旭光通商株式会社 取締役
山西 幸男
光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。
この記事の監修
旭光通商株式会社 取締役
山西 幸男
光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。
目次
サンスクリーン製品のSPF・UVA防御能を評価する手法として、HDRS(ハイブリッド拡散反射分光法)が国際規格化されました。本記事では、ISO 23698:2024の概要と実務上の対応ポイントを整理しています。
この記事で理解できること:
想定読者:
サンスクリーン製品のSPF(Sun Protection Factor)やUVA-PF(UVA Protection Factor)を評価する手法は、従来 in vivo(ヒト被験者を使った試験)やin vitro(PMMAプレートを使った透過測定)が主流でした。
ISO 23698:2024は、これらとは異なるアプローチとして、皮膚上での拡散反射分光(DRS)測定と、in vitroの薄膜分光測定を組み合わせた「ハイブリッド」手法を体系化した国際規格です。
この規格は、HDRS法に使用する装置の仕様、測定手順、データ処理の方法を規定することを目的としています。
ISO 23698:2024の主な適用対象は、サンスクリーン製品をはじめとする紫外線防御製品です。規格の適用範囲の詳細については、規格本文での確認を推奨します。
従来のin vivo法やin vitro法と比較して、HDRSは測定手法の選択肢を広げるものとして位置づけられています。
ISO 23698:2024は、サンスクリーン評価に関する既存の国際規格群と補完関係にあります。主な関連規格は以下のとおりです。
| 規格番号 | 概要 | ISO 23698:2024との関係 |
|---|---|---|
| ISO 24444 | in vivo SPF測定法 | HDRSはin vivoとin vitroの両要素を組み合わせた代替アプローチ |
| ISO 24443 | in vitro UVA防御能測定法 | HDRSの薄膜分光測定部分と技術的に関連 |
| ISO 24442 | in vivo UVA防御能測定法 | HDRSがカバーするUVA-PF評価と対比可能 |
これらの規格は相互排他ではなく、製品評価における手法の選択肢として並立しています。具体的な規格間の整合性や使い分けについては、各規格の最新版を参照してください。
DRS(Diffuse Reflectance Spectroscopy:拡散反射分光法)は、皮膚表面に光を照射し、拡散反射された光のスペクトルを測定する手法です。サンスクリーンが塗布された皮膚からの反射光を分析することで、紫外線の吸収・散乱特性を評価できるとされています。
in vivo法のような紅斑反応の観察とは異なり、DRSは分光学的な測定データに基づく評価が可能な点が特徴です。
HDRSの「ハイブリッド」という名称は、DRSによるin vivo測定と、PMMAプレート上に薄膜を形成して行うin vitro分光測定を組み合わせることに由来しています。
この統合により、in vivo法だけでは得られにくい分光学的な詳細データと、in vitro法だけでは反映しにくい実際の皮膚上での挙動の両方を評価に反映させることが意図されています。
HDRSでは、DRS測定とin vitro薄膜分光測定から得られたスペクトルデータを統合処理し、以下の指標を推定します。
これらの推定に使用する具体的な計算式やデータ処理手順は、ISO 23698:2024の本文に規定されています。
ISO 23698:2024では、HDRS測定に使用する装置について仕様要件が定められています。主に以下の装置が必要とされています。
装置の具体的な仕様(波長範囲、バンド幅、測定ジオメトリなど)については、規格本文を確認した上で装置選定を行うことが重要です。
HDRS測定の信頼性を確保するために、ISO 23698:2024では校正手順についても規定されています。
校正における主なポイントとして、以下の項目が一般的に求められます。
校正の頻度や判定基準は規格本文の規定に従ってください。また、ISO/IEC 17025認定試験所での校正が推奨される場合があります。
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HDRS測定で得られたスペクトルデータは、規格に定められた手順で処理されます。データ処理の大まかな流れは以下のとおりです。
具体的な計算式やパラメータは規格本文に記載されています。
HDRS測定に使用する分光放射計を選定する際は、以下の観点で規格要件との適合を確認することが推奨されます。
Gooch & Housego社のOL770シリーズは、UV帯域の分光放射測定に対応した装置として知られています。HDRS測定用途での使用を検討する場合、ISO 23698:2024が要求する仕様(波長範囲、分解能、測定ジオメトリ等)への適合をメーカーに確認することが重要です。
Gamma Scientific社は、分光放射計をはじめとする光計測機器を展開しています。ISO 23698:2024への対応状況については、個別に製品仕様と規格要件の照合が必要です。
機器の選定やISO 23698:2024への適合確認にあたっては、規格要件を提示した上でメーカーまたは販売代理店に確認されることを推奨します。
HDRS測定をISO 23698:2024に基づいて実施する場合の基本的なステップを以下に整理します。
まず、ISO 23698:2024の本文を入手し、自社の評価対象製品が適用範囲に含まれるか、要求される装置仕様・測定条件は何かを確認します。
使用する分光放射計が規格の仕様要件を満たしているかを確認し、必要な校正を実施します。既存の装置が要件を満たさない場合、装置の追加導入や校正サービスの利用を検討します。
規格に基づき、自社の製品評価に適した測定プロトコルを策定します。サンプル調製方法、測定条件、繰り返し回数、データ処理手順を文書化します。
測定結果をISO 23698:2024の規定に沿って処理し、SPF・UVA-PF等の推定値を算出します。結果の妥当性を確認した上で、規定の形式で報告書を作成します。
Q1: ISO 23698:2024は何を規定した規格ですか?
ISO 23698:2024は、HDRS(ハイブリッド拡散反射分光法)を使ったサンスクリーン製品のSPF・UVA防御能の評価手法について、使用する装置の仕様、測定手順、計算方法を規定した国際規格です。従来のin vivo法やin vitro法とは異なるアプローチを体系化しています。
Q2: HDRS測定を行うにはどのような装置が必要ですか?
規格では、皮膚上でのDRS測定に対応した分光放射計と、PMMAプレート上でのin vitro薄膜分光に対応した装置が求められています。具体的な仕様要件は規格本文に定められており、装置選定の際は規格要求への適合性を確認することが重要です。
Q3: ISO 23698:2024とISO 24443の違いは何ですか?
ISO 24443はサンスクリーン製品のin vitro UVA防御能評価を規定した規格です。ISO 23698:2024はこれとは異なり、in vivoのDRS測定とin vitroの薄膜分光を組み合わせたハイブリッド手法を規定しています。両者は補完関係にあり、製品評価における手法の選択肢として位置づけられています。
ISO 23698:2024は、サンスクリーン製品の防御能評価において、HDRSという新しいアプローチを国際規格として体系化したものです。
本記事のポイントを整理します。
規格対応に向けた装置選定や校正体制の整備を進める際には、専門機関への相談が有効です。
上記規格の具体的な要件や数値基準については、各規格の原文または最新版をご確認ください。
HDRS測定に対応した分光放射計の校正やISO 23698:2024への適合性確認が必要な場合は、お気軽にご相談ください。
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