光の種類と人体への影響|可視光・紫外線・赤外線の波長別リスク

JIS Q 17025(ISO/IEC 17025)認定校正機関

この記事の監修

山西 幸男

旭光通商株式会社 取締役

山西 幸男

光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。

この記事でわかること

光は電磁波の一種で、波長によって紫外線(UV)・可視光・赤外線(IR)に分類されます。そして、光が人体に与える影響は波長帯によって大きく異なります。本記事では、可視光・紫外線・赤外線の波長範囲・特性・人体リスクを実務目線で整理し、さらにそれらが光安全性の国際規格 IEC 62471 でどのように評価されるかまでを解説します。

LED・光源製品の設計・品質保証・認証担当者から、「光と人体の関係を正確に押さえてから安全評価に臨みたい」方まで、評価・相談の出発点となるリファレンスです。

要点(先に結論):可視光(約380〜780nm)は通常の照明レベルでは安全に利用されています(CIEも一般照明の白色光は特別な懸念対象でないとの見解)。一方で、波長(特に青色光)・強度・曝露時間の条件によっては網膜への配慮が必要です。紫外線は皮膚・目への光化学的影響、赤外線は熱的影響が主に論じられます。人体への影響は「波長 × 強さ × 曝露時間(=光曝露量)」で評価され、製品では波長帯ごとに IEC 62471 のアクションウェイト関数で定量評価されます。

1. 光の種類と波長帯【一覧表】

光放射の波長区分は ISO 20473(光学・フォトニクス―スペクトル帯)CIE(国際照明委員会) に基づいて整理されます。波長が短いほど光子エネルギー(E = hc/λ)が高く、生体分子への作用が大きくなる傾向があります。

光の種類 波長帯(目安) 主な特性 代表的な用途
UV-C 約100〜280 nm 殺菌力が強い・大気中でほぼ吸収 殺菌・滅菌光源
UV-B 約280〜315 nm 皮膚紅斑・DNA損傷に関与 光線療法・日焼け研究
UV-A 約315〜400 nm 皮膚の深部へ浸透・光老化 ブラックライト・UV硬化
可視光 約380〜780 nm 人の目で見える・色として認識 照明・ディスプレイ・LED
近赤外(IR-A/NIR) 約780〜1400 nm 目に見えないが熱を生む・組織浸透 通信・赤外線カメラ・光線治療
中赤外(IR-B/MIR) 約1400〜3000 nm 水に強く吸収・加熱作用 加熱・溶接
遠赤外(IR-C/FIR) 約3000 nm〜1 mm 輻射熱・熱伝達 輻射暖房・遠赤外ヒーター

波長境界は規格により異なります。UV帯はISO 20473で「UV-C 約100〜280/290nm、UV-B 約280/290〜315/320nm、UV-A 約315/320〜400nm」、可視光は「約360/400〜760/800nm」と幅があります。赤外の区分は、CIE が IR-A(0.7〜1.4μm)/ IR-B(1.4〜3μm)/ IR-C(3μm〜1mm)と定義する一方、ISO 20473 は NIR(0.78〜3μm)/ MIR(3〜50μm)/ FIR(50〜1000μm)と区切り方が異なります。本表は安全性評価で使われることの多いCIE系の境界(IR-A/B/C)を採用しています。


光のスペクトルと波長帯◀ 短波長・高エネルギー長波長・低エネルギー ▶UV-C100–280 nmUV-B280–315 nmUV-A315–400 nm可視光380–780 nmIR-A780–1400 nmIR-B1400–3000 nmIR-C3000 nm–1 mm※帯の幅は模式的で、実際の波長スケール(対数)とは異なります。境界値は規格により差があります。
図1. 光の種類と波長帯(UV・可視光・赤外線)の模式図

2. 可視光線は人体にどう影響するか

可視光は私たちが日常的に浴びている光であり、通常の照明環境では安全に利用されています。実際、CIE(国際照明委員会)は2019年の見解で、一般照明用の白色光源がもたらすブルーライトの曝露は、伝統的な光源や昼光と比べて特別に高いものではないとの立場を示しています。そのうえで、光源の種類・強度・距離・曝露時間によっては配慮が必要な側面があります。

2.1 色と波長の関係

可視光(おおよそ380〜780nm)は、波長により色として知覚されます。短波長の青・紫は高エネルギー、長波長の赤は低エネルギーです。

おおよその波長
380〜430 nm
430〜490 nm
490〜560 nm
560〜590 nm
590〜630 nm
630〜780 nm

2.2 目への影響(網膜・ブルーライト)

短波長側の青色光(おおよそ400〜500nm)は高エネルギーで、太陽や溶接アークのような非常に明るい光源を直視した場合の網膜の光化学的傷害は「ブルーライトハザード」と呼ばれます。この波長依存性を表す重み付け関数(網膜青色光傷害の作用スペクトル B(λ))は、おおよそ435〜440nm付近で重み付けが最大となり、ICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)のガイドラインや IEC 62471 等で用いられています。日常の照明・ディスプレイ使用が直ちに障害を意味するわけではなく、評価は光源の輝度と曝露条件に依存します。

2.3 皮膚への影響

可視光が皮膚に与える影響は、紫外線に比べると一般に限定的とされます。近年は高エネルギー可視光(HEV、青色光側)と色素沈着の関連が議論されることもありますが、製品安全の文脈では、可視光単独より、隣接する UV-A/青色光の評価が重視される傾向があります。

2.4 概日リズム・非視覚的影響

青色光を含む可視光は、視覚だけでなく体内時計(概日リズム)やメラトニン分泌にも関与することが知られています。これは障害リスクというより「光の質(スペクトル)と浴びるタイミング」に関わる生体リズムへの作用で、夜間の高色温度照明・ディスプレイ使用との関連が指摘されています。

整理: 「可視光だから安全」という判断は成立しません。可視光の人体影響は「波長(特に青色光か)× 強度 × 曝露時間」で評価され、製品では測定・評価が前提になります。


波長による眼への到達の違い(模式図)角膜水晶体網膜UV-C / UV-B角膜で吸収UV-A水晶体で吸収可視光(青色)網膜まで到達近赤外 IR-A網膜まで到達波長が短いほど眼の前面(角膜)で吸収され、長いほど奥(網膜)まで到達します。※医学的影響の程度は条件により異なります。
図2. 波長による眼への到達深度の違い(模式図)

3. 紫外線(UV-A/B/C)の特性と人体への影響

紫外線は可視光より短波長で目には見えませんが、可視光より人体影響が論じられやすい波長帯です。WHO等によれば、UVへの過剰曝露は皮膚がん・白内障・免疫への影響と関連づけられています。

3.1 UV-A(約315〜400 nm)

大気をほぼ透過し、地表に届くUVの大部分を占めます。皮膚の真皮層まで到達し、長期曝露による光老化(しわ・色素沈着)の一因とされ、眼では白内障リスクとの関連が示唆されています。UVレジン硬化・ブラックライト等に使われます。

3.2 UV-B(約280〜315 nm)

オゾン層で大部分が吸収されますが一部が地表に届きます。皮膚ではビタミンD生成に関与する一方、過剰曝露は日焼け(紅斑)・DNA損傷・皮膚がんリスクと関連づけられます。眼では光角膜炎(電気性眼炎、雪眼炎)を生じ、UV帯の中でも眼への影響が大きいとされます。

3.3 UV-C(約100〜280 nm)

自然界ではオゾン層でほぼ遮断されますが、人工光源(低圧水銀ランプ・エキシマランプ・UVC-LED等)として殺菌用途に使われます。波長254nm付近はDNA吸収ピークと重なり不活化に有効ですが、同じ理由で人体リスクが最も高い紫外線域です。皮膚への短時間曝露でも紅斑(光化学的作用による傷害。赤外線のような熱傷とは機序が異なります)、眼への曝露で光角膜炎を生じ得ます。UV-C製品には特別な安全設計が求められます。

区分 主なリスク(一般的整理) 主に参照される評価
UV-A 光老化・白内障(長期) IEC 62471(S(λ))
UV-B 日焼け・DNA損傷・光角膜炎 IEC 62471(S(λ))
UV-C 重度の皮膚・眼障害 IEC 62471 / IEC 62471-6

4. 赤外線(IR-A/B/C)の特性と人体への影響

赤外線は「熱線」とも呼ばれ、人体影響は主に熱的作用として論じられます。

4.1 近赤外(IR-A/NIR:約780〜1400 nm)

角膜・水晶体を透過して網膜まで到達します。高輝度光源では網膜熱ハザードや、職業性の長期曝露と水晶体への影響(熱性白内障、いわゆる炉前白内障)との関連が歴史的に知られ、レーザー安全(IEC 60825-1)でも重要な領域です。可視光をほぼ含まず眼で危険を察知しにくい点が実務上の注意点です。

4.2 中赤外(IR-B:約1400〜3000 nm)

水分に吸収されやすく、角膜・水晶体で吸収されます。網膜には到達しにくいですが、高照度では角膜損傷や白内障のリスクがあります。

4.3 遠赤外(IR-C:約3000 nm〜)

皮膚表面で吸収されます。熱感覚で回避しやすいため不意の眼損傷リスクは相対的に低いとされ、輻射暖房等に使われます。


5. 「光曝露(露光)」とは何か

人体への影響は、光の「強さ」だけでなく「どれだけの時間浴びたか」で決まります。放射計測では次の関係で整理されます。

  • 放射照度(irradiance):単位面積あたりに入射する放射の強さ(例: W/m²)=ある瞬間の強さ
  • 光曝露=放射露光(radiant exposure):放射照度を曝露時間で積算した累積量(例: J/m²)。概念的には「放射照度 × 曝露時間」に相当

安全性評価では、瞬間的な強さよりも曝露量(累積)が判断指標になる場面が多くあります。同じ光源でも近距離・長時間で使えば曝露量は大きくなります。具体的な許容値・重み付けは各規格で規定されます。


6. 光安全性評価でどう使われるか(IEC 62471との接続)

6.1 IEC 62471 の概要

IEC 62471:2006 は、LED を含む電気駆動の非コヒーレント(非レーザー)光源の光生物学的安全性を評価する base standard(-2/-3/-5/-7 等の Part 群を持つファミリー規格)です。波長範囲は概ね 200〜3000nm を対象とし(200nm 未満の真空紫外域は対象外)、次のようなハザードを扱います。

  1. 紫外線(actinic UV)ハザード(皮膚・眼)
  2. 近紫外線ハザード(眼)
  3. 網膜青色光ハザード
  4. 網膜青色光ハザード(小光源)
  5. 網膜熱ハザード
  6. 網膜熱ハザード(微弱視覚刺激/赤外光源)
  7. 赤外放射ハザード(眼)
  8. 皮膚への熱ハザード

上記は IEC 62471 が扱うハザードを整理したものです。規格原文(有償文書)では章立て・番号付けが異なる場合があります。実務適用前に最新版をご確認ください。

6.2 波長域とアクションウェイト関数

評価では、測定した分光放射照度(W/m²/nm)にアクションウェイト関数を掛け合わせて有効照射量を算出します。

ハザード おおよその波長域 重み付け関数
紫外線ハザード(皮膚・眼) 約200〜400 nm(文献により180〜400 nm) S(λ)
網膜青色光ハザード 約300〜700 nm B(λ)
網膜熱ハザード 約380〜1400 nm R(λ)

各関数の定義域・数値は規格・版により異なります。正確な値は IEC 62471 本文でご確認ください。

アクションウェイト関数の対象波長域(IEC 62471・模式)S(λ) 紫外ハザード(200–400 nm)B(λ) 網膜青色光ハザード(300–700 nm)R(λ) 網膜熱ハザード(380–1400 nm)200400600800100012001400 nm※各関数の定義域は規格・版により異なります。正確な値は IEC 62471 本文でご確認ください。
図3. 主なアクションウェイト関数が対象とする波長域(模式)

6.3 リスクグループの判定

各ハザードの計算値を限界値・許容曝露時間と比較し、光源を リスクグループ RG0(免除)〜 RG3(高リスク) に分類します。RG0 は当該ハザードについて被ばく限界に基づくリスクがない「免除(Exempt)」を意味し、無条件の「安全」と同義ではありません。リスクグループは製品の表示義務や使用上の注意の根拠になります。

6.4 波長帯ごとに参照される規格の入口

光の種類 主な人体リスク 主に参照される規格(スコープ)
UV(A/B/C) 皮膚障害・光老化・眼障害 IEC 62471 / UV-CはIEC 62471-6
可視光(青色) ブルーライトハザード(網膜) IEC 62471 / IEC 62471-7
近赤外(IR-A) 網膜熱ハザード・白内障リスク IEC 62471 / レーザーは IEC 60825-1
レーザー(全波長) クラスに応じた眼・皮膚障害 IEC 60825-1 / JIS C 6802
  • IEC 62471-7:2023:主に可視光(380〜780nm)を放射する光源・照明器具を対象とした適用指針(Part 7)。
  • IEC 60825-1:2014:レーザー製品の安全規格。クラス 1 / 1M / 2 / 2M / 3R / 3B / 4(クラス1=通常運用で被ばく限界を超えない/免除相当 〜 クラス4=最も危険)に分類。
  • JIS C 6802:2025:「レーザ製品の安全」。JSA が2025年8月発行、180nm〜1mm、IEC 60825-1:2014 と整合。
  • IEC 60601-2-57:非レーザーの医用光源(治療・診断・美容/審美、200〜3000nm)への個別要求。

適用規格は製品の光源種別・用途・市場で異なります。最終判断は規格本文・試験機関・専門家への確認によってください。


7.【早見チェックリスト】自社の光源を評価する前に

  • 光源の主たる波長帯はどこか(UV / 可視 / IR / レーザー)
  • 青色光(おおよそ400〜500nm)成分を含むか(含む場合はブルーライトハザード評価を検討)
  • 想定される使用距離・曝露時間は(=光曝露量の見積り)
  • レーザーか非レーザーか(参照規格が IEC 60825-1 か IEC 62471 かを分ける)
  • 医療・美容用途か(IEC 60601-2-57 など追加規格の要否)
  • 販売市場はどこか(国内=電安法/EU=CEなど認証要件が変わる)

各項目の判断には製品仕様と測定条件の確認が必要です。判断に迷う場合は測定・評価のご相談を承っています。


よくある質問(FAQ)

Q1. 可視光線は人体に悪影響がありますか?

A1. 可視光は通常の照明レベルでは安全に利用されています。ただし青色光(400〜500nm付近)は、高輝度光源への長時間曝露で網膜の光化学的負荷(ブルーライトハザード)と関連づけて論じられます。IEC 62471 では専用の重み付け関数 B(λ) で評価します。家庭用LED照明でも光源の直視は推奨されません。健康影響の程度は条件・個人差で異なります。

Q2. 光の種類は何で分類されますか?

A2. 一般に波長帯で分類され、紫外線(おおよそ100〜400nm)・可視光(約380〜780nm)・赤外線(780nm〜)に大別されます(ISO 20473/CIE)。境界は規格・文献で異なり、特に赤外の区分(CIEのIR-A/B/C と ISO のNIR/MIR/FIR)は区切り方が異なります。

Q3. UV-AとUV-Bはどちらが危険ですか?

A3. 曝露量・部位・時間でリスクが異なります。急性リスク(日焼け・光角膜炎)はUV-Bが大きいとされる一方、UV-Aも長期曝露の光老化・白内障との関連が報告されます。製品評価ではIEC 62471のS(λ)でUV帯を統合評価します。単純な優劣ではなく用途・条件に応じた評価が必要です。

Q4. 光の種類によって適用される安全規格は変わりますか?

A4. 変わります。レーザーは IEC 60825-1(JIS C 6802)、LED・ランプ等の非レーザー光源は IEC 62471、医療・美容機器は IEC 60601-2-57 等が参照されます。適用は光源種別・用途・市場で異なるため、規格本文の確認と試験機関への事前相談をお勧めします。


使用している光源の種類・波長帯から、人体リスク評価の考え方と適用規格の入口、測定・評価方法の選定をご案内します。製品仕様・使用条件をご共有ください。

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参考・出典

  • ICNIRP(国際非電離放射線防護委員会):可視放射・紫外・赤外に関するガイドライン/ブルーライトハザード重み付け関数
  • CIE(国際照明委員会):ブルーライトハザードに関する見解(Position Statement, 2019)/CIE S009
  • WHO:紫外線(UV)放射と健康影響に関する情報
  • IEC 62471:2006/IEC 62471-6:2022/IEC 62471-7:2023/IEC 60825-1:2014/IEC 60601-2-57(IEC)
  • JIS C 6802:2025/JIS C 7550(日本規格協会 JSA)
  • ISO 20473:2007(スペクトル帯の区分)

本記事は上記の公開情報に基づく一般的な解説です。具体的な健康影響の程度・閾値や、製品ごとの適用規格・安全可否の判断は、各規格本文・専門機関の確認によってください。


専門用語の解説

用語 意味
アクションウェイト関数 波長ごとの生体影響の相対感度を示す係数。測定値に掛けて有効照射量を算出する(S(λ)/B(λ)/R(λ)等)
ブルーライトハザード 青色光による網膜の光化学的傷害リスク。重み付け関数 B(λ) で評価
リスクグループ(RG) IEC 62471における光源の安全分類。RG0(免除)〜RG3(高リスク)の4段階
放射照度/放射露光 放射照度=瞬間の強さ(W/m²)、放射露光=累積量(J/m²、放射照度×時間)
光角膜炎 UV-B/UV-Cの曝露で角膜が炎症を起こす急性障害。電気性眼炎・雪眼炎とも呼ばれる
非コヒーレント光/コヒーレント光 位相の揃わない光(LED・ランプ)/位相の揃った光(レーザー)

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