旭光通商株式会社 取締役
山西 幸男
光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。
PSE認証の義務を「誰が」「いつ」負うかを当事者別・時点別に整理し、海外認証との関係や『更新』の意味など、既存記事にない実務論点を一次情報に基づいて解説します。
この記事の監修
旭光通商株式会社 取締役
山西 幸男
光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。
目次
この記事では、PSEの義務を「誰が」「いつ」負うのかという二つの軸で整理します。製造事業者・輸入事業者・販売事業者という当事者別の違いと、事業開始から販売後までの時点別のタイミングを掛け合わせて解説し、既存記事では扱いきれていない「海外認証との関係」「PSE認証の更新の実態」に焦点を当てます。製品カテゴリ別の該当性判定はPSEとCE安全性認証の違いと取得方法、申請手順・試験項目・期間の目安はPSEマーク取得完全ガイド|電気製品輸入から販売までの手順にそれぞれ譲り、本記事では扱いません。
「PSE認証」は検索語として広く定着していますが、電気用品安全法の条文上は単一の「認証」処分という制度ではありません。法律上は、事業届出・技術基準への適合義務・(特定電気用品のみ)登録検査機関による適合性検査・表示という、複数の義務の束として構成されています。同様に「PSE申請」という通称も、法的には行政庁の許可を待つ「申請」ではなく、期限内に行う「届出」にあたります。本記事でも検索性を考慮し「PSE認証」「申請」という通称を使いますが、実務では上記の義務の束として捉えることが重要です。
PSEの義務は、事業者の立場(当事者)と時系列上のタイミング(時点)の組み合わせで発生します。まずは当事者別の義務の所在を整理し、続けて時点別の発生タイミングを確認します。
電気用品安全法における義務の重さは、「自ら製造・輸入するか」「仕入れて売るだけか」で大きく異なります。下表は、電気用品安全法第3条・第8条・第9条・第10条・第27条を根拠に、当事者別の義務の有無を整理したものです。
表1: 当事者×義務のマトリクス
| 義務 | 製造事業者 | 輸入事業者 | 販売事業者(仕入れて販売のみ) |
|---|---|---|---|
| 事業届出(法第3条) | 必要(事業開始日から30日以内) | 必要(事業開始日から30日以内) | 不要 |
| 技術基準適合義務・自主検査(法第8条) | あり | あり | なし |
| 適合性検査(特定電気用品のみ、法第9条) | 該当品目のみ必要 | 該当品目のみ必要 | なし(自ら検査を受ける立場にない) |
| 表示(法第10条) | 義務履行後に付すことができる | 義務履行後に付すことができる | 表示が付されていることを確認する義務のみ |
| 販売の制限(法第27条) | 表示のない製品は販売不可 | 表示のない製品は販売不可 | 表示のない製品は販売不可 |
表示のない電気用品の販売が禁じられている点(法第27条)は、当事者を問わず共通の制約です。一方で、事業届出そのものは製造事業者・輸入事業者にのみ課され、仕入れて販売するだけの事業者には課されません。この違いを理解しておくと、自社がどこまでの義務を負うかを判断しやすくなります。
義務は一度にまとめて発生するのではなく、事業開始・製造や輸入・販売開始まで・販売後の各段階で順に生じます。下図は、この時系列を当事者別に示したものです。

ここで実務上見落とされやすいのが「事業開始の日」の捉え方です。経済産業省の案内によれば、事業開始の日には製品が完成・輸入された日だけでなく、事業のための準備行為や社内の意思決定日も含まれ得るとされています。そのため、製品化の直前になって届出を検討するのではなく、事業計画の段階から義務の発生時点を意識しておくことが望ましいといえます。また、適合性検査と表示は「当該特定電気用品を販売する時まで」に行う必要があります(法第9条第1項)。つまり、販売行為が最終的な義務充足の締切にあたる点も押さえておく必要があります。
輸入事業者が外国に所在し、日本国内に営業所を持たない場合は「特定輸入事業者」として扱われ、通常の輸入事業者とは異なる手当てが必要です。この場合、法第3条第2号・第8条第3項および第4項に基づき、国内管理人の選任と届出が求められます。特定輸入事業者は法第10条第1項の直接の対象ではなく、第10条第2項により、国内管理人による義務履行の確認を経た上での表示規定が置かれています。海外の親会社・製造元が日本国内に拠点を持たない体制で輸入を行う場合は、この国内管理人の要否を早期に確認しておくことが実務上のポイントです。なお、特定輸入事業者の輸入に係る電気用品関係報告規則(令和7年経済産業省令第9号)は新設された省令です。具体的な施行日・対象範囲は本記事では確認できていません。該当する可能性がある場合は、経済産業省の公表情報をご確認ください。
海外拠点を持つ事業者や、CE・ULなど海外認証を既に取得している事業者からよく聞かれるのが「海外の認証があればPSEは不要になるか」という疑問です。結論としては、CEマークやUL認証を取得していても、それだけでPSEの義務が免除されるわけではありません。PSEとCEはそれぞれ異なる法域・技術基準に基づく制度であり、一方の認証がもう一方の義務を自動的に代替する関係にはないと解されます。
一方で、電気製品分野には「相互承認協定(MRA)」という別の枠組みが存在します。経済産業省の資料によれば、日本はEU・シンガポール・フィリピン・タイ・英国と政府間の相互承認協定を締結しており、台湾とは民間の相互承認取決めがあります(米国とのMRAは電気通信機器が対象で、電気製品は含まれません)。法第9条第3項も、外国との相互承認の実施に関する法律に基づく証明書を引用しています。ここで正確に理解しておきたいのは、MRAが「試験を行う適合性評価機関」を相互に認め合う枠組みだという点です。EU圏などの認定機関が、日本の技術基準に対して検査を実施できるようにするものであり、「CEマークがあれば日本の技術基準に自動的に適合したとみなされる」という基準内容そのものの同一視ではありません。したがって、「PSEとCEに相互承認は一切ない」と言い切るのも、「CEがあればPSEは不要」と言い切るのも、いずれも実態とはズレがあります。MRAの対象となる具体的な品目・登録検査機関・実務フローの詳細は本記事では確認できていません。個別の製品・取引形態に応じて、経済産業省または登録検査機関にご確認ください。
なお、技術基準の適合確認には、日本独自の系譜である解釈通達別表第一〜第十一のほか、別表第十二「国際規格等に準拠した基準」という国際整合基準ルートも選択肢として用意されています。JISはこの国際整合基準側に組み込まれる形で使われることが一般的ですが、具体的な光源関連のJIS規格番号と別表第十二との対応関係は本記事では確認できていません。適用を判断される際は、解釈通達の原文をご確認ください。また、「JISに適合していれば自動的にPSEの基準も満たす」というわけでもありません。PSEとCEの機能面での違いそのものについては、こちらの解説記事で詳しく解説しています。
「PSE認証 更新」という検索語は多く見られますが、この言葉が指す内容は文脈によって異なります。整理せずに扱うと、表示そのものに有効期限があるかのような誤解につながりやすいため、以下の3つを分けて理解しておく必要があります。
表2: 「更新」という語が指しうる3つの意味
| 意味 | 内容 | 該当する条文・制度 |
|---|---|---|
| ① 特定電気用品の適合性証明書の有効期間 | 同一型式について既に証明書の交付を受け保存している場合、政令で定める期間(品目により3〜7年)を経過していなければ、その期間内は適合性検査が不要となる規定。裏を返せば、期間経過後は再度の適合性検査が想定される | 法第9条第1項ただし書、電気用品安全法施行令 別表第一 |
| ② PSEマーク(表示)自体の有効期限 | 適法に付された表示そのものに、一律の有効期限が設けられているわけではないと解されます。表示が自動的に失効する制度ではありません | 法第10条 |
| ③ 登録検査機関自身の「登録の更新」 | 適合性検査を行う登録検査機関側の登録更新であり、届出事業者やPSE表示の更新とは無関係の制度です | 法第32条 |
このうち、実務担当者が気にするべきなのは主に①です。特定電気用品(116品目)については、証明書の有効期間管理が必要になる場面があります。一方、特定電気用品以外(341品目)にはそもそも証明書制度が存在しないため、「更新」という概念自体が当てはまりません。有効期間経過後の具体的な再手続きの実務フローについては、条文構造からの帰結は確認できたものの、実務案内としての一次情報は確認できていません。再手続きが必要になる場面では、所管の経済産業局または登録検査機関にご確認ください。保管すべき書類や、仕様変更時の再対応の具体的な手順については、PSEマーク取得完全ガイド|電気製品輸入から販売までの手順もあわせてご確認ください。
PSE対応の着手前に、当事者・時点・海外関係・更新の実態という本記事の論点を踏まえたチェック項目を整理しました。個別の該当性判断には使えませんが、確認漏れの防止にお役立てください。
表3: 着手前確認チェックリスト
| チェック欄 | 確認項目 | 確認先の目安 |
|---|---|---|
| □ | 自社製品が電気用品安全法施行令の対象457品目(特定電気用品116品目・特定電気用品以外341品目)に該当するか | 施行令 別表第一・別表第二 |
| □ | 該当する場合、特定電気用品か特定電気用品以外かの区分 | 施行令 別表第一・別表第二 |
| □ | 自社の立場(製造・輸入・仕入れ販売のみ)に応じた義務範囲 | 本記事 表1 |
| □ | 事業開始の日をいつと捉えるか(準備行為・意思決定を含む可能性) | 経済産業省の届出・手続き案内 |
| □ | 特定輸入事業者に該当する場合の国内管理人の選任・届出 | 法第3条第2号・第8条第3項および第4項 |
| □ | 適用する技術基準(別表第一〜第十一、または別表第十二の国際整合基準)の選択 | 技術基準省令の解釈通達 |
| □ | 特定電気用品の場合、適合性証明書の有効期間(品目により3〜7年)の管理体制 | 施行令 別表第一 |
| □ | 海外認証(CE・UL等)取得済みでも、別途PSE対応が必要という前提の社内共有 | 本記事「3. 海外の認証があればPSEは不要か」 |
| □ | 届出・適合性検査のスケジュールを登録検査機関に早期相談しているか | 登録検査機関 |
Q1: PSEはすべての電気製品に必要ですか?
A1: 対象となるのは電気用品安全法施行令が個別に指定する457品目(特定電気用品116品目・特定電気用品以外341品目)のみであり、すべての電気製品が対象ではありません。完成品としての照明器具は多くの場合「特定電気用品以外」に区分されます。一方、内蔵する安定器・ソケット等の部品単体は「特定電気用品」に該当するケースもあるため、個別の確認が必要です。自社製品がどの区分に当たるかは、施行令別表の文言と製品仕様を照らし合わせた個別判断になります。
Q2: 「PSE認証の更新」は必要ですか?
A2: PSEマーク(表示)自体に一律の有効期限が設けられているわけではなく、適法に付された表示が自動的に失効することはないと解されます。一方で、特定電気用品については適合性証明書に品目ごとの有効期間(3〜7年)があり、期間経過後は再度の適合性検査が想定される構造です。この2つを区別せずに「更新」とひとくくりにすると誤解につながるため、自社製品がどちらの話に当たるかを確認することが重要です。
Q3: CEマークやUL認証を取得していればPSEは不要ですか?
A3: 不要にはなりません。PSEとCE・ULはそれぞれ異なる法域・技術基準に基づく制度であり、一方の認証がもう一方の義務を自動的に代替する関係にはないと解されます。ただし、電気製品分野には相互承認協定(MRA)という別の枠組みがあり、日本はEU・シンガポール・フィリピン・タイ・英国と政府間協定を締結しています。これは適合性評価機関の相互承認であり、基準内容そのものを同一視するものではない点に注意が必要です。
Q4: 海外メーカーから仕入れて販売するだけの場合、事業届出は必要ですか?
A4: 自ら製造・輸入をせず、国内で仕入れて販売するだけの立場であれば、事業届出は不要と整理されます。ただし、表示が付されていることを確認する義務は残ります(法第27条)。一方、自社が輸入者としての立場を兼ねる場合(海外メーカーから自社名義で直接輸入する等)は、輸入事業者としての届出義務が生じるため、取引形態を正確に把握しておく必要があります。
Q5: 申請から取得までどのくらいかかりますか?
A5: 一律の日数を提示することはできません。事業届出は許可を待つものではなく、期限内に行う届出です。一方、特定電気用品の適合性検査は登録検査機関のスケジュールや試験項目数に左右されます。この性質の異なる2つの手続きが含まれるため、具体的な期間の目安についてはPSEマーク取得完全ガイド|電気製品輸入から販売までの手順、および登録検査機関への早期相談をおすすめします。
PSEの義務は、製造事業者・輸入事業者・販売事業者という当事者の違いと、事業開始から販売後までの時点の違いによって、負う範囲が変わります。海外拠点がある輸入事業者は国内管理人の要否を、海外認証を取得済みの事業者はMRAの正確な位置づけを、それぞれ確認しておく必要があります。「PSE認証の更新」という言葉も、適合性証明書の有効期間・表示自体の有効期限・登録検査機関の登録更新という3つの異なる制度を指し得るため、混同しないことが重要です。個別の該当性判断や、申請手順・試験項目・期間の目安については、既存の関連記事もあわせてご確認ください。
PSE対応の要否判断や義務の整理、光安全性に関わる測定・校正のご相談は、お気軽にお問い合わせください。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 電気用品 | 電気用品安全法施行令が個別に指定する457品目の総称。すべての電気製品を指す言葉ではない |
| 特定電気用品 | 施行令別表第一が定める116品目。事業届出に加え、登録検査機関による適合性検査が必要 |
| 特定電気用品以外 | 施行令別表第二が定める341品目。事業届出は必要だが、登録検査機関の関与はなく自主検査による |
| 事業届出 | 事業開始日から30日以内に経済産業大臣(実務上は管轄の経済産業局等)へ行う届出。許可を待つものではない |
| 適合性検査 | 特定電気用品について、登録検査機関が技術基準への適合を確認する検査。証明書の交付・保存が必要 |
| 表示(PSE表示) | 事業届出・技術基準適合等の義務を履行した後に付すことができる表示。表示のない製品の販売は禁止されている |
| 相互承認協定(MRA) | 適合性評価機関を相互に認め合う政府間の枠組み。基準内容そのものを同一視するものではない |
| 国内管理人 | 日本国内に営業所を持たない特定輸入事業者が選任する、義務履行の管理を担う国内の担当者 |
| 特定輸入事業者 | 外国に所在し日本国内に営業所を持たずに輸入事業を行う事業者 |
| 解釈通達 | 技術基準省令の適用解釈を示す経済産業省の通達。日本独自の別表と国際整合基準の別表を選択制で規定する |
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