この記事で分かること
- JIS Z 9125:2023の改正ポイント(不快グレアUGR、壁・天井の推奨輝度、用途別推奨値の整理、エネルギー配慮の設計選択肢 など)
- 設計フロー:用途→照度→UGR→輝度→演色→保守計画
- 代表用途の推奨値(抜粋):事務所空間など
- 点検チェックリスト(受入検査・運用点検)
- IEC 62471との橋渡し(光安全評価の観点)
改正の背景:屋内照明の品質を保ちつつ、省エネや快適性(グレア・空間輝度)の両立を図る方向に整理されています。
改正ポイント(2023)
- 用途別の推奨値が再整理:事務所・教育・医療・商業・住宅など、空間ごとに照度・UGR・演色などを提示。
- 不快グレア(UGR)の上限を用途別に明確化。
- 空間の明るさ感を支える輝度:平均壁面輝度・平均天井輝度の目安を提示。
- オフィスの一部空間では、輝度条件を満たすことを前提に推奨照度を1段階下げ得る選択肢が明記(省エネ配慮)。
※ 詳細値は規格本文の表を参照してください。本記事の表は実務イメージの抜粋です。
設計フロー(図解)
① 用途・作業の特定
→
② 推奨照度 Em
③ UGR制限値の確認
→
④ 壁・天井の平均輝度
⑤ 演色・光色(Ra/クラス)
→
⑥ 保守計画(MF・点検)
(オフィス一部)輝度条件達成時は照度1段階低減可
→
試算:消費電力の低減
代表用途の推奨値(抜粋)
用途(例) | 推奨照度 Em | UGR上限 | 平均壁面輝度 | 平均天井輝度 | 演色性(例) | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
事務室(一般) | 500–750 lx | 19 | ≧ 30 cd/m² | ≧ 20 cd/m² | 高演色クラス1(例) | 輝度条件充足なら照度1段階低減可(設計判断) |
会議室 | 300–500 lx | 22 | — | — | Ra≧80(目安) | プレゼン用途に応じて調光を併用 |
病院・診療所(廊下) | 200–300 lx | 22 | — | — | Ra≧80(目安) | 夜間の眩しさ配慮 |
※ 上表は代表的な例のイメージです。実務ではJIS Z 9125:2023 本文の各表(事務所=表5、用途別=表6〜)で最新値をご確認ください。
現場で使える点検チェックリスト
A. 設計/改修時
- 用途・作業分類を特定(該当表番号:__)。
- 照度計画:作業面Em=__ lx(MF:__)。
- UGRシミュレーション:上限__以下(算出条件を保存)。
- 空間輝度:壁平均__ cd/m²、天井平均__ cd/m²(測定/計算根拠)。
- 演色:Raまたはクラス__(器具仕様書で確認)。
- (オフィス該当時)輝度条件充足→照度1段階低減採用/不採用(根拠)。
B. 受入/運用点検
- 照度実測(n点平均):作業面Em=__ lx(最低/最高も記録)。
- 不快グレア:眩しさ苦情の有無、視線方向の器具輝度確認。
- 壁/天井輝度:__/__ cd/m²(必要に応じ測定)。
- 故障・ばらつき:点灯不良__台、色度ばらつきの有無。
- 保守:清掃周期__、光束維持率__、交換基準__。
IEC 62471(光生物学的安全)との照合観点
- JIS Z 9125は快適性・視作業性の設計基準。光曝露リスク(UV/青色光/IR/熱)はIEC 62471で別途評価。
- 高輝度小光源・近接使用・幼児/患者向け機器などは、RG判定とラベリングを忘れずに。
- 照明器具選定時は、メーカーの光安全情報(規格適合・注意表示)も確認。
関連記事:IEC 62471 実務ガイド
内部リンク(関連記事)
よくある質問(FAQ)
照度は高いほど良い?
過剰な照度はエネルギー浪費やグレア増加を招きます。用途に応じた推奨照度とUGR・輝度バランスが重要です。
UGRは現場でどう扱う?
器具配置・配光・反射率を含むシミュレーションで確認し、眩しさの苦情が出やすい視線方向の器具輝度に注意します。
改修でまず見直すべきは?
配光と反射率(壁・天井の明るさ感)を確認。必要なら輝度条件を満たした上で照度の見直し(オフィス一部空間)も選択肢です。