旭光通商株式会社 取締役
山西 幸男
光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。
この記事の監修
旭光通商株式会社 取締役
山西 幸男
光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。
目次
光源を扱う製品の設計や施設管理において、光の波長帯ごとに異なる安全性リスクを正しく理解することは、規格適合や安全設計の出発点です。LED照明、UVC殺菌灯、赤外線ヒーターなど、光源の種類によって放射される波長帯は異なり、それぞれに固有のリスクが存在します。
IEC 62471をはじめとする国際規格では、波長帯に応じたハザード要因が定義されており、製品評価や施設管理において波長帯別のリスク把握が不可欠です。この記事では、紫外線(UV)、可視光、赤外線(IR)の各波長帯について、人体への影響と安全性規格上の取り扱いを実務視点で整理します。光源の選定や安全評価を行う担当者の方が、波長帯ごとのリスクの全体像を把握するための基礎資料としてご活用ください。
光は電磁波の一部であり、光安全性の文脈では主に100nmから1mmまでの波長域が対象です。この範囲には紫外線、可視光、赤外線が含まれます。
人間の眼で知覚できるのは可視光(おおむね380〜780nm)のみですが、安全性の観点では眼に見えない紫外線や赤外線も重要な評価対象です。
光安全性に関わる波長帯は、一般に以下のように区分されます。
| 区分 | 波長範囲 | 主な特性 |
|---|---|---|
| UV-C | 100〜280nm | 短波長紫外線。殺菌作用が強い |
| UV-B | 280〜315nm | 中波長紫外線。皮膚への影響が大きい |
| UV-A | 315〜400nm | 長波長紫外線。透過性が高い |
| 可視光 | 380〜780nm | 人間の眼で知覚可能な光 |
| IR-A(近赤外線) | 780〜1400nm | 組織深部まで到達しやすい |
| IR-B(中赤外線) | 1400〜3000nm | 水分に吸収されやすい |
| IR-C(遠赤外線) | 3000nm〜1mm | 表面で吸収される |
なお、UV-AとIR-Aの波長範囲は文献や規格により定義に若干の差異があります。本記事ではIEC 62471およびCIE(国際照明委員会)で広く使用される区分に沿って記載しています。
紫外線は波長が短いほどエネルギーが高く、光化学的な作用が強くなります。波長帯ごとの特性とリスクを整理します。
UV-Aは紫外線の中で最も波長が長く、地表に届く紫外線の大部分を占めます。
UV-BはUV-Aより波長が短く、光化学的作用が強い波長帯です。
UV-Cは最も波長が短い紫外線帯域で、殺菌作用が最も強い一方、安全性リスクも高い波長帯です。
紫外線殺菌灯の安全基準と規格の詳細については、UVC殺菌灯の安全基準と規格をご参照ください。
可視光は日常的に接する光であるため安全と思われがちですが、特定の条件下ではリスク要因となります。
可視光のうち短波長側(380〜500nm付近)の青色光は、光化学的網膜傷害のリスク要因として評価されています。
ブルーライトの職場対策の詳細については、ブルーライトの職場対策と基準をご参照ください。
波長に関係なく、高輝度の可視光源は網膜熱傷害のリスクがあります。
赤外線は可視光より波長が長く、主に熱的作用によるリスクが評価対象となります。
IEC 62471(ランプおよびランプシステムの光生物学的安全性)は、200nmから3000nmの波長帯を対象として、光源のリスクグループ分類を行う国際規格です。
同規格で評価されるハザード要因と対応する波長帯は以下の通りです。
| ハザード要因 | 評価波長帯 | 主なリスク |
|---|---|---|
| 紫外放射ハザード(皮膚・眼) | 200〜400nm | 光化学的損傷 |
| 近紫外放射ハザード(眼) | 315〜400nm | 水晶体への影響 |
| ブルーライトハザード(網膜) | 300〜700nm(重み関数適用) | 光化学的網膜損傷 |
| 網膜熱傷害ハザード | 380〜1400nm | 網膜の熱損傷 |
| 赤外放射ハザード(眼) | 780〜3000nm | 角膜・水晶体への熱影響 |
リスクグループは、免除(Exempt)、リスクグループ1(低リスク)、リスクグループ2(中リスク)、リスクグループ3(高リスク)の4段階に分類されます。
IEC 62471の詳しい解説はIEC 62471 LED光源の光安全性試験をご参照ください。
| 波長帯 | 主な人体影響 | 影響部位 | 作用の種類 | IEC 62471評価 |
|---|---|---|---|---|
| UV-C(100-280nm) | 角膜炎、紅斑 | 角膜、皮膚表面 | 光化学的 | 対象 |
| UV-B(280-315nm) | 紅斑、DNA損傷 | 表皮、角膜 | 光化学的 | 対象 |
| UV-A(315-400nm) | 光老化、白内障リスク | 真皮、水晶体 | 光化学的 | 対象 |
| 可視光・青色域(380-500nm) | ブルーライトハザード | 網膜 | 光化学的 | 対象 |
| 可視光・全域(380-780nm) | 網膜熱傷害(高輝度時) | 網膜 | 熱的 | 対象 |
| IR-A(780-1400nm) | 網膜熱傷害、赤外線白内障 | 網膜、水晶体 | 熱的 | 対象 |
| IR-B(1400-3000nm) | 角膜熱傷、皮膚熱傷 | 角膜、皮膚表面 | 熱的 | 対象 |
| IR-C(3000nm-1mm) | 皮膚表面の熱傷 | 皮膚表面 | 熱的 | 対象外(別規格) |
製品設計段階で光源の安全性を確認する際は、以下の点を考慮します。
施設の光環境を管理する立場では、以下の観点が重要です。
紫外線と赤外線はリスクの性質が異なるため、一概には比較できません。紫外線は光化学的作用(DNA損傷、紅斑、光老化など)が主であり、赤外線は熱的作用(やけど、角膜や水晶体の熱損傷など)が主です。リスクの大きさは波長帯だけでなく、光源の強度、曝露時間、曝露距離にも依存します。IEC 62471では紫外線・赤外線の両方に対してリスク評価基準が設けられています。
あります。特に380〜500nm付近のブルーライトは、高強度の曝露条件下で光化学的網膜傷害(ブルーライトハザード)のリスクがあります。また、波長にかかわらず高輝度の可視光源は網膜熱傷害のリスク要因となり得ます。IEC 62471ではブルーライトハザードおよび網膜熱傷害ハザードの両方が評価対象に含まれています。
IEC 62471は200nmから3000nmまでの波長帯を評価対象としています。紫外線(UV-A/B/C)、可視光、近赤外線(IR-A)、中赤外線(IR-Bの一部)がカバーされます。3000nmを超える遠赤外線(IR-C)は同規格の直接的な評価対象外であり、必要に応じてIEC 60825シリーズなど他の規格を参照します。
光安全性の評価では、光源が放射する波長帯ごとにリスクの性質が異なる点を理解することが重要です。紫外線は光化学的損傷、赤外線は熱的損傷が主なリスクであり、可視光域でもブルーライトハザードや網膜熱傷害といったリスクが存在します。
IEC 62471は200〜3000nmの波長帯を対象に、各ハザード要因に対するリスクグループ分類を行う国際規格です。製品設計や施設管理にあたっては、光源のスペクトルデータとリスクグループ分類を確認し、必要な対策を検討することが基本的な進め方となります。
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| 波長 | 光(電磁波)の振動1周期分の長さ。nm(ナノメートル)で表記されることが多い |
| リスクグループ | IEC 62471で定義される光源の安全性分類。Exempt(免除)~RG3(高リスク)の4段階 |
| ブルーライトハザード | 380〜500nm付近の短波長可視光による光化学的な網膜傷害リスク |
| 曝露限界値 | 人体が安全に曝露できる光放射の上限値。波長帯やハザード要因ごとに設定される |
| スペクトル | 光の波長ごとの強度分布。光源の安全性評価に不可欠なデータ |
| 分光放射照度計 | 波長ごとの放射照度を測定する計測器。光安全性評価の基本的な測定機器 |
上記規格の具体的な数値基準や適用条件については、各規格の原文または最新版をご確認ください。
光源の波長帯別リスク評価や、IEC 62471に基づく試験方法の詳細について確認が必要な場合は、測定相談・お問い合わせをご利用ください。自社製品の光安全性評価をご検討中の方も、お気軽にご相談いただけます。
最短7日間で校正完了光安全性の測定のご相談はこちら