旭光通商株式会社 取締役
山西 幸男
光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。
この記事の監修
旭光通商株式会社 取締役
山西 幸男
光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。
目次
本記事では、2023年に改正された JIS Z 9125(室内照明の照度基準) について、実務者が押さえるべきポイントを整理しています。
照明設計や施設管理の現場で、最新の照度基準に対応するための参考資料としてご活用ください。
JIS Z 9125 は、日本産業規格(JIS)のうち、室内の照明環境に関する推奨照度 を定めた規格です。オフィス、工場、医療施設、教育施設など、さまざまな用途の室内空間における照明設計の指針として広く参照されています。
この規格は、作業の種類や空間の用途に応じた 維持照度(lx) の推奨値を示すものであり、照明設計・改修・点検における実務的な判断基準として機能しています。
なお、JIS Z 9125 は 推奨規格 であり、それ自体に法的拘束力はありません。ただし、労働安全衛生法に基づく事務所衛生基準規則などでは照度に関する基準が別途定められており、実務上はこれらと合わせて参照されるのが一般的です。
2023年の改正では、LED照明の普及や国際規格(ISO 8995-1 など)との整合性を考慮し、いくつかの見直しが行われたとされています。改正の方向性として報告されている主な項目は次のとおりです。
改正の正確な内容は規格本文(日本規格協会発行)で確認されることを推奨します。以下では、一般的に参照される主な推奨値について整理します。
以下の表は、JIS Z 9125 および関連規格で一般的に参照される推奨値の目安をまとめたものです。
実際の設計にあたっては、必ず規格本文の最新版を参照し、個別の条件(天井高、反射率、作業内容等)を考慮してください。
| 項目 | 一般事務作業 | 設計・製図 | 会議室 | 廊下・通路 |
|---|---|---|---|---|
| 維持照度(lx) | 750 | 750〜1000 | 500 | 100〜200 |
| UGR上限値 | 19以下 | 16以下 | 19以下 | 25以下 |
| 演色評価数(Ra) | 80以上 | 80以上 | 80以上 | 60以上 |
| 項目 | 精密作業 | 一般組立 | 粗作業・荷役 | 倉庫(通路) |
|---|---|---|---|---|
| 維持照度(lx) | 1000〜1500 | 500 | 200〜300 | 100 |
| UGR上限値 | 16以下 | 22以下 | 25以下 | 28以下 |
| 演色評価数(Ra) | 80以上 | 60以上 | 40以上 | 40以上 |
| 項目 | 診察室 | 手術室 | 病室(一般) | 廊下(夜間) |
|---|---|---|---|---|
| 維持照度(lx) | 500 | 1000以上 | 100〜200 | 50〜100 |
| UGR上限値 | 19以下 | 19以下 | 19以下 | — |
| 演色評価数(Ra) | 90以上 | 90以上 | 80以上 | 60以上 |
| 項目 | 教室 | 図書館(閲覧) | 体育館 | ロビー |
|---|---|---|---|---|
| 維持照度(lx) | 500 | 500 | 300〜500 | 200 |
| UGR上限値 | 19以下 | 19以下 | 22以下 | 22以下 |
| 演色評価数(Ra) | 80以上 | 80以上 | 60以上 | 60以上 |
上記の数値は、JIS Z 9125 および ISO 8995-1(CIE S 008)等で一般的に採用されている水準をもとにした参考値です。改正により一部の値が変更されている可能性があるため、設計実務では規格本文を直接確認してください。
UGR(Unified Glare Rating)は、室内照明における 不快グレア(まぶしさ)の度合い を数値化した指標です。CIE(国際照明委員会)が定めた統一評価方法に基づいており、JIS Z 9125 でも空間用途ごとの上限値が推奨されています。
UGR値が低いほどグレアが少なく、視覚的な快適性が高いことを意味します。一般的な目安は次のとおりです。
UGR値は、照明器具の輝度、背景輝度、器具の立体角、観測者の位置関係などから算出されます。計算式はCIE 117およびJIS Z 9125に規定されていますが、実務上は照明設計ソフトウェア(DIALux、Relux等)を使って自動算出するのが一般的です。
2023年版では、LED照明器具の配光特性を考慮したUGR評価の適用範囲が見直されたとされています。従来の蛍光灯を前提とした算出条件と、LED器具の小型・高輝度な発光面との違いを踏まえた記述の整理が行われた模様です。
具体的な変更内容の確認には、規格本文を参照してください。
演色評価数(Ra)は、光源が物体の色をどれだけ自然に再現するかを示す指標です。基準光源(自然光に近い光)を Ra 100 とし、値が高いほど色の再現性が良好です。
JIS Z 9125 では、空間用途に応じて推奨される Ra の下限値が示されています。
2023年改正では、LED光源の普及を踏まえて演色性に関する記述が見直されたとされています。LED光源は蛍光灯と異なるスペクトル特性を持つため、Ra だけでは色の見え方を十分に表現できないケースがあり、補足的な指標(Rf、Rg 等)への言及が追加された可能性があります。
詳細は規格本文で確認してください。
照明設計において JIS Z 9125 を活用する際の基本的なフローを整理します。
対象空間の用途・作業内容を確認し、JIS Z 9125 の推奨照度表から適用すべき維持照度(lx)を決定します。
照度だけでなく、グレア制限(UGR上限値)と演色性(Ra下限値)の推奨値も併せて確認します。
照明設計の品質管理として、光源の 光生物学的安全性 も確認しておくことが実務上望ましいとされています。
IEC 62471 の詳細については、IEC 62471 解説記事をご参照ください。
照明設備は経年劣化により照度が低下します。設計段階では保守率(MF: Maintenance Factor)を考慮し、初期照度を適切に設定することが重要です。
JIS Z 9125 は照明環境の質(照度・グレア・演色性)を扱う規格であり、光源そのものの安全性 は対象外です。一方、IEC 62471(国内では JIS C 7550 として規格化)は、光源から放出される光放射が眼や皮膚に与えるリスクを評価する規格です。
両規格の関係を整理すると、以下のようになります。
| 観点 | JIS Z 9125 | IEC 62471 |
|---|---|---|
| 対象 | 照明環境(空間) | 光源・照明器具(製品) |
| 評価項目 | 照度、UGR、演色性 | 光放射の眼・皮膚リスク |
| 目的 | 快適で効率的な視環境の確保 | 光生物学的安全性の確保 |
| 法的位置づけ | 推奨規格 | 製品安全規格(IECEEなど) |
照明設計の総合的な品質管理としては、JIS Z 9125 による環境基準と IEC 62471 による製品安全基準を併せて確認することが望ましいとされています。
IEC 62471 では、光源のリスクを4段階(免除グループ、リスクグループ1〜3)に分類しています。一般的な室内照明用LED器具の多くは免除グループまたはリスクグループ1に該当しますが、高出力タイプや特殊用途の光源は個別の評価が必要です。
リスクグループの詳細や評価手順については、当サイトの IEC 62471 関連記事 で解説しています。
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JIS Z 9125 に基づく照明環境の維持管理において、定期的に確認すべき主な項目を整理します。実際の点検項目は施設の用途や管理基準に応じて調整してください。
Q1: JIS Z 9125:2023 と JIS Z 9125:2010 の主な違いは何ですか?
2023年版では、LED照明の普及を踏まえた用途別区分の見直し、UGR(不快グレア)評価の更新、演色性に関する推奨値の調整などが行われたとされています。特に、LED光源の配光特性やスペクトル特性を反映した内容の整理が特徴です。詳細な変更点は規格本文で確認されることを推奨します。
Q2: JIS Z 9125 に基づく照度基準に法的拘束力はありますか?
JIS Z 9125 は推奨規格であり、それ自体に法的拘束力はありません。ただし、労働安全衛生法に基づく事務所衛生基準規則(第10条)などでは、精密な作業で300 lx以上、普通の作業で150 lx以上といった最低照度基準が定められています。JIS Z 9125 の推奨値はこれらの法定基準を上回る水準であり、設計・点検の実務指針として広く参照されています。
Q3: 照明設計で JIS Z 9125 と IEC 62471 の両方を確認する必要がありますか?
JIS Z 9125 は照明環境の質(照度・グレア・演色性)を扱い、IEC 62471 は光源の光生物学的安全性(眼や皮膚へのリスク)を扱います。目的は異なりますが、照明設計の総合的な品質管理として、両規格の要求事項を照合しておくことが実務上望ましいとされています。
JIS Z 9125:2023 は、室内照明の設計・点検における基本的な指針です。2023年の改正では、LED照明の普及を踏まえた照度推奨値の区分見直し、UGR評価の更新、演色性に関する記述の整理などが行われたとされています。
実務対応のポイントを改めて整理します。
設計や点検の実務にあたっては、規格本文(日本規格協会発行)を直接確認されることを推奨します。
本記事で参照した主な規格・文献は以下のとおりです。設計実務では、必ず最新版の規格本文を確認してください。
室内照明の光安全性評価や、IEC 62471 に基づく光源のリスクグループ確認が必要な場合は、お気軽にご相談ください。
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