旭光通商株式会社 取締役
山西 幸男
光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。
この記事の監修
旭光通商株式会社 取締役
山西 幸男
光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。
目次
「照度計の校正をしなければならないのはわかっているが、校正サイクルをどう決めればよいかわからない」「ISO 9001の審査で測定機器の管理について確認されたが、管理台帳が整備できていない」——こうした課題を持つ品質管理担当者・試験室担当者向けに、実務に直結する解説を行います。
この記事では、測定機器の校正サイクルの決め方と管理台帳の整備方法を、ISO 9001の要求事項の観点から整理します。
測定機器の校正管理が不十分な場合、以下のリスクが発生します。
ISO 9001は、製品・サービスの適合性の確認に使用される測定機器について、適切な間隔での校正または検証を求めています。また、校正または検証の基準として、国家計量標準または国際計量標準にトレーサブルであることが要求されます。
具体的な要求事項はISO 9001の条項(7.1.5項「監視及び測定のための資源」)に規定されています。詳細は一次情報(JIS Q 9001:2015)をご確認ください。
IEC 62471に基づく光安全性試験では、分光放射照度計などの測定機器が使用されます。試験機関が使用する機器の校正管理はISO/IEC 17025の認定要件に含まれています。
社内で光測定機器を保有して測定を行っている組織は、適切な校正管理によって測定値の信頼性を維持することが重要です。
校正サイクル(校正を行う時間間隔)は、以下の4つの観点から決定することが一般的です。
1. 機器の種類と精度要求 機器の測定原理・精度特性によって校正の推奨間隔が異なります。一般的に、より高精度な測定が求められる機器や、経時的な特性変化が大きい機器は、校正間隔を短くすることが推奨されます。
2. 使用頻度 使用頻度が高いほど、機器の特性変化(ドリフト)のリスクが高まります。毎日使用する機器と月に数回のみ使用する機器では、適切な校正間隔が異なります。
3. 使用環境 温度変化・湿度・振動・電磁ノイズなど、過酷な環境での使用は機器の特性変化を促進する場合があります。
4. 過去の校正結果のドリフト量 前回の校正結果と今回の校正結果を比較したドリフト量が大きい場合は、校正間隔を短縮することを検討してください。
基本の校正サイクルを設定した上で、以下の条件が該当する場合は校正間隔の短縮を検討してください。
校正証明書に記載された前回の校正値と今回の校正値の差(ドリフト)を比較することで、機器の経時的な特性変化の傾向が把握できます。ドリフトが小さければ校正間隔を延長することも検討できますが、拡張の判断は慎重に行ってください。
以下は一般的な目安として示すものです。実際の校正サイクルは、機器の種類・使用条件・顧客要件・適用規格の要求に基づいて組織が決定してください。
| 機器種別 | 一般的な目安(参考) |
|---|---|
| 照度計(可視光用) | 1〜2年程度(使用頻度・使用環境による) |
| 紫外線照度計 | 6か月〜1年程度(UV光源の劣化に注意) |
| 分光放射照度計(可視光域) | 1〜2年程度 |
| 分光放射照度計(UV域含む) | 6か月〜1年程度 |
| 放射輝度計 | 1〜2年程度 |
※上記はあくまで参考目安であり、規格・法令等で定められた値ではありません。
短縮が推奨されるケース:
延長を検討できるケース(慎重に判断):
測定機器の校正管理台帳には、最低限以下の項目を記録することを推奨します。
| 記録項目 | 内容 |
|---|---|
| 機器識別番号 | 社内管理番号(機器を一意に特定するための番号) |
| 機器の型番・メーカー | 機器の型番・メーカー名 |
| シリアル番号 | メーカーのシリアル番号 |
| 使用場所・担当部門 | 機器の使用場所・管理担当者 |
| 校正対象の測定量 | 照度・分光放射照度など |
| 最新の校正日 | 直近に校正を行った日付 |
| 校正機関名 | 校正を実施した機関名 |
| 校正証明書番号 | 校正証明書の番号(証明書との照合に使用) |
| 次回校正予定日 | 次回の校正期限 |
| 校正状態 | 校正済み・校正期限切れ・校正中等の状態 |
以下は管理台帳の記録項目の一例です。組織の状況に合わせてカスタマイズしてください。
` 管理番号 | 機器名 | 型番 | メーカー | シリアル番号 | 使用部署 | 最新校正日 | 校正機関 | 証明書番号 | 次回校正日 | 校正サイクル | 測定量 | 備考 `
管理台帳の活用上のポイント:
Excelや社内管理システムで台帳を管理する場合は、以下の点に留意してください。
管理台帳と校正証明書の保管期間は、ISO 9001の要求事項・顧客要件・適用法規に基づいて組織が決定してください。 一般的には、ISO 9001の品質マニュアルに文書の保管期間を規定することが推奨されます。
機器が校正済みであることを一目で確認できるように、校正済みラベルを機器に貼付することが一般的な管理方法です。
校正期限が切れた機器は、原則として測定業務への使用を禁止し、再校正が完了するまで使用禁止状態として管理することを推奨します。
具体的な管理方法として以下が一般的です。
校正機関に機器を送付中の期間も、管理台帳にステータス(「校正中」)を記録してください。代替機器を使用する場合は、代替機器の校正状態も確認してください。
校正依頼から証明書受領までのリードタイムは、機器の種類・校正機関の状況によって異なりますが、一般的に数週間〜数か月程度が見込まれます。 校正期限の直前に依頼すると、リードタイムの間に機器が使用できない期間が生じるリスクがあります。
余裕を持ったスケジュール設計のために、以下の目安を参考にしてください。
複数台をまとめて校正依頼することで、以下のメリットがあります。
まとめ依頼を計画する際は、機器の校正期限がバラバラでも、年間の校正計画に合わせてまとめて依頼するタイミングを設定することを検討してください。
ISO 9001の外部審査では、測定機器管理について以下のような確認が行われる場合があります。
ISO 9001の測定機器管理に関する一般的な不適合事例を以下に示します。
| 不適合事例 | 改善のポイント |
|---|---|
| 校正期限が切れた機器を使用していた | 管理台帳と識別ラベルの整備、期限前アラートの設定 |
| 校正証明書が見当たらない | 証明書と台帳の紐づけ管理、適切な保管場所の設定 |
| 管理台帳に機器が漏れていた | 全測定機器の棚卸し、台帳の定期見直し |
| 校正サイクルの設定根拠が不明 | 設定根拠を記録し文書化する |
| トレーサビリティが確認できない | ISO/IEC 17025認定機関への依頼、証明書の確認 |
ISO 9001の内部監査で測定機器管理を確認する際は、以下のポイントをチェックしてください。
光安全性試験(IEC 62471)に使用する照度計・分光放射照度計は、以下の観点から校正管理が特に重要です。
IEC 62471試験を外部の試験機関に依頼する場合は、試験機関がISO/IEC 17025認定を受けていることで機器の校正管理が認定要件として担保されています。
社内で測定を行う場合は、使用した機器の校正状態を試験記録に残すことで、後日の確認・監査対応が可能になります。
ILAC-MRA認定機関が発行した校正証明書(ILAC-MRAマーク付き)を台帳と紐づける場合は、以下の情報を台帳に記録してください。
校正証明書の詳しい読み方については、cal05記事「校正証明書の読み方」をご参照ください。
Q1. 校正サイクルはどのように決めればよいですか?法律や規格で決まっていますか?
ISO 9001(JIS Q 9001)は校正サイクルを具体的に定めておらず、組織が適切な間隔を決定することを求めています。機器の種類・使用頻度・精度要求・過去の校正結果のドリフト量などを参考に設定することが一般的です。光測定機器については、試験目的・顧客要件・適用規格の精度要求を考慮して設定することを推奨します。
Q2. 校正期限が切れた状態で測定を行っていた場合、どうすればよいですか?
まず機器を使用禁止状態にして再校正を行うことが最初のステップです。その間に行った測定結果の信頼性評価も必要になります。ISO 9001審査で指摘を受ける前に対処することを推奨します。具体的な対応手順は審査機関・品質管理の専門家にご相談ください。
Q3. 分光放射照度計の校正サイクルはどのくらいが適切ですか?
分光放射照度計の校正サイクルは、使用頻度・保管環境・過去の校正結果のドリフト量・適用する試験規格の精度要求によって異なります。一般的な目安については本記事の「機器種別ごとの校正サイクルの目安」表をご参照ください。詳細は校正機関にご相談ください。
Q4. 管理台帳はどのくらいの期間保管すればよいですか?
保管期間はISO 9001の要求事項、顧客要件、適用される法規制によって異なります。ISO 9001は文書の保管期間を組織が定めることを求めており、一般的には最低限の保管期間を品質マニュアルに明記することが推奨されます。
Q5. 社外に貸し出している測定機器の校正管理はどうすればよいですか?
社外に貸し出している機器も自社の品質管理システムの対象となる場合があります。貸出先での使用状況・校正状態の確認方法・返却後の校正確認手順を社内ルールとして定めることを推奨します。
測定機器の校正サイクルは、機器の種類・使用頻度・精度要求・過去のドリフト量を総合的に考慮して設定します。管理台帳には機器情報・校正日・証明書番号・次回校正予定日を最低限記録し、校正証明書と紐づけて保管することが基本です。
ISO 9001の審査対応と測定値の信頼性維持の両面から、定期的な見直しと計画的な校正依頼を実施してください。
次のステップとして、以下の関連記事もご確認ください。
ISO 9001:2015(JIS Q 9001:2015)、ISO 10012:2003(計測管理システム)、ISO/IEC 17025:2017(JIS Q 17025:2018)(各一次情報は公式サイト・IECウェブストアで確認してください。[要一次情報確認])
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