2024年改定 JIS T 5753「歯科用照明器」徹底解説|光学測定・色評価方法の変更ポイントと実務対応

JIS Q 17025(ISO/IEC 17025)認定校正機関

2024年6月1日施行のJIS T 5753「歯科用照明器」改定では、歯科診療における照明品質を飛躍的に高めるため、光源のスペクトル分布測定と最新の色再現評価手法が新たに導入されました。これにより、従来の照度中心評価だけでは見えにくかった微細な色差再現性や、長時間使用時の光質変化までを定量的に把握可能に。改定ポイントを正しく理解し、試験プロトコルの見直しや社内体制整備を行うことが、診療精度向上と規格適合の両立に不可欠です。本記事では、光学測定方法と色評価方法の変更点をわかりやすく整理し、歯科用照明器メーカー・設計者が今すぐ取り組むべき対応ステップとメリット・デメリットを解説します。

この記事の監修

山西 幸男

旭光通商株式会社 取締役

山西 幸男

光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。

はじめに:改定の背景と目的

2024年6月1日施行のJIS T 5753「歯科用照明器」の改定では、歯科診療における光源の安全性・再現性をさらに高めるため、光学的測定方法と色の評価方法が見直されました。従来の照度中心の評価から、スペクトル分布や色再現性を詳細に規定し、診療精度への貢献を強化するための改定です。

主な改定内容

  • 測定距離と視野角の明確化:従来曖昧だった測定距離(50cm/75cm)と視野角(10°)を厳格化し、再現性を向上。
  • スペクトル分布測定の追加:400–700nm帯の波長ごとに分光放射照度を測定し、歯科用LEDや水銀灯の光質を定量評価。
  • 色評価方法の改訂:旧来の平均演色評価数(CRI)に加え、TM-30-18(色再現指標Rf/Rg)を併用し、歯の微細色差の再現性を定量化。
  • 温度影響評価:長時間使用時の発光体温度上昇によるスペクトルシフトを含めた試験条件を追加。

ユーザーのメリット

  • 診療用光源の品質が明確に担保され、歯の色調判別の精度が向上
  • スペクトル分布と色再現性の定量評価が可能になり、機器選定の根拠が強化
  • 改定後の測定プロトコルに準拠することで、厚労省など行政検査・認証取得がスムーズ

ユーザーのデメリット・注意点

  • スペクトル測定機器や分光放射照度計の購入・校正コストが増加
  • Rf/Rg評価の習熟が必要で、社内トレーニングに時間を要する
  • 改定対応のため既存機器の再試験・書類更新が必要

改定対応ステップ

  1. 測定プロトコルの整備:改定版JIS T 5753に合わせ、測定距離・角度・波長条件を文書化
  2. 機器導入・校正:分光放射照度計およびTM-30対応カラーメーターを手配し、校正証明書を取得
  3. 試験実施:改定要件に基づくスペクトルと色再現性試験を実施、記録保存
  4. 技術文書更新:マニュアル・技術仕様書に新評価指標(Rf/Rg)と測定データを反映
  5. 社内トレーニング:評価手順と結果の読み方に関する担当者教育を実施

まとめ

JIS T 5753改定により、歯科用照明器の光質と色再現性評価は従来以上に厳密化されました。スペクトル分布と最新の色再現指標TM-30を導入することで、臨床現場での色判別精度が向上します。一方で、測定機器の導入コストや社内教育が必要になるため、自社体制を早めに整備し、改定対応スケジュールを策定しましょう。

参考文献

  1. 厚生労働省 公示「JIS T 5753 改定(歯科用照明器)」
    https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb9832&dataType=1(発行:2024年6月1日)

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