【2025年版】JIS規格見直し(5年見直し)の全体像と光安全性対応ガイド|JIS C 6802・JIS C 7550・IEC 60825-1・IEC 62471

JIS Q 17025(ISO/IEC 17025)認定校正機関

JISの5年見直しは、公示後おおむね5年で適正性を再点検し、確認・改正・廃止を決める制度です。2025年度は2021年度公示JISが中心で、JSA本調査の回答期限は2025/9/30、一般意見は2025/9/16まで。本記事は制度の流れと関係者の役割を簡潔に整理し、光安全性―レーザ安全(JIS C 6802/IEC 60825-1)と光生物学的安全(JIS C 7550/IEC 62471-7)―の要点を、測定幾何・分光加重・MPE/ELV・クラス/RG判定・ラベル/IFUの実務観点で解説します。2025年8月改正のJIS C 6802とIEC 62471-7解釈票への対応手順も提示し、短時間で抜け漏れなく準備できるチェックリストを付けました。

この記事の監修

山西 幸男

旭光通商株式会社 取締役

山西 幸男

光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。

1. JIS規格見直しの全体像

1.1 法的根拠と制度枠組み

  1. 産業標準化法第17条により、公示から少なくとも5年以内に当該JISの適正性を審議。
  2. 認定産業標準作成機関(JSA等)の実施する「JIS見直し調査」に基づき、確認/改正/廃止の方針を整理。
  3. 調査結果を踏まえ、主務大臣(経済産業大臣)が公示へ。

1.2 2025年度(令和7年度)の基本スケジュール

区分期日備考
事前調査2025-05-30調査対象JISリスト確定と配布(JSA)
本調査2025-09-30原案作成団体からJSAへ回答(JSA)
一般意見2025-09-16経産省JISC窓口へ提出(JISC)

※期限は公式告知の記載に従う。

1.3 対象範囲と関係主体

  1. 対象:2021年度に制定・改正・確認が公示されたJIS(主務大臣:経産、省内JSA認定範囲)。
  2. 関係者:原案作成団体、JSA、経産省(主務大臣事務局)、JISC、利害関係者(産業界・学界・消費者等)。

1.4 見直しの判断軸(例)

  1. 技術進歩(国際規格の更新、ハザード評価の最新知見)
  2. 社会的環境(安全・健康・環境・デジタル化)
  3. 市場適合性(活用状況、重複・空隙、引用規格の有効性)

2. 光安全性に関する位置づけ

2.1 レーザ製品の安全(JIS C 6802 ⇄ IEC 60825-1)

  1. 適用範囲:180 nm〜1 mmのレーザ放射を発する製品のクラス分け要求事項
  2. クラス体系:Class 1/1M/1C/2/2M/3R/3B/4。
  3. 実務要点:MPE(最大許容露光量)・NOHD(名目眼危険距離)、インタロック・キー操作、ラベル・IFU整備。
  4. 最新動向:2025年8月公示でJIS C 6802改正が確認され、国内表示・文書の最新化が必要。

2.2 光生物学的安全(JIS C 7550 ⇄ IEC 62471シリーズ)

  1. 対象:レーザを除く非コヒーレント光源(LEDを含むランプ・ランプシステム)。
  2. リスクグループ(RG0/1/2/3)に基づく曝露限界の評価と表示・取説の要件。
  3. 関連動向:IEC 62471-7:2023と解釈票(2025)・コリゲンダム(2024)により、用語/測定/適用範囲が明確化。

2.3 RGとクラスの関係(整理表)

分類軸光源種別規格主なアウトカム
レーザのクラスコヒーレント(レーザ)JIS C 6802 / IEC 60825-1Class判定、MPE/NOHD、ラベル・IFU
リスクグループ非コヒーレント(LED等)JIS C 7550 / IEC 62471RG判定、ELV(曝露限界)、表示・IFU

3. 見直し調査における実務対応(光安全性)

3.1 調査票回答の基本方針

  1. 改正:上位国際規格の更新(IEC 60825-1の解釈、IEC 62471-7の改訂・解釈票)や市場・法規との整合が必要な場合。
  2. 確認:適用範囲・引用規格が現行の実務と整合し、重大な技術ギャップがない場合。
  3. 廃止:重複・低利用、後継規格への統合が妥当な場合。

3.2 測定・評価・エビデンス(提出用の推奨構成)

  1. 測定条件:幾何(距離・視野角・瞳孔径)、帯域幅、暗順応条件、測定器の校正トレーサビリティ。
  2. 計算:分光加重(A(λ)等)・時間加重、MPE/ELV算定根拠、合成不確かさ(k=2)。
  3. 判定:クラス/RGの決定ロジック、使用条件・免責条件(例:観察距離・点灯時間)。
  4. 文書:ラベル・IFU草案、警告文・ピクト、サービス手順書(保守時の曝露管理)。

3.3 表示・IFU更新(サンプル観点)

  1. レーザ:クラス表示、出力・波長、ビーム径・発散角、インタロック、キー、遠隔インターフェースの安全設計。
  2. LED/ランプ:RG表示、観察距離・動作モード、青色光ハザード注意、使用者向け注意喚起。
  3. 多言語:国内JISに基づく日本語優先表示+輸出向けIEC/EN整合の二層設計。

3.4 組織対応とスケジュール

  1. 2025/9/30までに調査票提出、2025/9/16までに外部意見(該当時)の確認。
  2. 2025年内〜2026年にかけて、JISC審議に備えた測定再現性確認・試験記録の標準様式化。

4. よくある落とし穴と対策

  1. レーザとLEDの混同:レーザ製品にIEC 62471を適用しない(逆も同様)。
  2. 幾何条件の不整合:視野角・距離・開口設定が規格値に合致しない → 試験手順書で固定化。
  3. 青色光ハザードの過小評価:高輝度LED看板・モジュールのRG判定と観察距離の明示不足。
  4. ラベル記載不足:クラス/RG、出力・波長、警告文、取説への参照の必須項目漏れ。
  5. 引用規格の旧版参照:最新版の解釈票・コリゲンダムを反映(例:IEC 62471-7のISH1/2025)。

5. まとめ

JISの5年見直しは、産業標準化法に基づく計画的なメカニズムであり、2025年度は2021年度公示のJISが中心となる。光安全では、JIS C 6802の2025年改正IEC 62471-7の補足文書が重要で、測定・判定・表示の見直しが求められる。調査票では、上位規格の更新状況と自社製品・サービスの曝露管理の適合性を、測定データとIFU草案を添えて具体的に示すことが、確認・改正判断を適正化する鍵である。

参考文献(公式情報)

用語解説

JIS見直し調査
JSAが経産省委託で実施する、5年ごとの適正性調査。結論は確認・改正・廃止のいずれか。
MPE(最大許容露光量)
IEC 60825-1で定める時間・波長依存の許容露光量。
NOHD
名目眼危険距離。レーザビームに対する眼損傷の潜在域の推定距離。
ELV(曝露限界値)
IEC 62471系列で定義される非コヒーレント光源の曝露限界。
RG(リスクグループ)
IEC 62471 / JIS C 7550の危険度区分(RG0/RG1/RG2/RG3)。
IFU
Instructions for Use(使用説明書)。安全情報・警告・条件を記載。

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