医療機器で光源を使う前に|薬機法・IEC規格・試験の基礎

JIS Q 17025(ISO/IEC 17025)認定校正機関

LED・紫外線・レーザーを搭載した製品が医療機器に該当するかの判断基準、IEC 62471・IEC 60825・IEC 60601との関係、開発初期に整理すべき安全評価の全体像を実務担当者向けに解説します。

この記事の監修

山西 幸男

旭光通商株式会社 取締役

山西 幸男

光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。

この記事でわかること

LED照明、紫外線ランプ、レーザーモジュールを搭載した製品を事業化しようとする場合、「光安全性試験を受ければよい」だけでは済まないケースがあります。製品の用途・使用環境によっては薬機法上の医療機器に該当し、PMDAへの届出・認証・承認が必要になる場合があります。

この記事では、光源を搭載した製品を製造・販売する企業が、試作から量産・市場投入前に確認すべき安全評価の全体像を解説します。

要点まとめ:光源搭載製品の安全評価は「光安全性試験(IEC 62471等)」と「医療機器としての薬機法対応」が並行して必要な場合があります。開発初期に適用規格と試験計画を整理することで、後工程での設計変更や申請資料の手戻りを大幅に減らせます。

光を使う製品はどこから医療機器になるのか

光を照射する製品のすべてが医療機器に該当するわけではありません。薬機法上の医療機器該当性は、主に製品の「使用目的」や「効能・効果の標榜内容」によって判断されます。

一般的な判断の出発点として、以下の問いが参考になります。

  • 製品の用途として「診断」「治療」「緩和」「予防」などの医療的目的を謳っているか
  • 人体に直接作用することを意図した光照射を行うか(UV照射による皮膚治療、LED光線治療等)
  • 医療機関・歯科医院・介護施設での使用を主な用途としているか

殺菌目的のUV-C装置や、一般照明用途のLED照明器具は、用途・標榜内容によって医療機器に該当しない場合もあります。最終的な医療機器該当性の判断はPMDAや所轄都道府県の薬事担当窓口に確認することが推奨されます。


医療機器のクラス分類と承認・認証・届出の考え方

医療機器に該当すると判断された場合、クラスI〜IVのリスク分類に基づいて、届出・認証・承認のいずれかの手続きが必要になります。

クラス リスク 手続き 光源製品の例(参考)
クラスI(一般医療機器) 届出(第三者認証不要) 一部の光線療法機器等
クラスII(管理医療機器) 第三者認証 一部の診断用LED機器等
クラスIII(高度管理医療機器) 承認 一部の治療用レーザー機器等
クラスIV(高度管理医療機器) 最高 承認 侵襲性の高い治療機器等

クラス分類の詳細はPMDAの公表資料を参照してください。クラス分類によって必要な試験・書類・審査期間が大きく異なるため、開発初期の段階でクラス分類の見込みを把握しておくことがプロジェクト計画上重要になります。


光源別の規格選定:レーザー・LED・UV・IPL

医療機器に搭載される光源の種類によって、適用を検討すべき安全規格が異なります。

レーザー光源

IEC 60825-1(国内整合規格:JIS C 6802)を適用規格として検討します。レーザークラス(1〜4)の分類、最大許容露光量(MPE)の評価、インターロック・警告ラベル・保護具の要件が中心となります。

非レーザー光源(LED・ランプ・IPL等)

IEC 62471(光生物学的安全性)を基本として検討します。UV・ブルーライト・網膜熱・赤外線の各ハザードを分光放射データで評価します。医療・美容目的で人体へ意図的に光を照射する場合は、IEC 60601-2-57(非レーザー光源を用いる医療・美容目的機器の個別規格)の適用検討が重要になる場合があります。

UV-C光源(殺菌用途)

IEC 62471で光生物学的安全性を評価しつつ、用途・設置環境によって電安法・PSE、または医療機器規制の適用可能性を確認します。製造・販売前にPMDAや経済産業省の管轄窓口への相談が推奨されます。


試作品段階で確認すべき光安全性の測定項目

試作品が完成した段階で、以下の情報を測定・確認しておくと、試験機関への依頼時に測定条件を確定しやすくなります。

測定・確認項目 内容
分光放射照度(SPD) 全波長域のスペクトル分布を取得し、評価が必要なハザードを特定する
最大放射照度・輝度 使用者や患者が曝露される位置での光放射量
照射距離・測定条件 製品の使用用途に応じた評価距離と測定角度
照射時間・パルス条件 連続光(CW)かパルス駆動かによって評価方法が変わる
想定使用シナリオ 通常使用・異常時・誤使用シナリオの整理

よくある設計ミスと量産前の確認ポイント

光安全性評価を試験機関に依頼する前の段階で、以下の設計ミスが発見されると、設計変更コストが大幅に上がる場合があります。

1. 評価対象の波長域の見落とし LED製品にわずかなUV-A成分が含まれる場合、UV放射ハザードの追加評価が必要になることがあります。SPDを事前に取得し、全ハザードの該当可否を確認することが重要です。

2. 医療機器クラス分類の見込みが未確定のまま試作が進む クラスIIIまたはIVに該当する可能性がある場合、設計要件(添付文書・インターロック・材料規制等)が大きく変わることがあります。

3. IEC 60601-2-57の適用可否の未確認 非レーザー光源で医療・美容目的の場合、IEC 62471だけでなくIEC 60601-2-57の適用も検討が必要になることがあります。

4. 安全設計が後工程に残る 遮光構造・インターロック・警告ラベル・取扱説明書の記載は、試験計画と同時に設計する必要があります。後付けになると筐体設計の変更が必要になる場合があります。


相談前に準備すべき仕様情報

光安全性試験機関や薬事コンサルタントへの初回相談時に以下の情報を整理しておくと、適用規格・試験内容・スケジュールの初期整理がスムーズになります。

  • ✅ 光源の種類(LED/レーザー/UV/IPL等)と波長(nm)
  • ✅ 最大出力(mW/W)と使用モード(連続/パルス)
  • ✅ 照射対象(皮膚/眼/空間等)と照射距離(mm/cm/m)
  • ✅ 1回の使用時間(秒/分)と1日の使用回数
  • ✅ 想定使用者(医療従事者/患者/一般消費者等)
  • ✅ 想定市場(国内/EU/米国等)

よくある質問(FAQ)

Q1. 光安全性試験に合格すれば、医療機器としての薬事申請は不要ですか?

光安全性試験(IEC 62471・IEC 60825等)の合格と、薬機法上の医療機器届出・認証・承認は別の要件です。製品が医療機器に該当する場合、光安全性試験に加えてPMDA手続きが必要になります。最終的な判断は所轄窓口・薬事専門家に確認することを推奨します。

Q2. 試作品の段階でも光安全性の相談はできますか?

試作品が完成する前でも、光源の種類・波長・出力・用途の見込みが分かれば、適用規格の初期整理や試験スケジュールの相談は可能な場合があります。仕様が確定していない段階から専門家に相談することで、設計変更コストを下げられる可能性があります。

Q3. 海外(EU・米国)向けにも同時展開する場合、追加で確認すべきことはありますか?

EUではCEマーキング対応(医療機器はMDR準拠)が必要で、EN 60825-1・EN 62471・EN IEC 60601-2-57等の適用も検討が必要になります。米国では510(k)等のFDA手続きが別途必要な場合があります。国内展開と並行して初期段階から確認することで、後工程での大幅な設計変更を避けられる可能性があります。

Q4. 試験費用の目安はどのくらいですか?

光安全性試験の費用は、光源の種類・評価規格・製品の複雑さ・試験機関によって異なります。詳しくは「光安全性試験の費用はなぜ変わる?変動要因と費用感の目安」をご参照ください。



参考文献・参考規格

PMDA(医療機器クラス分類), IEC 62471:2006, IEC 60825-1:2014, IEC 60601-2-57:2023(各一次情報は公式サイト・IECウェブストアで確認してください。)

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