光公害の実測と評価:必要な指標(Ev・I・輝度・ULR)と計測機器ガイド【CIE 150:2017/環境省ガイドライン対応】

JIS Q 17025(ISO/IEC 17025)認定校正機関

夜間の屋外照明が周辺環境へ与える影響を、勘ではなく数値で管理する——それが光公害対策の第一歩です。本稿では、CIE 150:2017や国内運用に沿って、実務で押さえるべき指標(Ev/I/L/ULR)と測定手順を、機器選定まで含めて整理しました。現場では「どこを・いつ・何回」測るか、新製品開発では「配光と上方光束」をどう抑えるかを、図表とボタン型リンクで直感的に確認できます。

この記事の監修

山西 幸男

旭光通商株式会社 取締役

山西 幸男

光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。

1. 測るべき評価指標(何を数値化するか)

1.1 指標の要点

  • Ev(鉛直面照度, lx):居室窓面などへの侵入光。
  • I(最大光度, cd):器具の眩しさに直結するピーク光度。
  • L(表面輝度, cd/m²):看板・外壁の平均/ピーク輝度。
  • ULR(%, 上方光束比):器具光束に占める上向き光束比(設計/配光から評価)。
  • UFR:実上方光束/理想反射上方光(過剰照明の検出)。
図:評価対象のイメージ
建物(居室窓)でEv、道路から看板へL、器具側では配光からIとULR、全体の反射条件からUFRを推定。

1.2 測点とタイミング

  • 測点高さ:居室窓外側で地上1.5 m(窓面法線方向)
  • 時間帯:減灯前(例21時前)/減灯後(例22時以降)を両方計測
  • 記録:天候・路面状況・器具の調光/点滅状態

※例示。自治体や施設ルールにより減灯時刻は異なります。

2. どの機器で測るか(旭光通商ラインアップ)

2.1 Ev(鉛直面照度)/I(遠距離法の概算)

現場の基本は高精度照度計。距離を用いた遠距離法でIの参考値も得られます(I ≒ E × r²)。

他にB360 / Pocket Lux2等も選択可。

2.2 I・ULR の確定(配光測定)

器具の高角度配光と上向き成分を厳密に取得し、最大光度IULRを確証します。

設計段階:メーカーIES/LDTの活用でも可。竣工検証:サンプル器具で再測。

2.3 L(看板・ファサードの表面輝度)

点輝度と面内のムラ/ピークを把握して眩しさや過照度を特定します。

2.4 スペクトル・CCT(任意)

夜間CCTの管理や短波長成分の抑制により、生態/景観への配慮を組み込みます。

2.5 受託計測・校正(機器未保有でも実施可)

ISO/IEC 17025に準拠した受託測定・校正サービスを活用すれば、機器を持たずに評価を完結できます。

3. 現場プロトコル(最小セット)

3.1 手順(現場での動きが一目でわかる)

1
測点設定:苦情地点/居室窓前で 1.5 m、窓面法線方向にアライメント。
測点ID高さ1.5 m法線方向
2
Ev測定:減灯前/減灯後で各3回測定し平均。天候・路面・器具状態を併記。
Ev[lx]前/後3回平均
3
I確認:可能ならIES/LDTの配光で最大光度を確認。なければ遠距離法 I≒E×r² を参考値として記録。
距離 r[m]I[cd]
4
L測定:看板/外壁を点輝度+2D撮像で平均・ピーク・ムラを取得。
L [cd/m²]面平均ピーク
5
ULR/UFR:配光からULRを算出。設計前提(照度・反射率)でUFRを評価し、必要に応じて遮光・向き・配光を是正。
ULR[%]UFR是正→再測

3.2 合否目安(例:案件の運用値に合わせて上書き可)

指標目安(減灯後中心)判断ヒント
Ev E1: ≲0.1 lx / E4: ≲5 lx 窓面1.5 mで前/後を比較。苦情窓で重点評価。
L(看板) E2: ≲400 cd/m² / E4: ≲1000 cd/m² 面平均とピーク両方。2D撮像でムラも確認。
ULR E1: 0% / E2: ≲2.5% / E4: ≲15% 仰角0°・遮光フード・狭配光で抑制。

※自治体・施設基準の正式値を優先してください。

4. 新製品開発・既存環境の運用ポイント

4.1 仕様化(設計段階)

  • E区分想定減灯時刻を仕様書に明記。
  • ULR目標(E1/E2は実質0%)とUFR ≤ 1を設計KPIに。
  • 配光図でI上限高角度の制限を検証。

4.2 是正フロー(既設)

  • Evスクリーニング→合否判定。
  • 輝度ホットスポットの特定→減光・マスク。
  • 配光・仰角0°の徹底→ULR抑制。

※本稿の数値例は国際ガイド(CIE 150:2017/ILP GN01)と国内運用の代表的な目安に基づく一般的な参考値です。案件の運用値に合わせて最終判断してください。

用語解説(クリックで展開)
  • Ev(鉛直面照度):窓など垂直面に入る光の明るさ(lx)。
  • I(最大光度):器具が特定方向へ放つ最大の強さ(cd)。
  • L(表面輝度):看板や外壁など面の明るさ(cd/m²)。
  • ULR:器具光束に占める上向き光束比(%)。
  • UFR:実上方光束/理想反射上方光(過剰照明の検出)。
  • Curfew:減灯時刻(夜間の厳格値に切替)。

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