UVC殺菌灯と国際規格の最新動向|IEC 62471-6の改定・市場動向と製品紹介

JIS Q 17025(ISO/IEC 17025)認定校正機関

医療機関、学校、公共施設、家庭用クリーナーなどでの普及が加速するUVC殺菌灯。しかし、皮膚や眼への急性・慢性曝露リスクも無視できず、それに対応する新たな国際規格の整備が求められています。最新のIEC 62471‑6(2022/2023改定)や、米国ACGIHによる2022年の曝露限度改定にも注目しつつ、製品設計や市場動向をセットで整理します。

この記事の監修

山西 幸男

旭光通商株式会社 取締役

山西 幸男

光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。

IEC 62471‑6の改定と主な変更点

1.1 改定時期と背景

IEC 62471‑6は2022年に初版が発行され、欧州ではEN IEC 62471‑6:2023(2023年10月CENELEC承認、2024年7月国内標準化完了)となりました。従来の水銀ランプ前提から、UVC LEDなど固体光源の特性を反映した改定です。

1.2 主な改定ポイント

  • 適用波長帯拡張:180~400 nmをUVCに限定し、評価距離・曝露時間も使用実態に合わせて詳細化。
  • タスクベースのリスク評価:点灯時間や距離、対象環境に即したTime‑weighted Average(TWA)の算出。
  • 表示・教育要件:安全警告の標記、遮光・センサー・タイマー制御に関するユーザー情報の明示義務付け。

曝露限度と健康影響の最新知見

2.1 ACGIHの曝露限度改定(2022年)

ACGIHは2022年にUV‑C(100–280 nm)の曝露限度(TLV)を更新し、222 nm照射に対して眼:161 mJ/cm²、皮膚:479 mJ/cm²とし、254 nmでは眼:6 mJ/cm²、皮膚:10 mJ/cm²と定めました。

2.2 IEC規格との整合性

IEC 62471‑6もまた波長別評価を導入し、ICNIRPや欧州指令の曝露基準30 J/m²(8時間)に整合しており、安全設計の国際基盤が整いつつあります。

市場動向:UVC LED殺菌灯の普及と課題

3.1 市場規模と成長率

2025年のUVC LED市場は1.02 億米ドルで、2030年には4.57 億ドルに達し、CAGR約34.8 %で急拡大すると予測されています。さらに、Deep‑UV全体では2029年まで74 %台の年成長が見込まれます。

3.2 代表的製品と応用分野

  • 医療用UVC殺菌装置:天井や器具内部で自動消毒、学術研究・病院施設向け。
  • 家庭・オフィス用空気清浄+UVC:HEPAと組み合わせて空間殺菌を実装。
  • ポータブル水殺菌ユニット:小型化・充電式でアウトドアや緊急時に活用される機種増。

主要メーカー:Nichia、Seoul Viosys、Crystal IS、UVT などが高出力・長寿命タイプを提供。

国際規格遵守のための製品設計戦略

4.1 製品選定の際のチェックポイント

項目具体例IEC準拠上の意義
波長254 nm/222 nm/275 nm波長に応じた曝露限度算定が必要
出力・照射距離最大出力、高分布;0.4~3 mの評価距離設定TWA評価とRisk Group分類用
安全制御センサー遮光・インターロック・自動停止警告義務とユーザー保護措置

4.2 設計フェーズでの留意点

  • スペクトル設計時にICNIRP/ACGIH TLVとの整合評価を実施
  • 使用想定距離・時間ベースでRisk Groupを算出し、ラベル表示に反映
  • Far‑UVC装置の場合、Ozone生成低減や換気設計も含めたリスク評価

実務導入時の注意事項と事例

  • Far‑UVC搭載空気清浄機:222 nm帯 excimer+アルミナ製レンズ仕様で、IoT連携による稼働制御と換気連動設計。
  • 天井埋め込み型550 mW/275 nm蛍光ランプ:医療現場向けで、タイマー+赤外線センサーによる停止機能搭載。

お客様向けには、試用フェーズで曝露測定(スペクトロラジオメータによるTWA計算)を実施し、安全距離・使用方法の明示を推奨します。

まとめ

UVC光源は殺菌効果の高さから需要が拡大している一方、目皮膚への曝露リスクとその管理が必須です。IEC 62471‑6の導入、ACGIH曝露限度の反映、安全設計を機器評価・設計に組み込むことが、法遵守と市場競争力の担保に繋がります。


参考文献

用語解説

  • IEC 62471‑6:UVC光源向けの光生物学的安全基準(2022年初版、2023年欧州化)
  • Risk Group:IEC 62471における曝露リスク分類(RG0〜RG3)
  • Time-weighted Average(TWA):曝露時間・距離を踏まえた平均照射線量評価
  • ACGIH TLV:米国職業環境衛生専門家協会による曝露限度
  • Far‑UVC:波長200〜235 nm帯紫外線。細胞へのリスク低減が研究進展

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