | Exempt | 測定値が最も厳しい曝露限界値を超えない。通常の使用条件下で実質的な光生物学的リスクが存在しないと評価される |
| リスクグループ1 | RG1 | 曝露限界値の超過リスクが低い。制限なく使用できるが、使用上の注意が推奨される場合がある |
| リスクグループ2 | RG2 | 曝露限界値の超過リスクが中程度。反射などの嫌悪反応(まぶしさ等)によって保護されると考えられる |
| リスクグループ3 | RG3 | 曝露限界値の超過リスクが高い。非常に短時間の曝露でも危険な可能性がある |
リスクグループの定義は適用するIEC 62471のバージョンによって詳細が異なる場合があります。
リスクグループは、製品が「危険かどうか」ではなく、「光曝露のリスクのレベルがどの程度か」を示します。リスクグループが高いからといって直ちに販売不可になるわけではなく、適切な安全対策・ラベル表示・使用上の注意によって製品を安全に提供できる場合があります。
販売可否や必要な安全対策は、適用する市場の規制・法令によって異なるため、個別の確認が必要です。
リスクグループの判定は、各光ハザードの測定値と曝露限界値(EL:Exposure Limit)との比較によって行われます。報告書では、測定値とELの比(測定値/EL)または差が記載されることがあります。
具体的な判定基準はIEC 62471の原典を参照してください。
IEC 62471では、複数の光生物学的ハザードが個別に評価されます。主要なハザードの意味を整理します。
可視光から近紫外光(概ね300〜700 nm)の範囲の光が目の網膜に及ぼす光化学的な障害リスクを評価します。LED照明や表示装置のリスク評価で特に重要な項目です。青色成分が多い光源(青色ダイオードベースの白色LED等)では、このハザードの評価値が高くなる傾向があります。
可視光から近赤外光(概ね380〜1400 nm)が網膜に与える熱的な障害リスクを評価します。輝度が高い光源(高輝度LED・ハロゲンランプ等)では特に注意が必要です。
紫外線(概ね200〜400 nm)が皮膚・眼(角膜・水晶体)に与える光化学的な障害リスクを評価します。UV-AやUV-B成分を含む光源、殺菌用UV-C機器では主要な評価項目となります。
IEC 62471では上記の他に、赤外線放射(IR)による皮膚・眼への熱的リスクなど複数の評価項目があります。 報告書に記載された全評価項目を確認し、各ハザードについてのリスクグループを把握してください。
IEC 62471の試験結果に基づいた製品ラベル表示については、適用市場の規制要件・顧客要件・製品カテゴリに応じた確認が必要です。
リスクグループ別の製品対応の一般的な考え方は以下の通りです(最終的な対応は一次情報を確認の上で決定してください)。
| リスクグループ | 製品対応の一般的な考え方 |
|---|---|
| Exempt | 光安全性に関する特別なラベル表示が不要な場合が多い(用途・市場による確認が必要) |
| RG1 | 通常は特別な制限なく使用可能。使用上の注意の記載が推奨される場合がある |
| RG2 | 直視しないよう促す注意表示、使用上の注意・警告文の記載が推奨される場合がある |
| RG3 | 専門的な訓練を受けた者のみによる使用や特別な安全手順が求められる場合がある |
試験報告書の結果は、製品仕様書や取扱説明書の以下の項目に反映できます。
具体的な記載内容は、適用市場の規制・顧客要件を確認した上で決定してください。
取引先・バイヤーから光安全性試験結果の提出を求められた場合、ISO/IEC 17025認定機関が発行しILAC-MRAマークが付いた試験報告書であれば、信頼性の裏付けとして活用できます。
提出前に以下を確認してください。
EU市場への輸出では、特定の製品カテゴリについてIEC 62471またはEN 62471の試験結果がCEマーキングに必要な技術文書の一部となる場合があります。 輸出先市場の規制要件は個別に確認が必要ですので、専門家にご相談ください。
試験報告書の判定結果や測定条件に疑問がある場合は、以下の事項を整理して試験機関に問い合わせてください。
以下のような場合に再試験・追加試験を検討してください。
再試験の費用・期間の目安については、cal07記事「光安全性試験の費用と納期の目安」をご参照ください。
Q1. リスクグループ2(RG2)の判定が出た製品は販売できますか?
リスクグループ2であっても、製品を販売できないとは限りません。対象市場の規制・顧客要件に応じた安全表示やラベルの記載、使用上の注意の付与などの対応が求められる場合があります。規制要件は販売先市場によって異なるため、個別の確認が必要です。
Q2. 試験報告書の「Blue Light Hazard(青色光危険)」の評価値が高い場合、製品設計をどう変えればよいですか?
青色光の放射量を低減するための設計変更(スペクトル調整・輝度低減・拡散カバーの追加など)が選択肢として挙げられます。ただし、設計変更後は再試験が必要になります。試験機関に相談しながら対応方針を検討することを推奨します。
Q3. 試験報告書は何年間保管すべきですか?
保管期間は顧客要件・品質マネジメント規格(ISO 9001等)・適用法規によって異なります。製品の市場投入後も含めて、製品ライフサイクルに応じた保管期間を設定することを推奨します。
Q4. 試験報告書に記載された「判定不能」や「測定限界外」の結果はどう対処すればよいですか?
「判定不能」や「測定限界外」の結果が記載された場合は、その原因(サンプル状態・測定条件・機器限界等)を試験機関に確認してください。追加測定や試験条件の見直しが必要な場合があります。
IEC 62471試験報告書を正しく読み解くためには、①発行機関の認定確認、②リスクグループ判定の意味の理解、③判定根拠となる測定条件の確認の3点が基本です。
報告書の判定結果を製品ラベル・仕様書・顧客対応に活かすことで、光安全性に関する製品品質の説明責任を果たせます。
次のステップとして、以下の関連記事もご参照ください。
IEC 62471:2006、IEC 62471:2023(各一次情報はIECウェブストアで確認してください。)
IEC 62471試験報告書の内容についてご不明な点、または報告書の製品対応・ラベル設計へのご活用についてご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
最短7日間で校正完了光安全性の測定のご相談はこちら