光害防止条例とは|屋外照明の規制と自治体・ガイドラインの確認ポイント

この記事の監修

山西 幸男

旭光通商株式会社 取締役

山西 幸男

光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。

この記事でわかること

屋外照明・街路灯・防犯灯・投光器・屋外サイネージを新設または更新するとき、「光害(ひかりがい)」の規制をどこまで気にすべきか迷う場面があります。この記事では、次の点を実務目線で整理します。

  • 光害の規制は全国一律ではないこと。「3層」に分けて考える
  • 環境省「光害対策ガイドライン」の位置づけ(技術的助言であり法的義務ではない
  • 光害防止条例・星空保全条例の実例(日本初の旧美星町、鳥取県 ほか)と、条例で定められがちな内容
  • 景観計画・屋外広告物条例という別ルートの規制
  • 自分の自治体に何があるかを調べる手順
  • 屋外デジタルサイネージ、ダークスカイ認証(民間認証)の位置づけ

上方光束比(ULR)や鉛直面照度などの指針値・評価の技術は、JIER-138を軸にした光害動向の解説記事CIE 150の解説記事で扱っています。本記事は「どの制度を、どう確認するか」に絞ります。

対象地域は日本、内容は2026年8月31日時点の公開情報に基づきます。


光害の規制は「一律」ではない — 3層で考える

屋外照明の光害に関わるルールは、性格の異なる3つの層に分かれています。混同すると「守るべきもの」を見誤ります。

性格 守らないと
① ガイドライン 環境省「光害対策ガイドライン」 技術的助言・配慮事項 それ単独では罰則なし
② 自治体の条例 光害防止条例、星空保全条例 地域の法規(自治体ごとに有無・内容が異なる) 条例の定めによる(努力義務〜基準・届出義務まで幅がある)
③ 別ルートの規制 景観計画、屋外広告物条例 別の目的の法規に照明・広告物の基準が含まれることがある 届出違反・是正指導・広告物の許可取消など

以下、それぞれを見ていきます。

① 環境省「光害対策ガイドライン」— 技術的助言(法的義務ではない)

環境省の「光害対策ガイドライン」は、良好な屋外光環境を形成するための考え方と配慮事項を示した技術的な助言です。地方公共団体が条例や整備方針を検討するとき、また設計者・事業者が屋外照明を設計・運用するときの参考資料という位置づけで、これ自体が罰則を伴う義務を課すものではありません。

平成10年(1998年)に初版、平成18年(2006年)に改訂、そして令和2年度の改訂を経て令和3年(2021年)3月に改訂版が公表されています。令和3年改訂版は、初版時には普及していなかったLED照明の特性を踏まえた対策と、国際基準であるCIE 150:2017への対応が主な見直し点です(環境省 報道発表 2021年3月26日)。

評価の枠組み(里地・郊外・都市周辺・都市中心部などの光環境類型ごとに、上方光束比・配光・輝度・光色を見る)と、各類型の具体的な指針値については、ガイドライン本文(令和3年3月改訂版)をご確認ください。本記事では数値を断定しません。指針値の内容と実務での使い方は、上記の JIER-138 解説記事で扱っています。

② 自治体の光害防止条例・星空保全条例 — 地域の法規

ガイドラインと違い、条例は制定した自治体の中で法的拘束力を持ちます。ただし、光害に関する条例を持つ自治体は全国の一部で、内容も「理念と努力義務のみ」から「区域を指定して照明の基準や届出を求める」ものまで幅があります(次章で実例)。

③ 景観計画・屋外広告物条例 — 別ルートの規制

光害防止を単独の条例で定めていない自治体でも、景観計画屋外広告物条例の中で、夜間照明・ライトアップ・広告物照明の基準や届出を求めていることがあります。特に屋外デジタルサイネージや大型看板の照明は、この層で扱われるケースが多くあります。


光害防止条例・星空保全条例の例

日本初 — 旧美星町(現・井原市美星町)1989年

日本で最初に光害防止を目的とした条例を制定したのは、岡山県の旧美星町(現・井原市美星町)です。「美しい星空を守る美星町光害防止条例」を平成元年(1989年)11月に制定し、これが国内の星空保全・光害防止条例の先駆けとされています。市町村合併後は「美しい星空を守る井原市光害防止条例」として運用され、令和2年(2020年)12月に改正されています。生活に必要な夜間照明を確保しつつ、光害から星空を守ることを目的とし、市による知識の普及・技術指導、市民・事業者の努力義務などが定められています。

都道府県レベル — 鳥取県 星空保全条例

鳥取県は「鳥取県星空保全条例」で、光害の少ない地域を「星空保全地域」として指定する制度を設けています。指定地域では屋外照明に関する配慮が求められ、県民・事業者への啓発や、県自身が率先して光害防止に取り組むことが規定されています。都道府県が条例で区域指定の仕組みを持つ例です。

その他の自治体と条例の広がり

このほかにも複数の市町村・都道府県が、光害防止・星空保全を目的とした条例や、景観条例の中の照明規定を持っています。条例の一覧や類型の整理は、一般財団法人 地方自治研究機構(RILG)の資料などが参考になりますが、現行の条文は必ず各自治体の例規集で確認してください。制定・改正の時点によって内容が変わっています。

条例で定められがちな内容

条例の作りは自治体ごとに異なりますが、次のような要素が含まれることが多くあります。

  • 目的・定義(何を「光害」とするか)
  • 自治体・住民・事業者それぞれの責務(多くは努力義務
  • 特定区域(星空保全地域など)の指定と、その区域での照明の配慮事項・基準
  • 一定規模以上の屋外照明・広告物照明の届出や事前協議
  • 時間帯・季節による運用(深夜の減光・消灯など)
  • 公共照明を自治体が率先して見直す旨

「基準や届出があるか」「どの区域が対象か」は、条例本文と関連規則・要綱を読まないと分かりません。


自分の自治体を調べる手順

  • 設置予定地の市区町村名 +「光害」「星空」で自治体サイト内を検索する
  • 同様に「景観計画」「屋外広告物条例」「屋外広告物 許可」でも検索する
  • 自治体の例規集で該当条例・規則・要綱の現行条文を確認する(制定日・最終改正日を必ず見る)
  • 都道府県の条例(星空保全地域の指定、景観条例など)で、対象区域に入っていないか確認する
  • 一定規模以上の照明・広告物を計画している場合は、届出・事前協議の要否を担当課に確認する
  • 判断に迷う点は、自治体の環境・景観・道路照明・屋外広告物の担当部門に照会する

条例の有無・内容は自治体ごとに異なります。「全国どこでも同じ」という前提で設計・調達を進めないでください。


屋外デジタルサイネージと光害

屋外のデジタルサイネージ(大型ディスプレイ広告)は、輝度が高く、映像が動く・点滅するといった特性から、近隣への影響やグレアが問題になりやすい設備です。多くの場合、光害防止条例よりも屋外広告物条例・景観計画の側で、輝度の上限、点滅・切り替えの制限、深夜帯の減光・消灯などが扱われます。業界団体(デジタルサイネージコンソーシアム)は、環境省ガイドラインを踏まえた運用の手引き(2023年9月 第1版)を公表しています。具体的な基準は、これらの資料と設置自治体のルールをご確認ください。


ダークスカイ認証(民間認証)の位置づけ

「ダークスカイ認証」は、DarkSky International(旧・国際ダークスカイ協会)という民間団体による、星空保護区や光害に配慮した照明製品などの認証制度です。民間の認証であり、日本の法令上の義務や公的な適合証明ではありません。 星空を観光資源とする地域や、環境配慮を対外的に示したい事業者が任意で活用するものと位置づけ、日本の条例・法令とは分けて考えてください。


評価の技術(指針値・測定)は別記事へ

本記事は「どの制度を確認するか」に絞りました。実際に屋外照明を評価する段階で必要になる、

をあわせてご覧ください。


よくある質問(FAQ)

光害対策ガイドラインは守らないと違法ですか?

環境省の「光害対策ガイドライン」自体は技術的な助言であり、それ単独で罰則を伴う法的義務ではありません。違法かどうかを左右するのは、設置場所の自治体の条例(光害防止条例、景観条例、屋外広告物条例など)です。該当の有無と内容は、設置予定地の自治体の例規集や担当部門でご確認ください。

自分の地域に光害の条例があるか、どう調べればよいですか?

まず「市区町村名+光害/星空」「市区町村名+景観計画/屋外広告物条例」で自治体サイトを検索し、次に自治体の例規集で現行条文を確認します。都道府県レベルの条例(星空保全地域の指定など)も併せて確認してください。詳しくは本文「自分の自治体を調べる手順」を参照してください。

光害防止条例では具体的に何が禁止されますか?

自治体によって大きく異なります。理念と努力義務にとどまるものから、特定区域での照明の配慮事項・基準、一定規模以上の照明・広告物の届出、深夜の減光・消灯の運用まで幅があります。「禁止事項」があるかどうかは、条例本文と関連規則・要綱を読んで確認する必要があります。

屋外サイネージを設置します。どの規制を見ればよいですか?

多くの場合、屋外広告物条例・景観計画の側で、輝度の上限、点滅・切り替えの制限、深夜帯の運用が扱われます。加えて、設置場所に光害防止条例や星空保全地域の指定があればそちらも確認します。許可・届出の要否は自治体の担当課にご確認ください。


まとめ

  • 屋外照明の光害ルールは3層(①環境省ガイドライン=技術的助言/②自治体の光害防止・星空保全条例=地域の法規/③景観計画・屋外広告物条例=別ルートの規制)で考える。
  • 法的な義務が生じ得るのは②③(条例、屋外広告物の許可・届出など。景観計画は届出・勧告の仕組み)。①のガイドラインはそれ単独では義務ではない。
  • 条例の有無・内容は自治体ごとに異なる。日本初は旧美星町(1989年)、都道府県では鳥取県が星空保全地域の指定制度を持つ。
  • 自分の自治体は、サイト内検索 →例規集で現行条文 → 都道府県条例 → 担当課への照会、の順で確認する。
  • ダークスカイ認証は民間認証であり、日本の法令上の義務ではない。

規制の適用は対象地・設備によって変わります。この記事は一次スクリーニングの位置づけです。正式な判断は、条例の現行条文・ガイドライン本文・所管部門への確認によって行ってください。


屋外照明の光害対策のご相談

条例やガイドラインへの対応では、上方光束比・輝度・配光を設置後に実測して確認したい場面があります。光安全性ナビを運営する旭光通商では、校正済みの照度計・輝度計による屋外照明の測定や、CIE 150/環境省ガイドラインの評価軸に沿った測定のご相談を承っています。

  • 設置前の設計レビュー(配光・遮光・色温度の妥当性チェック)
  • 設置後の近隣クレーム対応のための漏れ光・グレアの実測と記録
  • 測定機器の校正のご相談

まずはお問い合わせからご連絡ください。


参考にした主な情報

  • 環境省「『光害対策ガイドライン(改訂版)』の策定について(お知らせ)」報道発表資料、2021年3月26日、https://www.env.go.jp/press/109341.html (参照 2026-08-31)
  • 環境省「光害対策ガイドライン(令和3年3月改訂版)」本文PDF、https://www.env.go.jp/air/hikarigai-gaido-R3.pdf.pdf (参照 2026-08-31。本文は未閲覧。指針値等は本文で要確認)
  • 井原市美星町「美しい星空を守る井原市光害防止条例」、井原市/美星町観光協会、https://biseikankou.jp/dark-sky-places/16-03.html /条例本文 http://www.bao.city.ibara.okayama.jp/hikari-gai/hikarigai_jorei.pdf (参照 2026-08-31。現行条文は井原市例規集で要確認)
  • 鳥取県「星空保全地域の指定及び県の支援制度」/「星空環境・保全」、とりネット、https://www.pref.tottori.lg.jp/272030.htm / https://www.pref.tottori.lg.jp/272027.htm (参照 2026-08-31。現行条文は鳥取県例規集で要確認)
  • 一般財団法人 地方自治研究機構「星空保全条例・光害防止条例」、https://www.rilg.or.jp/htdocs/img/reiki/024_lightpollutioncontrol.htm (参照 2026-08-31。個別条例は各自治体例規集で要確認)
  • 一般社団法人デジタルサイネージコンソーシアム「デジタルサイネージにおける『光害対策ガイドライン』運用の手引き【第1版】」2023年9月、https://digital-signage.jp/wp-content/uploads/kougaitaisaku_guideline1.0.pdf (参照 2026-08-31)
  • DarkSky International(旧 International Dark-Sky Association)、https://darksky.org/ (民間認証制度として参照)

本記事の対象地域:日本/基準時点:2026年8月31日。法令・条例は改訂されることがあります。実務判断の際は、設置自治体の例規集および所管省庁の公表情報を最新版でご確認ください。

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