光の正体とは?電磁波スペクトルと波長別リスクを図解|光安全性の基礎

JIS Q 17025(ISO/IEC 17025)認定校正機関

光を“面白い話”で終わらせないための実務入門。電磁波スペクトルと波長別の人体影響(UV/可視/IR)を図解し、青色光・UVの着眼点からIEC 62471の評価ポイントへ橋渡し。関連する詳解記事・判定フローへの導線も用意しています。

この記事の監修

山西 幸男

旭光通商株式会社 取締役

山西 幸男

光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。

光=電磁波+光子:実務で押さえる3つの要点

  1. 波長(λ)と周波数(f)c = f·λ(c:光速)。波長が短いほどフォトンのエネルギーが高くなります。
  2. 光子エネルギーE = h·f = h·c/λ。UVは同じ光量でも単位フォトンのエネルギーが高く、化学的(光化学)作用が強い。
  3. 放射量の種類:照度(E)と放射輝度(L)は別物。網膜に関わる評価ではL(方向性+面輝度)が鍵になります。

波としての性質(計測・設計)

  • 干渉・回折・偏光 → 光学設計や迷光対策に直結
  • スペクトル分布 → 規格の加重関数で評価(例:青色光B(λ)、UV S(λ))

粒子(光子)としての性質(生体影響)

  • 短波長ほど1粒あたりのエネルギーが高く、化学反応・損傷閾値が下がる
  • 露光は「強さ×時間」。許容時間 tv ≈ 許容量 / 実測値 で概算

電磁波スペクトル(UV/可視/IR)と主なリスク

UV:角膜炎/紅斑(光化学) 青色光(~400–500 nm):網膜光化学 IR‑A:網膜熱 IR‑B/C:角膜・皮膚熱 可視:視覚・まぶしさ(グレア)

波長帯域別の主な人体影響と評価指標(IEC 62471対応)

帯域 主な影響の例 主な評価指標 対象組織 実務メモ
UV(200–400 nm) 角膜炎、紅斑、光老化(化学作用) 加重照度 EUV(S(λ))/UVA照度 角膜・皮膚 距離と遮蔽で急減。UV‑Cは空気中で減衰も、直視・近接は要注意。
青色域(~400–500 nm) 網膜光化学(青色光ハザード) 加重放射輝度 LB(B(λ)) 網膜 視野設定(apparent source)が肝。高輝度小光源は要注意。
可視(380–780 nm) グレア、不快感、視認性の低下 輝度、照度、UGR 等 視覚系 安全でも「快適」ではないことがある。照明設計と両立を。
IR‑A(780–1400 nm) 網膜熱(短時間高出力) 加重放射輝度 LR 網膜 パルス・集光・近接で閾値低下。運転モードに注意。
IR‑B/C(>1400 nm) 角膜・水晶体・皮膚の熱影響 照度 E /放射輝度 L(熱評価) 角膜・皮膚 吸収は表層優位。遮熱・距離・暴露管理が有効。

実務への橋渡し:IEC 62471でどう評価する?

  • 評価フロー:適用判定 → 測定条件(距離・視野) → 分光測定 → 加重計算(EUV/LB/LR…) → RG分類 → ラベリング。
  • 測定のコツ:青色光・網膜熱は放射輝度(L)が必要。UVや皮膚熱は照度(E)で可。
  • 許容時間:最も厳しいハザードの tv がボトルネック。短時間ピークの扱いに注意。

詳細は関連記事:IEC 62471の実務ガイド を参照。

測定・用語の最短整理

  • 照度 E:受光面に入る放射の強さ(面で受ける)。IR/UV評価で多用。
  • 放射輝度 L:ある方向へ出る面の明るさ(方向+面)。網膜関連で必須。
  • 分光分解能:加重関数の変化が急な帯域(UV端・青色域)は十分な分解能で。
  • FOV(視野):apparent source を外さないよう、視野制限光学系を用意。
暗電流・迷光・飽和の確認は「計測の三種の神器」。NDフィルタ/積分時間最適化/暗補正をルーチン化しましょう。

よくある誤解(実務でのNG)

  • 「可視は安全」:高輝度小光源は短時間でも危険(網膜熱・青色光)。
  • 「青色光=すべて有害」:量・時間・視野で決まる。設計・運用でリスク低減可。
  • 「照度で全部評価できる」:網膜関連はL必須。Eのみでは過小評価。

よくある質問(FAQ)

可視光でも危険はありますか?

あります。高輝度の小さな光源では網膜熱・青色光のハザードが問題になります(時間・距離・視野で管理)。

青色光は何が問題?

~400–500 nmの光は網膜の光化学反応を起こしやすく、LBで評価します。視野設定が重要です。

UVはどの帯域が特に危険?

UV‑C/UV‑Bは角膜・皮膚に強い光化学作用を持ちます。加重照度EUVで評価します。

更新履歴:2025-08-14 全面改稿(スペクトル図・帯域別リスク表・IEC 62471ブリッジを追加)

注:具体的な数値・許容値・表示文言は必ず該当規格の原文に従ってください。

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