医療機器のCEマーキングと光放射リスク評価|EU展開前の確認点

JIS Q 17025(ISO/IEC 17025)認定校正機関

EU市場への医療機器展開を検討する企業向けに、CEマーキング(MDR)で求められる光放射リスク評価の考え方、EN 62471・EN 60825-1・EN IEC 60601-2-57の適用確認、技術文書への組み込みポイントを解説します。

この記事の監修

山西 幸男

旭光通商株式会社 取締役

山西 幸男

光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。

この記事でわかること

LED・レーザー・UV光源を搭載した医療機器をEU市場に展開する場合、CEマーキング対応では光放射による眼・皮膚リスクを技術文書で説明できることが求められます。

この記事では、光源搭載医療機器のEU展開を検討する企業向けに、MDRに基づくリスクマネジメントにおける光放射リスク評価の位置づけと、主なEN規格の確認ポイントを整理します。

CEマーキング全般(PSEとの違い・取得手順等)については「CEマークは日本で必要?PSE認証との違いを実務解説」を参照してください。

要点まとめ:EU医療機器MDRでは、光を使う製品は光放射リスク分析をリスクマネジメントファイルに含める必要があります。レーザーはEN 60825-1、非レーザー光源はEN 62471またはEN IEC 60601-2-57の適用を初期段階で確認することが推奨されます。

CEマーキングと医療機器MDRの基本

EUの医療機器市場では、2021年5月よりEU医療機器規則(MDR: EU 2017/745)が原則適用されています。医療機器にCEマーキングを付するためには、MDRの要求事項への適合を示す必要があります。

MDR適合の主な要素:

  • リスクマネジメントファイル(ISO 14971準拠) の整備
  • 技術文書(Technical Documentation) の作成
  • 臨床評価レポート の作成
  • 適用クラスに応じた認証機関(Notified Body) による審査

光源搭載医療機器では、リスクマネジメントにおいて光放射リスクを明示的に分析・評価することが求められます。


光源搭載機器で求められるリスクマネジメント

MDR Annex I(一般安全性能要件)では、電磁放射・熱放射を含む物理的ハザードへの対策が要求されます。光放射(UV・可視光・赤外線・レーザー)はこの物理的ハザードに含まれます。

リスクマネジメントファイルで光放射リスクを扱う際の主な確認事項:

確認項目 内容
ハザードの特定 製品に含まれる光源の種類・波長・出力に基づくハザードの列挙
リスク分析 どの規格に基づいて光放射リスクを評価するかの根拠の記述
リスク低減対策 インターロック・遮光・保護具・警告表示等の設計対策
残留リスクの許容性 低減後のリスクが許容範囲内であることの根拠
試験による検証 適用規格に基づく試験の実施と結果のトレーサビリティ

光源別の適用EN規格

EU市場向けには、IEC規格の欧州整合規格(EN規格)が参照されます。適用規格の決定は製品仕様・医療機器のクラス・用途によって異なります。

レーザー搭載医療機器

EN 60825-1(IEC 60825-1の欧州整合版)が主要な参照規格となります。レーザークラス分類、表示要件、保護具要件等が含まれます。

非レーザー光源搭載医療機器

EN 62471(IEC 62471の欧州整合版)またはその後継規格群が参照されます。LED・ランプ・IPLを含む広帯域光源の光生物学的安全性評価に使用されます。

非レーザー光源(医療・美容目的)

EN IEC 60601-2-57が医療・美容目的の非レーザー光源機器の個別安全規格として参照されます。IEC 60601-1(EN 60601-1)の上位適用が前提となります。


技術文書に含めるべき試験・評価情報

EU市場向けの技術文書には、光放射リスク評価に関する以下の情報を含めることが求められます。

  • ✅ 適用した規格名と版数(例:EN 62471:2008)
  • ✅ 試験機関名と認定スコープ(ISO/IEC 17025または欧州認定機関の認定)
  • ✅ 試験条件(測定距離・照射時間・製品設定等)
  • ✅ 試験結果(各ハザードの測定値・リスクグループ/クラス判定)
  • ✅ 設計対策の内容(インターロック仕様・保護具の要求事項)
  • ✅ 残留リスクに関する使用者への情報提供(ラベル・IFU)

国内開発時からEU要求を見据えるメリット

国内市場向けにのみ対応した設計でEU展開を後から計画すると、以下の再整備が必要になる場合があります。

  • EN規格に対応した追加試験 の実施(すでに別の国際規格で試験済みでも版・測定条件が異なる場合がある)
  • MDR準拠のリスクマネジメントファイル・技術文書 の再構築
  • EU言語対応ラベル・IFU の作成
  • Notified Body選定と審査 のスケジュール追加

初期設計段階でEN規格の適用可能性を確認し、国内試験と欧州試験の測定条件を可能な範囲で共通化しておくことで、EU展開の時間・コストを縮小できる場合があります。


よくある質問(FAQ)

Q1. EU向けの試験は日本国内の試験機関で受けられますか?

日本国内にも欧州整合規格(EN規格)での試験実績を持つ試験機関があります。ただし、EU規制への対応(例:IVDR・MDRの要求する形式での試験報告)については、試験機関が対応しているかを事前に確認することを推奨します。

Q2. MDRクラス分類とIEC 62471のリスクグループは連動しますか?

MDRの医療機器クラス分類(クラスI〜III)とIEC 62471のリスクグループ(Exempt〜RG3)は別の分類体系です。IEC 62471のリスクグループはリスクマネジメントの中で参照されますが、MDRクラス分類を直接決定するものではありません。

Q3. UK(英国)向けにはMDRとは別の対応が必要ですか?

ブレグジット後、英国はEUのMDRとは別に英国独自の医療機器規制(UK MDR 2002等)に基づく対応が必要な場合があります。光放射リスク評価の観点では規格自体(EN/IEC規格)は参照できる場合が多いですが、手続きは別途確認が必要です。



参考文献・参考規格

EU MDR (EU 2017/745), EN 62471:2008, EN 60825-1:2014, EN IEC 60601-2-57:2023(各一次情報は公式サイト・IECウェブストアで確認してください。)

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