対象と規格の対応マップ
対象 | 主参照規格 | 主評価量 | 典型ハザード | 判定・表示 |
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ランプ/灯具(LED/UV/IR含む) | IEC 62471(EN 62471) | L(青色光/網膜熱)/E(UV/皮膚熱) | UV、青色光、網膜熱、IR | RG0〜RG3/ラベル・取説 |
レーザ製品 | IEC 60825‑1 | 放射出力・エミッタンス・走査条件 等 | 眼・皮膚の光/熱 | Class 1〜4/ラベル・インタロック等 |
職場の光ばく露(作業者) | 2006/25/EC(AORD) | ばく露量(E, H, L 等) | UV/可視/IR(人工光全般) | 閾値遵守・リスク管理 |
※ 製品がレーザを内蔵していても、外部にコヒーレント光として露出しない構造なら評価の切り分けが必要です。
評価フロー(図解)
① 適用判定(対象・規格)
→
② 使用条件の想定(距離・姿勢・モード)
③ 測定条件設定(評価距離・視野/開口)
→
④ 分光測定(校正・迷光対策)
⑤ 加重計算(B(λ)/S(λ)/R(λ)…)
→
⑥ 判定(RG/クラス/閾値)
⑦ 表示・取説・記録化
→
⑧ リスク低減と再評価
分光測定の作法(E と L の使い分け)
3-1. 照度 E(受光面)
- 用途:UV(角膜/皮膚)・IR(皮膚)など面受光の評価。
- 器材:余弦補正の良い受光器/分光放射計(200–3000 nmの必要帯域)。
- 要点:余弦誤差・環境光の影響を最小化。遮光フードでS/N改善。
3-2. 放射輝度 L(方向+面)
- 用途:青色光・網膜熱など眼ハザードのコア指標。
- 器材:視野制限孔+望遠光学系(apparent sourceに合わせたFOV)。
- 要点:視野設定・焦点位置・ダイナミックレンジの確保。
- 分解能:短波長端・青色域は加重関数の変化が急峻。波長刻みを粗くしない。
- 迷光・飽和:NDフィルタ・積分時間最適化で回避。原スペクトルの保存を徹底。
- 校正:波長・放射照度/輝度のトレーサビリティと有効期限を記録。
パルス/変調光源の扱い
- 有効値の定義:規格で定める時間平均/パルス単体/列の取り扱いを確認。
- 測定系の同期:パルス幅・繰返し・デューティを把握し、同期(トリガ)または高速積分で取得。
- 最悪条件:調光・点滅モードのうち最大ばく露を生む設定で評価。
加重計算と単位の注意
- UVのS(λ)、青色光のB(λ)、網膜熱のR(λ)など、対象ハザードごとに加重関数を適用。
- 数値積分は帯域端の外挿に注意。波長刻みと補間法を記録。
- 単位はL:W·m−2·sr−1、E:W·m−2 を徹底。報告時に桁/接頭辞の誤りが頻発。
- 許容時間 tvは「許容量 ÷ 実測値」で概算。最短の tv をボトルネックとして管理。
不確かさ管理(最短ガイド)
- 主因:校正、迷光、視野合わせ、再現性、幾何(距離/角度)。
- 簡易評価:合成標準不確かさ uc=√(u12+u22+…)、拡張不確かさ U≈k·uc(k=2目安)。
- 判定余裕:境界付近は安全側の仮定と再測で確証。測定写真と視野図を必ず添付。
判定・表示・文書(共通)
- IEC 62471:RG0〜RG3の結果→ラベル文言・取説の注意事項を反映。
- IEC 60825‑1:Class表記・開口径・作動キー/インタロック等の要求事項を確認。
- 2006/25/EC:ばく露評価・教育・保護具・工程管理など管理策を文書化。
販売地域によりPSE/CE等の制度的要件が加わります。関連記事をご参照ください。
現場チェックリスト
A. 事前計画
B. 測定・計算
記録テンプレート(貼り付け用)
項目 | 内容 | 根拠/添付 |
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対象・規格 | 62471/60825‑1/AORD | 適用判定票 |
評価距離 | __ mm | 設計/ユーザーシナリオ |
視野/開口 | __ mrad/開口径__ mm | 視野図(写真) |
点灯モード | 連続/点滅 f__ Hz・Duty__% | 仕様・ログ |
使用環境 | 屋内/屋外/明所・暗所 | — |
測定器と校正 | 機種・S/N・校正No. | 証明書添付 |
帯域 | 評価物理量 | 加重関数(記号) | 加重値 | 単位 | 許容値/基準 | 許容時間 tv | 判定メモ |
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Actinic UV | 照度 E(λ) | UVハザード S(λ) | EUV=∫E(λ)S(λ)dλ | W·m−2 | ____ | tv=許容量÷実測値 | 角膜/皮膚 |
UVA(眼) | 照度 | — | EUVA | W·m−2 | ____ | ____ | 曝露時間基準あり |
Blue‑light(網膜) | 放射輝度 L(λ) | 青色光 B(λ) | LB=∫L(λ)B(λ)dλ | W·m−2·sr−1 | ____ | 視野角:__ mrad | apparent source 要確認 |
Retinal thermal | 放射輝度 L(λ) | 熱ハザード R(λ) | LR=∫L(λ)R(λ)dλ | W·m−2·sr−1 | ____ | 短時間露光:__ s | — |
IR(眼/皮膚) | 照度 E または 放射輝度 L | — | EIR / LIR | W·m−2[・sr−1] | ____ | ____ | — |
よくあるNGと対策
- 評価距離の誤り:最短視距離の想定が甘い → ユースケース毎に写真で根拠化。
- 視野/開口のミスマッチ:apparent sourceを無視 → 視野図を作り直し。
- 照度/輝度の取り違え:青色光・網膜熱はL、UV/皮膚熱はEが基本。
- 迷光・飽和:NDフィルタ・積分時間・遮光で回避。原データ保存。
- 校正切れ:有効期限切れ→再校正・代替機の手配。
内部リンク(関連記事)
よくある質問(FAQ)
可視光は安全ですか?
高輝度や小さな見かけ面の光源では、可視でも網膜熱や青色光ハザードが問題になります。距離・時間・視野で管理します。
照度で全部評価できますか?
できません。網膜関連はL(放射輝度)が必須です。照度Eだけでは過小評価になります。
境界値付近の扱いは?
不確かさを加味し、安全側の仮定と再測で確認します。視野図・原スペクトルを必ず添付してください。