旭光通商株式会社 取締役
山西 幸男
光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。
この記事の監修
旭光通商株式会社 取締役
山西 幸男
光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。
目次
屋外照明による光公害(光害)を評価するための国際ガイドライン CIE 150 について、以下の内容を整理しています。
光公害の測定・評価に携わる照明設計者、環境アセスメント担当者、自治体関係者の実務に役立つ内容です。
CIE 150 は、国際照明委員会(CIE: Commission Internationale de l’Eclairage)が発行した技術レポートで、正式名称は “Guide on the Limitation of the Effects of Obtrusive Light from Outdoor Lighting Installations” です。
屋外照明設備から生じる「迷惑光(obtrusive light)」の影響を制限するために、環境条件に応じた許容値と評価方法を示しています。法的拘束力を持つ規格ではありません。各国・各地域が光害関連の規制やガイドラインを策定する際の技術的根拠として参照される位置づけです。
CIE 150 が対象とするのは、主に 屋外照明設備 による以下の影響です。
屋内照明や、光源そのものの安全性(IEC 62471 の対象領域)は、CIE 150 の直接的な適用範囲外です。
CIE 150 は初版(2003年)の発行後、2017年に改訂版が発行されています。2017年版では以下の点が更新されたとされています。
改訂の詳細な差分については、CIE の公式文書を直接参照することを推奨します。
光公害(光害)とは、人工照明の不適切な使用や過剰な照射によって、人の生活環境、生態系、天文観測などに悪影響を及ぼす現象です。英語では「light pollution」と呼ばれます。
必要な場所・時間に、必要な量だけ照明を提供するという原則から逸脱した照明が、光公害の原因となります。
光公害がもたらす影響は多方面にわたります。
光公害への関心は国際的に高まっています。CIE 150 のほか、IDA(International Dark-Sky Association)による認証プログラム、各国の環境規制など、対策の枠組みが拡充しつつあります。
日本国内では、環境省が「光害対策ガイドライン」を策定しており、一部の自治体が条例で屋外照明の光害対策を定めている例もあります。ただし、光公害を直接規制する国内法は現時点では制定されていない状況です。
CIE 150 では、光公害の影響を定量的に評価するために、以下の4つの主要指標が用いられています。
Ev(Vertical illuminance) は、建物の窓面など鉛直面に入射する光の量を示す指標です。単位は lx(ルクス) です。
住宅への侵入光を評価する際の基本指標であり、居住者が感じる「まぶしさ」や「明るさの侵入」を定量化します。測定は、影響を受ける建物の窓面位置で、鉛直面に向けた照度計を用いて行います。
I(Luminous intensity) は、照明器具から特定方向に放射される光の強さを示す指標です。単位は cd(カンデラ) です。
グレア(不快なまぶしさ)の評価に用いられ、照明器具が特定角度以上の方向に放射する光度の上限値として規定されます。照明器具の配光データから算出するのが一般的です。
L(Luminance) は、照明器具や広告照明などの発光面の「明るさ感」を示す指標です。単位は cd/m2(カンデラ毎平方メートル) です。
建物のファサード照明や屋外広告の明るさ制限に用いられます。輝度計を使用して、光源面や被照射面の輝度を測定します。
ULR(Upward Light Ratio) は、照明器具から水平面より上方に放射される光束の、全光束に対する比率です。単位は % です。
天空方向への光の漏れ(スカイグロー)を評価する指標であり、値が小さいほど上方への不要な光が少ないことを意味します。照明器具の配光データに基づいて算出されます。
| 指標 | 名称 | 単位 | 評価対象 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| Ev | 鉛直面照度 | lx | 建物窓面への侵入光 | 住宅・施設への光の侵入評価 |
| I | 光度 | cd | 照明器具からの直射光 | グレア(不快なまぶしさ)評価 |
| L | 輝度 | cd/m2 | 発光面・照射面の見かけの明るさ | 広告照明・ファサード照明の制限 |
| ULR | 上方光束比 | % | 天空方向への光漏れ | スカイグロー(夜空の明るさ)評価 |
CIE 150 では、これらの指標について 環境ゾーン(E1-E4) ごとに許容値が設定されています。E1(本来暗い地域: 国立公園など)が最も厳しく、E4(高活動度の都市部)が最も緩い許容値となります。
光公害の測定は、影響を評価したい場所(住宅の窓面、道路境界、施設境界など)で実施します。屋外照明の影響を正しく評価するため、原則として 日没後の夜間 に測定を行います。
対象とする屋外照明が点灯している状態で、周辺の他の人工光源の影響も考慮した条件設定が求められます。
測定に際しては、以下の条件を整理・記録することが重要です。
一度の測定だけでは、変動要因(天候、季節、照明運転パターン)の影響を排除できません。CIE 150 の趣旨に沿った評価を行うためには、複数回・複数条件での測定と、測定条件の詳細な記録が望ましいとされています。
測定結果は、CIE 150 が示す環境ゾーン別の許容値と照合して評価します。ゾーン分類の判断は、測定場所の周辺環境(自然保護区域、郊外住宅地、都市部など)に基づいて行います。
報告書には、測定値だけでなく、測定条件、使用機器、環境ゾーンの判断根拠を記載することで、結果の再現性と信頼性が担保されます。
鉛直面照度(Ev)の測定には、JIS C 1609 の精度規定に適合した一般形 A 級以上の照度計の使用が推奨されます。光公害の測定では低照度レベル(数 lx 以下)を扱うことが多いため、低照度域での精度と安定性が重要です。
受光面のコサイン補正特性(斜入射光に対する応答特性)が測定精度に影響するため、仕様を確認のうえ選定してください。
輝度(L)の測定には、測定対象に応じた測定角(受光角)を持つ輝度計を使用します。広告照明やファサード照明の輝度測定では、対象面のサイズに応じた測定角の選択が重要です。
スポット輝度計のほか、面的な輝度分布を取得できるイメージング輝度計(輝度カメラ)も有用です。
光度(I)と上方光束比(ULR)の評価には、照明器具の 配光データ が必要です。自社で配光測定を行う場合は、ゴニオフォトメータ等の配光測定設備が必要となります。
実務上は、照明器具メーカーが提供する配光データ(IES ファイルや EULUMDAT ファイル)を活用するケースが多いです。
照度計・輝度計の校正証明書の発行も承っております。
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環境省は、光害(ひかりがい)対策のためのガイドラインを策定しており、屋外照明の設計・運用における配慮事項を示しています。同ガイドラインは法的拘束力を持つものではなく、自治体や事業者への推奨という位置づけです。
環境省ガイドラインは、技術的な枠組みとして CIE 150 の考え方を参照しており、評価指標(照度・輝度・上方光束比など)やゾーン分類の概念に共通点があります。
ただし、ゾーン分類の定義や許容値の数値は、日本の実情に合わせた独自の設定となっている部分もあるため、CIE 150 の数値をそのまま国内の基準とみなすことは適切ではありません。
一部の自治体では、光害対策を条例や要綱で定めている例があります。天文台周辺の照明規制や、住宅地における屋外広告照明の輝度制限などが代表的です。具体的な規制内容は自治体ごとに異なるため、対象地域の条例を個別に確認する必要があります。
CIE 150 は、国際照明委員会(CIE)が発行した屋外照明による光公害の制限に関する技術ガイドラインです。環境ゾーン(E1-E4)ごとの許容値や、評価に用いる指標(照度・光度・輝度・上方光束比)の測定方法を示しています。法的拘束力を持つ規格ではなく、各国の規制やガイドライン策定の技術的根拠として参照される文書です。
日本では光公害を直接規制する法律は現時点で制定されていませんが、環境省が「光害対策ガイドライン」を策定しています。また、一部の自治体では条例で屋外照明の光害対策を定めている例があります。CIE 150 の指標体系は、これらの国内ガイドラインの技術的基盤として参照されています。
CIE 150 に基づく評価では、鉛直面照度を測定するための照度計、輝度分布を測定するための輝度計が基本的に必要です。上方光束比(ULR)の評価には照明器具の配光データが求められるため、配光測定設備またはメーカー提供の配光データファイルが必要となります。いずれの機器も、定期的な校正を行い測定精度を担保することが重要です。
CIE 150 は、屋外照明による光公害を定量的に評価するための国際的な技術基盤です。鉛直面照度(Ev)、光度(I)、輝度(L)、上方光束比(ULR)の4つの指標を用いて、環境ゾーンごとの許容値と照合する評価体系を示しています。
日本国内では環境省ガイドラインが CIE 150 の考え方を参照しており、自治体条例への展開も進みつつあります。光公害への社会的関心が高まるなか、CIE 150 の評価体系を理解しておくことは、照明設計や環境アセスメントの実務において重要です。
測定の実施にあたっては、使用する照度計・輝度計の精度と校正状態が結果の信頼性に直結します。自社で光公害測定を計画されている場合や、計測機器の校正が必要な場合は、下記よりご相談ください。
光公害測定に使用する照度計・輝度計の校正や、測定方法に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。
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