IEC 62471の測定条件の設定方法|測定距離・積算時間・ジオメトリの選び方

JIS Q 17025(ISO/IEC 17025)認定校正機関

IEC 62471試験で設定が必要な測定距離・積算時間・動作条件の設定方法を解説。用途別の選定方針、よくある設定ミス(測定距離の誤設定・PWM調光時の処理・複数光源の合算)と対策を実務エンジニア向けにまとめます。

この記事の監修

山西 幸男

旭光通商株式会社 取締役

山西 幸男

光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。

規格情報のご確認について: 本記事はIEC 62471の測定条件設定の考え方を情報提供目的で解説しています。測定距離・積算時間・評価ジオメトリの規格定義についてはIEC WebstoreにてIEC 62471の規格本文(有償)をご確認いただくか、認定試験機関にご相談ください。

IEC 62471試験の依頼を準備する段階で「測定距離を何mmに設定するか」「PWM調光の場合の積算時間はどう扱うか」という問い合わせが多く寄せられます。この記事では、測定条件の考え方・用途別の設定方針・よくある設定ミスを、R&Dエンジニアと技術担当者向けに整理します。

この記事でわかること

  • IEC 62471で設定が必要な主な測定条件(距離・時間・動作条件)
  • 用途別(一般照明・業務用・ハンドヘルド)の測定距離の考え方
  • 設定ミスが起きやすい3パターンと対策
  • 試験機関に相談する前に準備すべき情報

IEC 62471で設定が必要な主な測定条件

IEC 62471試験では、光源の使用方法を踏まえた複数の測定条件を設定します。主な条件は以下の3つです。

測定距離(ジオメトリ)の考え方

測定距離は「光源から測定点(ユーザーの眼や皮膚が最も近づく距離)までの距離」を基準に設定します。

IEC 62471では測定ジオメトリとして、製品の用途に応じた代表距離が参考値として示されています(規格本文参照)。設定の基本的な考え方は、使用時に予測される最小の曝露距離(worst case)で評価することです。

たとえば机上照明器具であれば、使用者の目が最も近づく距離(例:デスクから目線の高さ)を考慮します。ダウンライト型の器具であれば真下で立った場合の距離と、移動時に近づく距離を比較して小さい方を選びます。

積算時間(積分時間)の設定

青色光ハザード(Blue Light Hazard)の評価では、積算照射量(J/m²)を計算するための積算時間の設定が必要です。

IEC 62471では光源の用途に応じた参照曝露時間(reference duration)が設定されています。一般照明向けには8時間・2時間・100秒などの参照時間が用途ごとに設定されており、どのカテゴリが適用されるかを製品の使用実態から判断します。

製品の動作条件(定格・最大出力)

測定は製品の最悪動作条件(worst case)で実施します。

  • 電源:定格電圧(または最大電圧)での動作
  • 出力:最大光出力状態(調光なし・全点灯)
  • 安定化:測定開始前に点灯から一定時間安定させる(規格で規定)

調光機能がある製品では、最大出力での測定が基本です。最大出力以外での測定を行う場合は理由を文書化します。


用途別の測定条件の設定方針

一般照明用途(固定型)

天井照明・壁面照明など固定設置型の照明器具では、以下の観点で測定距離を設定します。

  • 直接視認される距離:器具から使用者の目線が届く最小距離
  • メンテナンス距離:球交換・清掃時に近づく距離
  • 規格で指定された参照距離:IEC 62471の付属書に製品カテゴリ別の参照距離が示されているケースがある

業務用・専門家用途

医療用照明・美容機器・検査照明など専門家が使用する機器では、一般照明より近距離での使用が想定されます。使用マニュアルに明記されている推奨距離と、実際の使用観察に基づく最小距離を比較します。

可搬型・ハンドヘルド型

ライト・懐中電灯・携帯型UVC除菌器など手持ち型製品では、光源が意図せず顔・眼に向けられるシナリオも考慮した距離設定が必要です。IEC 62471-7(ルミナリー向け)など関連規格も参照します。


測定条件の設定でよくある3つの間違い

1. 測定距離の設定ミス

よくある間違い: カタログ推奨距離を測定距離とする

問題点: 推奨距離は使用者が通常使う距離であり、最悪条件(最近接距離)ではない場合がある

対策: 使用者が意図せず近づく可能性のある最小距離(worst case)を設定し、設定根拠を文書化する

よくある間違い: 複数の使用距離を平均して設定する

問題点: 光安全性評価は最悪条件での評価が原則。平均は適切でない

対策: 最も近い距離で測定し、その距離での評価結果を報告書に記載する

2. パルス駆動・PWM調光時の積算時間の扱い

よくある間違い: PWM調光LED光源を連続光と同じ方法で積算時間を設定する

問題点: パルス駆動では、ピーク照射量が連続光より高くなる場合がある。積算方法を誤るとリスクグループの判定が変わる可能性がある

対策: PWMの周波数・デューティ比・ピーク出力を試験機関に共有し、測定方法を事前確認する。IEC 62471:2022(2nd edition)ではパルス光源の扱いが詳細化されているため最新版を確認する

3. 複数光源の合算評価を見落とす

よくある間違い: 1つの光源単体で試験し、複数灯設置を考慮しない

問題点: 同一方向に複数の光源が並ぶ器具(リニア照明・シーリングライト等)では、複数光源からの照射が合算される

対策: 製品の最終的な使用形態(複数灯・アレイ状)を試験機関に伝え、評価すべきシナリオを確認する


試験機関に相談する前に準備すること

測定条件の確認を試験機関に相談する際、以下の情報を事前に整理すると相談がスムーズになります。

情報 具体例
製品の種類と用途 「医療用診察照明、固定設置型、可視光のみ」
光源の種類と仕様 「白色LED、3000K、最大500mA、PWM調光あり」
使用距離の想定 「使用者の目から最小500mm、通常1000mm」
適用規格のターゲット 「IEC 62471:2022でRG判定、PSE申請用」
輸出先市場 「日本国内のみ(PSE)、EU向け(CE)も検討」

これらを事前に整理することで、試験機関との条件すり合わせを試験前に完了し、手戻りを防ぐことができます。

中間確認: 測定条件の設定が不明な場合は、試験前の事前相談として旭光通商へお問い合わせください。測定条件のご相談


よくある質問(FAQ)

Q1. 測定距離はどの位置を基準に設定すればよいですか?

「使用者の眼や皮膚が光源に最も近づく実際の使用距離(worst case)」を基準に設定します。カタログの推奨距離ではなく、意図せず近づく可能性のある最小距離が出発点です。製品の用途(家庭用照明・業務用・医療用)によって適切な参照距離が異なるため、規格本文の付属書と使用実態の両方から設定根拠を確認します。

Q2. PWM調光を使用するLED光源の場合、測定方法が変わりますか?

PWM(パルス幅変調)駆動の場合、連続光とは異なる時間積分の考え方が必要になるケースがあります。ピーク照射量と時間平均照射量の取り扱いを誤ると安全評価が変わります。試験機関にPWMの周波数・デューティ比・ピーク出力を事前に共有し、測定方法を確認してから試験に臨むことを強く推奨します。

Q3. 自社で事前に測定した結果と試験機関の結果が異なった場合、どうすればよいですか?

測定距離の設定・測定機器のスペクトル感度・動作条件のいずれかが異なっている可能性があります。試験機関に「自社測定の条件・機器・距離」を共有し、差異の原因を確認します。旭光通商では自社測定値と試験機関測定値の差異確認相談も承っています。


まとめ

IEC 62471の測定条件設定では、①測定距離(worst case優先)②積算時間(用途カテゴリ依存)③最悪動作条件(最大出力・定格電圧)の3点が核心です。PWM調光・複数光源・ハンドヘルド使用の場合は特別な考慮が必要となります。試験機関との事前相談で条件を確定してから試験依頼することで、手戻りを防ぐことができます。

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