旭光通商株式会社 取締役
山西 幸男
光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。
LED・レーザー・UV光源を搭載した医療機器を開発するスタートアップ・新規参入企業向けに、量産前に実施すべきリスクアセスメントの基本的な考え方と、光安全性評価を設計プロセスに組み込むポイントを解説します。
この記事の監修
旭光通商株式会社 取締役
山西 幸男
光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。
目次
光を使う医療機器のスタートアップでは、試作品の機能検証や資金調達に注力するあまり、安全規格対応・リスクアセスメント・光安全性試験が後工程に残りやすくなります。
この記事では、量産直前の大規模な設計変更を防ぐために、試作段階から並行して進めるべきリスクアセスメントのポイントを解説します。
光源搭載医療機器のスタートアップで、量産直前に発生しやすい典型的な手戻りを整理します。
① 光安全性試験で予想外のリスクグループ・クラスが判明 最終製品での測定を初めて行ったところ、想定より高いリスクグループになり、追加の安全機構(インターロック・遮光カバー等)が必要になる。
② 薬機法上のクラス分類が想定と異なる 医療機器クラスが想定より上のクラスに該当し、承認プロセスが必要になる。承認申請に必要な試験・書類が不足しており、大幅なスケジュール遅延が発生する。
③ 電気安全と光安全の試験が別々になり手戻りが発生 IEC 60601-1(電気安全)とIEC 62471/60825(光安全性)を別々のタイミングで試験したため、筐体設計を変更する必要が判明し、再試験が必要になる。
④ EU展開を後から計画し、設計変更が発生 国内向け設計後にEU展開を計画したところ、MDRの技術文書要件やEN規格の測定条件が国内試験と異なり、追加の設計対応と試験が必要になる。
医療機器のリスクアセスメントは、ISO 14971(医療機器のリスクマネジメント)に基づく考え方が基本となります。光源搭載機器では、光放射リスクがリスクアセスメントの重要な要素になります。
リスクアセスメントでは、通常使用だけでなく合理的に予見可能な誤使用・異常状態も対象とします。
| 対象者 | 確認する使用シナリオの例 |
|---|---|
| 患者(直接使用者) | 正常な照射・意図しない過照射・アレルギー・皮膚タイプによる個人差 |
| 医療従事者(操作者) | 正常操作・誤操作・メンテナンス中の曝露・保護具の使用 |
| 第三者 | 施術室内の別の患者・補助者・偶然通りかかった人 |
| 保守担当者 | ランプ交換・センサー調整時の曝露 |
試作品が完成したら、以下の測定・確認を早期に実施することで、量産設計への反映が間に合いやすくなります。
| 測定項目 | 目的 |
|---|---|
| 分光放射照度(SPD)の取得 | 評価が必要なハザード種別の特定(UV・BLH・IR等の有無確認) |
| 最大出力・照射距離の確認 | リスクグループ・クラスの概算 |
| 使用温度・放熱の確認 | 熱ハザードの概算と設計への反映 |
スクリーニング段階の結果を持って試験機関に相談することで、正式試験の測定条件と試験スケジュールが確定しやすくなります。
リスクアセスメントで光安全性上のリスクが特定された場合、以下の優先順位で設計対策を検討します。
1. 固有の安全設計(本質的安全設計) 光源の出力を下げる・使用距離を広げる・光学系を変更するなど、リスクの発生源を設計で低減する。
2. 保護手段の付加 インターロック・遮光カバー・タイマー・センサーなどの安全機構を製品に組み込む。
3. 使用者への情報提供 警告ラベル・取扱説明書・使用者教育によって残留リスクを管理する。
これらの対策は後付けより設計初期に組み込む方がコストが低いため、リスクアセスメントの結果を受けて設計仕様書を更新するサイクルを確立することが重要です。
スタートアップが陥りやすい「薬事・品質・試験を後工程に回す」パターンを避けるために、以下のような並行計画が有効です。
| フェーズ | 推奨する並行タスク |
|---|---|
| 企画・コンセプト段階 | 薬機法該当性の初期確認、適用規格の候補整理、試験機関の選定開始 |
| 試作(Proof of Concept) | SPD測定、リスクアセスメントの初版作成、PMDA事前相談の検討 |
| 試作品(Prototype) | 光安全性スクリーニング試験、設計レビューへのリスク評価結果反映 |
| 検証試作(Verification) | 正式試験依頼、添付文書・ラベルの試作 |
| 量産試作(Validation) | 最終試験・薬事申請書類の整備 |
試験機関・薬事コンサルタント・PMDAへの初回相談で以下の資料を用意しておくと、相談の精度と効率が上がります。
Q1. まだ試作品もない段階で相談できますか?
製品コンセプト(光源の種類・用途・使用者)が固まっていれば、試作品がない段階でも「適用規格の候補整理」「薬機法該当性の初期確認」「試験スケジュールの大まかな把握」について相談することが可能な場合があります。早期相談は量産スケジュールを守る上で有効です。
Q2. スタートアップはPMDAに直接相談できますか?
PMDAは「薬事戦略相談」など、開発初期段階の製品についての相談制度を設けています。相談の形式・費用・準備資料については、PMDAの公式情報を確認してください。
Q3. QMS(品質マネジメントシステム)の整備はいつから始めるべきですか?
医療機器製造販売業の許可取得にはQMSの整備が必要です。開発と並行して早期に着手することが推奨されます。QMS整備は時間がかかるため、量産スケジュールの逆算から計画することが重要です。
ISO 14971:2019(医療機器リスクマネジメント), IEC 62471:2006, IEC 60825-1:2014, PMDA(医療機器クラス分類)(各一次情報は公式サイト・IECウェブストアで確認してください。)
試作品段階の仕様でも、
量産前に確認すべき光安全性リスクを洗い出せます。
製品概要と光源の情報をご共有ください。
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