旭光通商株式会社 取締役
山西 幸男
光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。
AR/VRヘッドセットは光学式ディスプレイを目の近くに配置するため、従来の照明やモニターとは異なる光安全性の論点があります。目への影響をめぐる議論の前提、IEC 62471とICNIRPの違い、開発・導入時の確認項目を整理します。
この記事の監修
旭光通商株式会社 取締役
山西 幸男
光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。
目次
AR(拡張現実)・VR(仮想現実)ヘッドセットは、光学式ディスプレイを目の近くに配置するという特性上、従来の照明器具やディスプレイとは異なる光安全性の論点を持ちます。近接ディスプレイは高輝度・広視野角で用いられることが多く、方式によってはレーザー走査型(LBS)が採用される場合もあり、それぞれ確認すべき観点が異なります。一方で、こうした論点は機器の仕様や使用時間によって程度が大きく異なり、一律に「危険」と断定できるものではありません。この記事では、AR/VR機器の光学設計担当者・安全衛生担当者に向けて、近接ディスプレイのリスク要因の整理、曝露基準の考え方(IEC 62471・ICNIRP)、関連しうる規格・法規、開発・導入時の確認ポイントを整理します。
一般的な照明器具やモニターは、使用者との距離が数十cm〜数m程度離れていることを前提に設計・評価されることが多いとされます。これに対し、AR/VRヘッドセット(HMD: Head Mounted Displayとも呼ばれます)は、接眼レンズを介して光学式ディスプレイを目のごく近くに配置する構造を持ちます。この「近接」という特性が、既存の光生物学的安全性の枠組みをそのまま適用できるかどうかという論点を生みます。
具体的には、測定・評価の前提となる「観察距離」や「視野角」が、一般的な光源を想定した規格の測定条件と一致しない可能性があります。また、AR/VR機器には非コヒーレント光源(LED・マイクロOLED等)を用いる方式と、レーザーを走査して画像を形成する方式(LBS: Laser Beam Scanning)があり、それぞれ参照されうる規格の枠組みが異なる点にも注意が必要です。VRゴーグルのような非シースルー型だけでなく、ARグラスのようなシースルー型でも、接眼距離の短さという共通の論点があります。
本記事では、AR/VRヘッドセットの光学式ディスプレイに関する光安全性の「考え方」を整理することを目的とし、具体的な曝露限界値・輝度しきい値等の数値には立ち入りません。数値的な基準は機器の仕様・使用条件・適用される規格の版によって異なるため、実際の評価にあたっては一次情報および専門機関への確認が必要です。
また、特定の製品・メーカーを想定した適合性の判断や、個々の機器が特定の規格に該当するかどうかの断定も行いません。本記事は、開発・導入担当者が社内検討や一次情報の参照を行う際の「見取り図」として位置づけています。
AR/VRヘッドセットの光安全性を検討する際に、論点として挙げられることが多い要因を整理すると、大きく「高輝度・視野角」「ブルーライト(青色光ハザード)」「レーザー走査型方式の場合の追加論点」の3つに分けられます。以下、それぞれの内容を確認します。

近接ディスプレイは、限られた光学系の中で明るい映像を再現するために、光源自体の輝度を高める設計が採られる場合があるとされます。また、広い視野角(FOV: Field of View)を実現する光学設計では、発光面が目に近い分、見かけ上の光源サイズや網膜上での照射範囲が、遠方の光源とは異なる条件になり得ます。
これらは「輝度が高いこと自体が直ちに危険を意味する」という単純な話ではなく、光生物学的な評価では、輝度に加えて波長分布・曝露時間・観察条件(瞳孔径、まばたき等の回避反応の有無)といった複数の要素が組み合わさって検討されるとされています。評価方法の詳細は規格原文をご確認ください。近接光学系特有の条件をどのように評価に反映するかは、後述するIEC 62471等の枠組みの適用論点とも関わります。近接ディスプレイからの光曝露をどう評価するかという論点は、次項以降で扱う青色光ハザードやレーザー走査型方式の論点にも共通します。
なお、光生物学的な評価で用いられるのは測光量である輝度(cd/m²)ではなく、放射輝度・放射照度といった放射量に、ハザードごとの重み付け関数を適用した値とされます。カタログ上の輝度値がそのまま評価量になるわけではない点に注意が必要です。
LED光源やディスプレイ全般で論点となる「青色光ハザード」は、AR/VRの近接ディスプレイでも同様に注目される観点です。青色光ハザードは、可視光のうち短波長側(重み付け関数のピーク感度は435〜440nm付近とされる)の成分が、網膜に対して光化学的な作用機序で影響しうるという考え方に基づく評価軸とされています。重み付け関数の正確な定義は規格原文をご確認ください。
一般的なディスプレイのブルーライト曝露基準の考え方については、既存記事で整理していますので、あわせてご参照ください。職場のブルーライト曝露基準と実務対応の解説
近接ディスプレイの場合、光源のスペクトル分布(発光色ごとの成分比率)に加え、接眼距離が短いという条件が評価にどう影響するかが論点として残ります。青色光ハザードの評価それ自体は既存の枠組みで扱われてきた考え方ですが、AR/VR用途の近接光学系を前提とした評価手法が確立しているかどうかは、本記事の調査範囲では確認できていません。測定機関にご確認ください。
AR/VRディスプレイの一部には、LED・マイクロOLED等の非コヒーレント光源ではなく、レーザーを走査して画像を形成する方式(レーザー走査型ディスプレイ、LBS)が採用される場合があります。この方式では、非コヒーレント光源とは異なる規格の枠組み、具体的にはレーザー製品としての安全基準が関係しうる点に注意が必要です。LBS方式はさらに、投影先の違いにより次の2方式に大別されるとされます。
網膜に直接投影する方式
レーザー光を眼の光学系を通じて網膜に直接走査し、像を結ばせる方式です。光路が眼球内部まで到達する構造上、意図的に眼へレーザー放射を向ける製品として扱われる可能性があるとされます。該当性は測定機関にご確認ください。
透過型スクリーンに投影する方式
レーザー光を透過型・反射型のスクリーンやコンバイナに走査して画像を形成し、その像を観察する方式です。網膜に直接投影する方式に比べ、一般的なレーザーディスプレイの延長として扱われやすいとされますが、いずれの整理も本記事の調査範囲での一般論です。自社製品の分類は個別にご確認ください。
レーザー製品の安全性評価の基本的な考え方(レーザークラス分類等)については、既存記事で整理しています。レーザー製品のクラス分類(IEC 60825-1)の解説
LBS方式のAR/VR機器では、通常の使用条件下でのレーザークラス(クラスは製品ごとの測定結果と設計条件に基づいて決定されるため、表示方式から一律に推定することはできません)に加え、意図的に顔・眼にレーザー放射を向ける製品を対象とした技術仕様書が発行されているとされます。詳細は4章で確認します。
特に網膜投影型については、本記事で確認した範囲の規格群がいずれも対象外または限定的なスコープとされており、どの枠組みで評価すべきかは規格原文の確認および測定機関への個別照会が不可欠です。
AR/VRの光安全性を検討する際、しばしば参照される枠組みとしてIEC 62471とICNIRPガイドラインがあります。両者はいずれも光生物学的な安全性に関わりますが、位置づけ・策定主体・対象が異なるため、混同しないよう整理しておくことが実務上重要です。
【表1】IEC 62471とICNIRPガイドラインの比較
| 比較軸 | IEC 62471(Photobiological safety of lamps and lamp systems) | ICNIRPガイドライン(Guidelines on Limits of Exposure to Incoherent Visible and Infrared Radiation, 2013) |
|---|---|---|
| 位置づけ | 光源・ランプシステムの光生物学的安全性を評価・分類するための国際規格。CIE S 009:2002と共同発行(デュアルロゴ)とされ、ICNIRP等が示す曝露限界の考え方を参照しつつ、製品分類の枠組みとして構成されたものとされる | 国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が策定した、人体への曝露限界値に関する科学的勧告文書 |
| 策定主体 | IEC(国際電気標準会議)※CIE(国際照明委員会)との共同関係あり | ICNIRP(非政府の国際科学組織。WHOと公式関係を持つとされる) |
| 法的拘束力 | 規格自体に法的拘束力はない。各国・地域の規制や整合規格(EN 62471)、JIS(JIS C 7550)として取り込まれることで、実務上は認証・調達要件として機能し得る | 勧告文書であり、それ自体に法的拘束力はない。各国が自国の法規にどう取り込むかは個別の判断に委ねられる |
| 対象 | 電気駆動の非コヒーレント広帯域光源(LED含む、レーザー除く)を用いたランプ・ランプシステム・照明器具という「製品」 | 可視光・赤外放射という「曝露(人体への影響)」そのもの。特定の製品カテゴリを前提としない |
| 測定・評価条件 | 一般照明(GLS)は500 lx照度となる距離、それ以外の光源は200 mm距離を基準とした測定技術を規定しているとされる | 測定手順そのものは規定せず、曝露限界値(許容基準)を科学的に提示する位置づけ |
| リスク区分の考え方 | RG0〜RG3のリスクグループとしてランプ・ランプシステムを分類する仕組みを持つとされる | リスクグループのような製品分類の仕組みは持たず、波長別・曝露時間別の曝露限界値を提示する考え方とされる |
| AR/VR近接ディスプレイへの適用上の留意点 | 測定条件が、接眼距離の短い近接光学系の実使用条件と一致しない可能性があり、直接適用の可否は論点として残る(適用除外の明文は確認できていない) | 曝露限界値自体は波長・時間ベースの科学的知見であるため近接光学系にも参照され得るが、ICNIRP自体がAR/VR HMDを名指しして扱った文書は確認できていない |
上表は公開情報に基づく整理であり、規格原文での裏取りが完了していない項目を含みます。自社製品への適用可否は、規格原文および測定機関にご確認ください。
上表のとおり、IEC 62471は「製品」を対象とした測定・分類の枠組みであるのに対し、ICNIRPガイドラインは「曝露」そのものに対する科学的な限界値の勧告という性格を持ちます。AR/VRの近接ディスプレイは、IEC 62471が想定する一般的な測定距離(200mm等)とは異なる接眼距離で使用されるため、規格の測定条件をそのまま適用できるかどうかは論点として残ります。
一般的なブルーライト曝露基準の考え方は、通常のディスプレイ・照明機器を念頭に整理されていることが多く、AR/VR特有の接眼距離・光学系構成を踏まえた評価の枠組みについては、本記事の調査範囲では一次情報を確認できていません。開発担当者においては、自社機器の光学系構成を踏まえ、測定機関または規格原文で個別にご確認ください。
IEC 62471・ICNIRPガイドライン以外にも、AR/VR機器の設計・評価に関係しうる規格・法規がいくつか存在します。ここでは、書誌情報の範囲で確認できた内容を整理します。いずれも本文までは精読しておらず、詳細な適用関係は一次情報でのご確認をお願いします。
IEC TS 60825-20:2025(Part 20: Safety requirements for products intentionally exposing face or eyes to laser radiation)は、レーザー放射を意図的に顔や眼に向ける製品を対象とした技術仕様書(TS: Technical Specification)とされ、対象アプリケーション例としてVRヘッドセット・グラスが挙げられているとされています。眼・顔認識機能やジェスチャートラッキング機能を持つ機器も対象に含まれるとされます。適用範囲は規格原文をご確認ください。
この規格は、フォールト(故障)条件下での安全要求を中心に扱うものとされ、定格出力時(正常動作時)の安全性そのものは本規格のスコープ外とされている点に留意が必要です。スコープの境界は規格原文をご確認ください。したがって、定格出力時(正常動作時)の安全性については、本技術仕様書ではなくIEC 60825-1等の別の枠組みで確認する必要があると考えられます。両者は代替関係ではなく、確認範囲が異なる点に注意が必要です。また、医療・眼科用機器、車載LiDAR、業務用の長時間曝露用途は適用除外とされています。2025年発行と比較的新しい規格であるため、実務での取り込み状況・整合規格化の状況もあわせてご確認ください。
なお、画像投影機を対象とするIEC 62471-5:2015が存在しますが、コリメート走査型レーザーディスプレイは対象外と明記されているとされます。適用除外の範囲は規格原文をご確認ください。このため、LBS方式のうちコリメート走査型に該当する機器については、IEC 62471-5とIEC TS 60825-20:2025のいずれについても対象範囲を個別にご確認ください。
IEC 63145シリーズは、アイウェアディスプレイ(Eyewear display)の光学特性・画質に関する測定方法を扱う規格群とされ、Part 20-10(光学特性の基本測定方法、2019年)、Part 20-20(画質の基本測定方法、2019年)、Part 21-20(VRのスクリーンドア効果測定、2022年)、Part 22-20(ARの画質測定、2024年)といった構成があるとされています。非シースルー型(VRゴーグル等)とシースルー型(ARグラス等)の虚像光学系を対象とし、コンタクトレンズ型・網膜投影型は対象外とされています。
確認できた範囲では、本シリーズは光学特性・画質の測定方法を扱う規格であり、光生物学的安全性を直接扱うパートがあるかどうかは確認できていません。ただし、これは「存在しないことの証明」ではなく、あくまで本記事の調査範囲での確認結果です。
国内では、電気用品安全法(PSE)が電気製品の対象品目を政令で個別指定する構造を持ちますが、これは感電・火災等の電気安全に関する法規であり、光生物学的安全性を直接規定するものではありません。AR/VRヘッドセットがPSEの対象品目に該当するかどうかは、本記事では確認できておらず断定できません。該当性は経済産業省または登録検査機関にご確認ください。
海外では、EU一般製品安全規則(GPSR、Regulation (EU) 2023/988)が2024年12月13日から適用開始となっており、分野別の規制がある場合はそちらが優先されるとされています。AR/VR機器固有の適用関係は確認できていません。また、EU玩具安全規則(新規則。規則番号・適用日は本記事では未確認)は既存指令(2009/48/EC)を置き換えるものとされます。一般消費者向けAR/VR機器は通常「玩具」に該当しないと考えられますが、子ども向け玩具として販売される製品では適用対象となり得ます。該当性は各国当局にご確認ください。米国では、21 CFR 1040.10(Laser products)がFDA/CDRHの管轄下で1976年8月1日以降に製造された全レーザー製品を対象とするとされていますが、条文原文は未取得であり、AR/VR機器への適用関係の詳細は確認できていません。
ここまでの内容を踏まえ、AR/VRヘッドセットの開発担当者・企業導入担当者が確認しておきたいポイントを整理します。以下は一般的な論点の整理であり、実際の必要対応は機器仕様・用途によって異なります。
【表2】開発・導入時の確認項目
| リスク要因 | 論点になること | 確認すべき仕様項目 | 参照されうる規格の枠組み | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 高輝度・視野角 | 近接光学系での輝度・見かけ上の光源サイズが、一般的な測定条件と異なる可能性 | ディスプレイ輝度(分光放射特性の測定値の有無を含む)、視野角(FOV)、接眼距離、光学系の拡大率 | IEC 62471(適用可否は論点)、ICNIRPガイドライン | 数値的な判断は機器メーカー・測定機関への個別確認が必要 |
| 青色光成分(スペクトル) | 短波長側の成分比率が青色光ハザードの評価軸として注目される | 発光スペクトル分布、色温度設定、輝度制御機能の有無 | IEC 62471、IEC/TR 62778(技術報告書) | IEC/TR 62778は規格本体ではなく技術報告書である点に留意 |
| レーザー走査型(LBS)方式 | 非コヒーレント光源とは異なる規格枠組み(レーザー製品)が関係しうる | 採用光源方式(LED/OLED/LBS)、走査時のクラス分類、故障時の安全設計 | IEC 60825-1、IEC TS 60825-20:2025 | フォールト条件下の安全要求と定格出力時の安全性は区別して確認 |
| 使用時間・使用形態 | 長時間・連続使用が想定される用途では累積的な曝露や、光曝露とは別要因(輻輳調節矛盾等)による眼精疲労が論点となりうる | 想定連続使用時間、休憩設計、輝度自動調整機能の有無 | 曝露基準の考え方全般(数値基準は個別確認) | 影響の程度は使用時間・個人差により異なり、一律の断定は避ける |
| 個人差・想定ユーザー層 | 年齢・瞳孔径・視覚特性等の個人差が評価に影響しうる | 想定ユーザー層(成人/未成年等)、警告表示・年齢制限の有無 | 各規格の想定ユーザー区分(詳細は個別確認) | 未成年ユーザーを想定する場合は別途の配慮が論点となりうる |
上表は公開情報に基づく整理であり、規格原文での裏取りが完了していない項目を含みます。自社製品への適用可否は、規格原文および測定機関にご確認ください。
設計・仕様検討の段階では、採用する光源方式(非コヒーレント光源かレーザー走査型か)によって参照すべき規格の枠組みが異なる点を、まず社内で整理しておくことが有用です。あわせて、接眼距離・視野角といった近接光学系特有のパラメータが、想定する評価基準の測定条件とどう関係するかを、測定機関や規格の一次情報を通じて確認することが望まれます。
輝度制御機能(自動調光等)やブルーライト成分を抑制する設計は、リスク低減の一つの方向性として言及されることがありますが、これらの機能の有無が特定の規格適合を保証するものではない点にも注意が必要です。
産業用途・業務用途でAR/VRヘッドセットを導入する場合、作業者が長時間・連続的に装着することが想定されるケースがあります。この場合、光学的な曝露基準の論点に加え、休憩設計や使用時間の管理方針を運用ルールとして整備しておくことが実務上のポイントになります。
長時間使用時の影響の程度は、機器の仕様(輝度、視野角、光源方式等)、使用時間、個人差によって異なるとされ、一律に「長時間使用は危険」と断定することは避けるべきです。企業導入の安全衛生担当者においては、機器メーカーが提供する仕様情報を確認したうえで、自社の使用実態に応じた運用ルールを検討することが推奨されます。
Q1: VR・ARヘッドセットの使用は目に悪影響がありますか?
A1: 近接ディスプレイの輝度・ブルーライト成分等が論点として指摘されることがありますが、影響の程度は機器の仕様・使用時間・個人差により異なります。一般的な光生物学的安全性の評価枠組み(IEC 62471等)の考え方を踏まえた評価が参考になりますが、一律に悪影響があると断定することはできません。
Q2: レーザー走査型のARグラスにも安全基準はありますか?
A2: レーザーを用いた表示方式の場合は、レーザー製品としての安全基準(IEC 60825-1等)に加え、顔・眼への意図的な曝露を扱うIEC TS 60825-20:2025のような専用の枠組みも関係しうる場合があります。ただし同技術仕様書は定格出力時(正常動作時)の安全性そのものはスコープ外とされ、その部分はIEC 60825-1等の別の枠組みで確認する必要があると考えられます。具体的な適用関係は機器の設計によって異なるため、個別にご確認ください。
Q3: AR/VRデバイスの光安全性評価はどこに相談すればよいですか?
A3: 光学的特性の測定・評価に関するご相談を承っています。近接ディスプレイの評価項目・手順は機器の仕様や用途により異なるため、個別のご相談をおすすめします。
AR/VRヘッドセットの光安全性は、近接ディスプレイという特性上、高輝度・視野角、ブルーライト(青色光ハザード)、レーザー走査型方式の場合の追加論点という複数の観点から整理する必要があります。曝露基準の考え方としては、IEC 62471(製品を対象とした規格)とICNIRPガイドライン(曝露そのものを対象とした勧告)の位置づけの違いを理解したうえで、近接光学系への適用可否という論点が残る点に留意が必要です。
また、IEC TS 60825-20:2025やIEC 63145シリーズなど、AR/VR機器を直接的・間接的に扱う規格も整備されつつありますが、いずれも本記事執筆時点では書誌情報の確認にとどまり、詳細な適用関係は一次情報での確認が欠かせません。開発・導入担当者においては、機器の光源方式・使用形態を踏まえ、専門機関や一次情報への個別照会を通じて、機器仕様に応じた評価を進めることが実務上のポイントになります。
AR/VRデバイスの光学的安全性評価・測定に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| HMD(Head Mounted Display) | 頭部に装着する形式のディスプレイ機器。AR/VRヘッドセットの光学系を指す一般的な呼称 |
| 近接ディスプレイ | 接眼レンズ等を介し、目の近くに配置される光学式ディスプレイ。一般的な照明・モニターとは測定・評価条件が異なりうるとされる |
| LBS(Laser Beam Scanning、レーザー走査型ディスプレイ) | レーザーを走査して画像を形成する表示方式。非コヒーレント光源とは異なる規格の枠組み(レーザー製品の安全基準)が関係しうる |
| 青色光ハザード | 可視光のうち短波長側(重み付け関数のピーク感度は435〜440nm付近とされる)の成分が、網膜に対して光化学的な作用機序で影響しうるという考え方 |
| RG(リスクグループ) | IEC 62471においてRG0〜RG3としてランプ・ランプシステムを分類する仕組みとされる区分 |
| ICNIRP | 国際非電離放射線防護委員会。非電離放射線の曝露限界値に関する勧告を策定する非政府の国際科学組織 |
| Technical Specification(TS)/ Technical Report(TR) | IECにおいて、正式な規格(IS: International Standard)とは区別される文書区分。TSは技術仕様書、TRは技術報告書を指すとされ、いずれも規格本体とは異なる位置づけとされる |
| GPSR(EU一般製品安全規則) | Regulation (EU) 2023/988。EU域内で流通する製品全般に適用されうる一般的な安全規則 |
上表は公開情報に基づく整理であり、規格原文での裏取りが完了していない項目を含みます。自社製品への適用可否は、規格原文および測定機関にご確認ください。
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