ILAC-MRAマークとは?試験・校正証明書への影響と試験機関選定の基準

JIS Q 17025(ISO/IEC 17025)認定校正機関

ILAC-MRAマークの意味と、試験・校正証明書への影響を実務視点で解説。試験機関選定時の判断軸として確認すべき認定の枠組みを整理します。(120字以内)

この記事の監修

山西 幸男

旭光通商株式会社 取締役

山西 幸男

光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。

この記事でわかること

試験機関や校正機関から受け取った証明書に「ILAC-MRAマーク」が記載されていても、その意味を正確に理解していない担当者は少なくありません。マークの有無は、証明書の信頼性を対外的に示す際の重要な判断軸になります。

この記事では、ILACとは何か、MRA(相互承認協定)の仕組みとは何かを基礎から解説し、試験機関・校正機関を選定する際の実務的な確認ポイントを整理します。

要点まとめ:ILAC-MRAマークは、その証明書を発行した試験・校正機関が、ILAC(国際試験所認定協力機構)の相互承認協定に加盟する認定機関から認定を受けていることを示します。試験機関選定時には、このマークの有無と認定スコープの両方を確認することが重要です。

ILACとは何か

ILACの設立目的と役割

ILAC(International Laboratory Accreditation Cooperation:国際試験所認定協力機構)は、試験所・校正機関・検査機関・臨床検査機関の認定に関わる国際的な協力機構です。世界各国の認定機関が加盟し、試験・校正の技術的能力の評価に関する国際基準の整合を図ることを目的としています。

試験・校正機関を認定する組織(認定機関)が加盟するため、ILACは試験・校正機関を直接認定するわけではありません。「認定機関を束ねる国際的な枠組み」として機能しています。

ILACが管理する認定機関の国際ネットワーク

ILACには、日本のJAB(公益財団法人日本適合性認定協会)、米国のA2LA、欧州各国の認定機関など、100以上の認定機関・組織が加盟しています(加盟数は変動します。)。

各国の認定機関がILACのMRA(相互承認協定)に署名することで、認定機関相互の技術的同等性が確認され、各国で認定を受けた試験・校正機関の証明書が国際的に通用する仕組みが構築されています。


MRAとは何か

相互承認協定(MRA)の仕組み

MRA(Mutual Recognition Arrangement:相互承認協定)とは、ILACに加盟する認定機関が互いの技術的能力を評価・確認し合い、「各国の認定機関が発行した認定の結果を相互に受け入れる」という協定です。

MRAの枠組みにより、あるILAC-MRA加盟認定機関から認定を受けた試験・校正機関が発行した証明書は、他のILAC-MRA加盟国においても同等の技術的信頼性を持つと認識されます。

具体的には以下の連鎖で成立しています。

` ILAC(国際枠組み) ↓ MRA加盟 認定機関(例:JAB) ↓ 認定 試験機関・校正機関 ↓ 発行 試験報告書・校正証明書 `

MRAに加盟することで何が変わるか

MRA加盟認定機関から認定を受けた試験・校正機関が発行する証明書には、ILAC-MRAマークを表示できます。このマークは、「発行機関が国際的な技術的基準を満たした認定機関から認定を受けていること」を証明するシンボルとして機能します。

輸出製品の安全試験・品質試験において、取引先や規制機関がILAC-MRAマーク付きの証明書を要求するケースがあります。マークの有無が、証明書を受け入れるかどうかの判断基準になる場面があるのはこのためです。


ILAC-MRAマークの意味

マークが付いた試験・校正証明書が示すもの

証明書にILAC-MRAマークが記載されている場合、その証明書を発行した試験・校正機関が、ILAC-MRA加盟認定機関から正式に認定を受けていることを意味します。

ただし、マークの表示はあくまで「認定を受けていること」を示すものであり、試験の技術的正確性を個別に保証するものではありません。認定はISO/IEC 17025に基づく技術的能力の審査を経て与えられますが、証明書の内容の詳細については個別の評価が必要です。

マークの使用条件と認定機関の役割

ILAC-MRAマークは、認定機関が認定した試験・校正機関のみが、認定スコープの範囲内の試験・校正業務の証明書に使用できます。認定スコープ外の業務に対してマークを使用することは認められていません。

認定機関(JABなど)は、認定した試験・校正機関が適切にマークを使用しているかを定期的に確認する責任を持ちます。

ILAC → 認定機関(JABなど)→ 認定試験機関 → 証明書の流れ

レベル 機関・文書 役割
国際レベル ILAC MRA加盟認定機関の国際相互承認の枠組みを提供
国内認定レベル JABなど認定機関 ISO/IEC 17025に基づいて試験・校正機関を審査・認定
試験・校正実施レベル 認定試験・校正機関 認定スコープの範囲で試験・校正を実施
証明書レベル 試験報告書・校正証明書 ILAC-MRAマークを表示した上で発行

日本のILAC-MRA加盟認定機関

JAB(公益財団法人日本適合性認定協会)とは

JAB(Japan Accreditation Board)は、日本における主要な認定機関のひとつです。ISO/IEC 17025に基づく試験所・校正機関の認定をはじめ、検査機関、認証機関の認定を行っています。

ILACのMRAに署名しており、JABから認定を受けた試験・校正機関はILAC-MRAマーク付きの証明書を発行できます。JABのウェブサイトでは、認定機関の検索データベースが公開されており、認定機関名・認定番号・認定スコープを確認できます。(JAB公式サイトで最新情報を確認してください。[要一次情報確認])

国内のその他の認定機関

日本にはJAB以外にも、産業技術総合研究所 計量標準総合センター(NMIJ)など、校正・計量分野の認定に関わる機関が存在します。 依頼する試験・校正の種類によって、どの認定機関の認定スコープに含まれるかを確認することが重要です。


試験機関・校正機関を選ぶ際の確認ポイント

ILAC-MRA加盟認定機関に認定されているか確認する方法

試験機関・校正機関がILAC-MRA認定を受けているかは、以下の手順で確認できます。

  1. 依頼先の試験機関・校正機関に認定機関名と認定番号を問い合わせる
  2. 認定機関(JABなど)のウェブサイトの認定機関データベースで認定状況を確認する
  3. ILAC公式サイトのMRA加盟認定機関リストで、その認定機関がMRAに署名しているか確認する

試験機関が提示するロゴや認定番号が正規のものかを確認することで、虚偽表示のリスクを低減できます。

認定範囲(スコープ)の確認が重要な理由

ILAC-MRAマークが付いた証明書であっても、その試験・校正が認定スコープ内で実施されたものでなければ、マークの信頼性の裏付けとはなりません。

たとえば、光安全性試験(IEC 62471)を依頼する場合は、依頼先の試験機関の認定スコープに「IEC 62471に基づく光生物学的安全性試験」が含まれているかを確認することが必要です。分光放射照度計の校正を依頼する場合も、「分光放射照度の校正」が認定スコープに含まれているかを確認してください。

海外発行の証明書を国内で使う場合の注意点

海外のILAC-MRA加盟認定機関から認定を受けた試験・校正機関が発行した証明書は、ILACの相互承認の枠組みの下で同等の信頼性を持つと解釈されます。ただし、以下の点に注意が必要です。

  • 証明書の言語・記載様式が国内の用途に適しているか
  • 顧客・規制機関が受け入れる証明書の形式に合致しているか
  • 国内の規制・法令への適合については別途確認が必要

光安全性試験・校正依頼におけるILAC-MRAの実務上の意義

IEC 62471試験でILAC-MRA認定機関を選ぶメリット

光安全性試験(IEC 62471)においてILAC-MRA認定機関を選ぶ主なメリットは以下の通りです。

  • 試験結果の対外的な信頼性:輸出先の顧客・バイヤー・規制機関がILAC-MRAマーク付きの試験報告書を要求する場合に対応できます
  • 試験機関の技術的能力の担保:ISO/IEC 17025に基づく認定審査を経ているため、測定条件・不確かさ管理・結果の再現性に一定の基準が適用されています
  • 海外展開時の証明書の活用:EU・米国・アジア等への輸出時に、認定機関の試験報告書を活用できる場面があります

分光放射照度計の校正でILAC-MRA認定証明書が求められる場面

IEC 62471試験を実施するためには、使用する測定機器(分光放射照度計など)の校正が適切に管理されていることが前提となります。試験機関が保有する測定機器の校正証明書がILAC-MRA認定機関から発行されているか否かは、試験結果の信頼性の基盤に関わります。

品質管理担当者が自社保有の分光放射照度計の校正を依頼する場合も、ILAC-MRA認定機関への依頼が推奨される場面があります。ISO 9001の管理測定機器の校正要求や、顧客・取引先への証明書提出を想定した場合に特に重要です。


試験機関選定チェックリスト

試験機関・校正機関を選定する際の実務的な確認事項をまとめます。

確認項目 チェック内容
ILAC-MRA加盟認定機関の認定 ILAC-MRA加盟認定機関(JABなど)から認定を受けているか
認定スコープの確認 依頼したい試験・校正の内容が認定スコープに含まれているか
認定番号の確認 認定番号が認定機関のデータベースと一致するか
測定不確かさの開示 校正証明書・試験報告書に測定不確かさが記載されるか
トレーサビリティの確認 参照標準が国家標準・国際標準にトレーサブルであるか
報告書言語・様式 依頼先・顧客・規制機関が要求する様式に対応しているか
緊急対応の可否 スケジュール要件に合わせた対応が可能か
再試験・問い合わせ対応 結果に疑義がある場合の対応方針が明確か

よくある質問(FAQ)

Q1. ILAC-MRAマークと認定機関のマーク(JABマークなど)はどう違いますか?

JABマークなど国内認定機関のマークは、その認定機関が認定を行ったことを示します。ILAC-MRAマークは、その認定機関自体がILACの相互承認協定に加盟していることを示します。両方が記載されている証明書は、国際的に通用する信頼性の基盤を持つと解釈されますが、具体的な有効性は依頼先市場の規制要件によって異なります。

Q2. ILAC-MRA加盟認定機関に認定されていない試験機関の結果は使えないのですか?

必ずしもそうではありません。製品を販売する市場や用途によっては、ILAC-MRA認定が必須要件でない場合もあります。ただし、輸出先の顧客・規制機関がILAC-MRA認定機関の証明書を要求するケースは多いため、依頼前に要件を確認することを推奨します。

Q3. 光安全性試験(IEC 62471)の結果に、ILAC-MRAマークは必要ですか?

IEC 62471規格自体にILAC-MRA認定の取得義務は規定されていません。ただし、試験結果の信頼性を対外的に示すために、ILAC-MRA認定機関への依頼を求める顧客・バイヤーは少なくありません。依頼前に用途・顧客要件を確認することを推奨します。

Q4. 海外のILAC-MRAマーク付き証明書は日本で有効ですか?

ILAC-MRAは相互承認の枠組みであり、加盟認定機関から認定を受けた試験機関の証明書は加盟国間で同等に扱われることが基本的な原則です。ただし、個別の規制・法令・顧客要件への適合については別途確認が必要です。


まとめ・次のステップ

ILAC-MRAは、世界各国の認定機関が相互に技術的同等性を認め合うための国際的な枠組みです。ILAC-MRAマーク付きの試験報告書・校正証明書は、その証明書を発行した機関が国際的な基準を満たした認定機関から認定を受けていることを示しています。

試験機関・校正機関を選定する際は、マークの有無だけでなく、認定スコープに依頼内容が含まれているかを必ず確認してください。

次のステップとして、以下の関連記事もご参照ください。


参考規格・参考情報

ILAC公式サイト(MRA加盟認定機関リスト)、JAB公式サイト(認定機関データベース)、ISO/IEC 17025:2017(JIS Q 17025:2018)(各一次情報は公式サイト・IECウェブストアで確認してください。[要一次情報確認])

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