旭光通商株式会社 取締役
山西 幸男
光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。
この記事の監修
旭光通商株式会社 取締役
山西 幸男
光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。
目次
試験機関・校正機関を初めて選ぶ担当者が最初に直面する問いの一つが「ISO/IEC 17025認定って何ですか?必要ですか?」という疑問です。
この記事では、ISO/IEC 17025という規格が何を認定するものか、認定を持つ機関と持たない機関の違い、そして光安全性試験・分光放射照度計の校正依頼における実務的な選定ポイントを解説します。
ISO/IEC 17025は、試験・校正機関の技術的能力を評価・認定するための国際規格です。試験・校正を行う機関(試験所・校正機関)が、特定の試験・校正を正確かつ再現性をもって実施できる能力を持っているかを審査する際の基準となります。
規格は以下の2つの主要要素から構成されています。
認定を取得するためには、認定機関(JABなど)による書類審査・現地審査を経て、これらの要求事項を満たしていることが確認される必要があります。
ISO 9001とISO/IEC 17025はしばしば混同されますが、認定の対象が異なります。
| 規格 | 主な対象 | 認定・認証の内容 |
|---|---|---|
| ISO 9001 | あらゆる組織の品質マネジメントシステム | 組織の業務プロセスの品質管理の仕組み |
| ISO/IEC 17025 | 試験・校正機関 | 試験・校正の技術的能力と品質マネジメントの両方 |
ISO 9001認証を取得していても、ISO/IEC 17025の認定を取得しているとは限りません。試験・校正の技術的能力の裏付けとして求められるのはISO/IEC 17025認定です。
ISO/IEC 17025は2017年に改訂されており(ISO/IEC 17025:2017)、国内ではJIS Q 17025:2018として整合化されています。 2017年版では、リスクに基づく思考の導入、プロセスアプローチの強化、および技術的要求事項の整理が行われました。規格の詳細は一次情報(IECウェブストア・JSA)でご確認ください。
ISO/IEC 17025の認定は、認定機関(日本ではJABなど)が行います。試験・校正機関が認定を取得するまでの一般的な流れは以下の通りです。
認定スコープとは、その試験・校正機関がISO/IEC 17025の認定を受けた試験・校正の具体的な範囲です。
例えば、光安全性試験に関する認定スコープであれば「IEC 62471に基づく光生物学的安全性試験」「特定の測定項目・波長域」などが記載されます。照度計の校正であれば「照度の校正(測定範囲・波長域)」のように具体的な範囲が規定されています。
認定スコープに含まれない試験・校正については、ISO/IEC 17025認定の対象外となり、証明書にILAC-MRAマークを表示できません。
認定は一度取得すれば永続するものではありません。定期的なサーベイランス審査(定期確認)および更新審査が求められ、その都度技術的能力の維持が確認されます。認定の有効性については、認定機関のデータベースで現在の状況を確認することを推奨します。
ISO/IEC 17025認定機関は、認定審査において技術的能力が確認されています。非認定機関の場合、技術的能力の水準は機関ごとに異なり、外部から客観的に評価する手段が限られます。
実務上の主な違いを以下に整理します。
| 比較項目 | 認定機関 | 非認定機関 |
|---|---|---|
| 技術的能力の審査 | 認定機関による定期審査あり | 外部審査なし(自己申告) |
| 測定不確かさの評価・開示 | 原則として証明書に記載 | 記載されない場合がある |
| トレーサビリティの確認 | 認定スコープ内で担保 | 確認が困難な場合がある |
| 証明書のILAC-MRAマーク | 認定スコープ内で表示可 | 表示不可 |
| 対外的な信頼性の証明 | 第三者審査による裏付けあり | 信頼性の証明が困難な場合あり |
ISO/IEC 17025認定機関が発行する校正証明書には、原則として測定不確かさが記載されます。測定不確かさとは、測定結果の信頼性の幅を定量的に示す指標です(詳細はcal05記事「校正証明書の読み方」をご参照ください)。
測定不確かさが記載された証明書であれば、測定結果をどの精度で信頼できるかを定量的に評価できます。非認定機関の証明書では測定不確かさが記載されない場合があり、測定結果の精度の評価が困難になることがあります。
JABは認定機関のデータベースを公開しており、以下の手順で確認できます。
依頼先機関の認定番号を控えた上でデータベースで照合することを推奨します。
海外の試験・校正機関については、ILAC公式サイトのMRA署名機関リストで、その機関を認定した認定機関がILACのMRAに署名しているかを確認できます。[要一次情報確認] ILAC-MRAの枠組みについては、cal01記事「ILAC-MRAマークとは?」をご参照ください。
光安全性試験(IEC 62471)または分光放射照度計の校正を依頼する場合は、認定スコープに以下の内容が含まれているかを確認してください。
スコープの記載が依頼内容に一致しない場合は、依頼前に試験・校正機関に個別確認することを推奨します。
依頼前に以下の項目を確認してください。
| 確認カテゴリ | 確認内容 |
|---|---|
| 認定の有無 | ISO/IEC 17025認定を取得しているか |
| 認定機関 | 認定しているのがILAC-MRA加盟認定機関(JABなど)か |
| 認定スコープ | 依頼内容が認定スコープに含まれているか |
| 認定番号の照合 | 認定番号を認定機関のデータベースで照合したか |
| 測定設備 | 依頼する試験・校正に必要な測定機器が整備されているか |
| 参照標準のトレーサビリティ | 参照標準が国家標準・国際標準にトレーサブルか |
| 試験報告書・校正証明書の様式 | 測定不確かさが記載された証明書が発行されるか |
| 対応可能な規格・測定対象 | IEC 62471など、依頼する規格への対応実績があるか |
| 報告書言語 | 必要な言語(日本語・英語など)の証明書が発行されるか |
IEC 62471(光生物学的安全性)の試験においてISO/IEC 17025認定機関を選ぶことで、以下のメリットが期待できます。
光安全性試験に使用する分光放射照度計(スペクトロラジオメーター)は、測定値のトレーサビリティが確保された校正済み機器であることが重要です。ISO/IEC 17025認定機関が発行する校正証明書には、測定不確かさとトレーサビリティが記載されており、機器の管理状態を第三者に示す際に活用できます。
Q1. ISO/IEC 17025認定を持たない試験機関への依頼は問題ですか?
必ずしも問題ではありませんが、試験結果の信頼性を第三者に示す際に困難が生じる可能性があります。輸出先の顧客・規制機関がISO/IEC 17025認定機関の試験報告書を要求するケースでは、依頼前に確認が必要です。
Q2. 認定スコープに含まれていない試験を依頼できますか?
技術的には依頼できる場合がありますが、認定スコープ外の試験は認定の範囲外となるため、ISO/IEC 17025認定試験としての証明書を発行できません。依頼内容が認定スコープに含まれているかを事前に試験機関に確認することを推奨します。
Q3. ISO/IEC 17025とISO 9001は何が違いますか?
ISO 9001は品質マネジメントシステムの認証であり、組織の業務プロセスの品質を保証します。ISO/IEC 17025は試験・校正を行う機関の技術的能力を認定する規格です。ISO 9001認定を取得していても、ISO/IEC 17025認定を持つとは限りません。
Q4. 光安全性試験(IEC 62471)でISO/IEC 17025認定機関を選ぶと何が変わりますか?
認定機関が試験を行うことで、試験条件・測定不確かさ・結果の再現性について一定の技術的基準が担保されています。試験報告書の信頼性を顧客・バイヤー・規制機関に対して示しやすくなります。
ISO/IEC 17025認定は、試験・校正機関の技術的能力の裏付けとして機能します。初めて試験機関・校正機関を選定する際は、認定の有無と認定スコープの両方を確認することが基本的なポイントです。
関連する記事として、以下も合わせてご確認ください。
ISO/IEC 17025:2017(JIS Q 17025:2018)、JAB公式サイト(認定機関データベース)(各一次情報は公式サイト・IECウェブストアで確認してください。[要一次情報確認])
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