IEC 62471-6:2023 最新改訂と製品対応ガイド

JIS Q 17025(ISO/IEC 17025)認定校正機関

2023年に発行されたIEC 62471-6は、紫外線(UV)を利用した照明機器やUVC殺菌灯における光生物学的安全性の評価を対象とした新たな国際規格です。本記事では、2024年11月のCorrigendum 2による最新改訂ポイントを紹介し、市場に流通する製品事例や今後のEU・日本国内での導入スケジュールについて解説します。

この記事の監修

山西 幸男

旭光通商株式会社 取締役

山西 幸男

光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。

IEC 62471-6の制定背景

COVID-19パンデミックを契機として、短波長紫外線(UV-C)を用いた除菌・殺菌製品が爆発的に市場に登場しました。これにより、従来のIEC 62471:2006では対応できない課題が顕在化し、以下の背景から新たに第6部(IEC 62471-6)が制定されました:

  • 家庭用や業務用のUV-C光源機器の市場急拡大
  • 既存規格では、UV-C波長の暴露評価手法が限定的であり、製品設計や表示に対する明確な指針が不足
  • 国際的な安全基準(CEマーキング、FDA等)との整合性の必要性

改訂ポイント(2024 Corrigendum 2)

  • Clause 6.1.3(曝露距離):製品評価距離の明確化(例:20 cm または最大光強点)
  • Annex C(警告表示):例示表現「WARNING – UV emission. Avoid exposure」および視認性基準(最小フォント8pt、コントラスト4.5:1)
  • Table 2(リスク分類基準):RG分類基準がより具体的に数値化され、曝露時間と照度の積(H = E × t)が新たな安全閾値として設定

製品事例とリスクグループ分類(定量基準)

IEC 62471-6 Annex B および Table 2 に基づく照度・照射時間による分類:

  • RG0(無リスク):E < 0.1 mW/cm²(照射時間 t ≦ 100 s)
  • RG1(低リスク):E = 0.1–0.2 mW/cm²
  • RG2(中リスク):E = 0.2–0.5 mW/cm²
  • RG3(高リスク):E > 0.5 mW/cm²(照射時間制限付き、退避要)
製品カテゴリ使用光源主な用途リスク分類(RG)備考
卓上型UVCランプ254 nm 水銀灯室内空間除菌RG3人の不在時に使用
ハンディUV-LED275 nm UV-LED携帯型除菌RG210秒以内使用
空気清浄機内蔵265 nm UV-LED連続使用RG1内部封じ込め構造

EUと日本における制度導入と罰則

地域導入規格ステータススケジュール
EUEN IEC 62471-6:20232024年CENELEC採用2026年7月CE適合義務化
日本JIS準拠予定経産省がJIS化検討中2025年度中に指針公表予定

義務化後は、CEマーク取得にIEC 62471-6準拠が必須となり、違反した場合は製品リコールや販売停止、罰金などの制裁が科される可能性があります(例:EU LVD規則違反の場合、国ごとの市場監視機関が強制措置可能)。

今後の課題と展望

  • 測定器と校正基準の標準化:分光放射照度計の追跡可能性や照射条件(角度・距離)の統一が必要
  • エビデンス整備:特に低照度・長時間暴露による皮膚/眼球影響の生体試験・疫学研究
  • 国際整合性:米FDA基準、IEC TR 62778とのギャップ解消、アジア諸国との相互認証の仕組み構築

参考文献

  1. IEC 62471-6:2023 + Corrigendum 2, Clause 6.1.3, Annex C, Table 2/3(IEC TC 76)
  2. EN IEC 62471-6:2023, CENELEC採用通知(EU directives on LVD/Machinery)
  3. 経済産業省「製品安全制度の見直し」およびJIS化検討資料(2025年度内指針)
  4. 1-20231201_gaiyo.pdf「安全保障貿易管理レジーム」
  5. setsumei_anpokanri.pdf「輸出管理制度の概要」

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