LED治療器の光安全性評価|IEC 60601-2-57とIEC 62471の違い

JIS Q 17025(ISO/IEC 17025)認定校正機関

非レーザー光源を搭載したLED治療器・光線治療器・美容医療機器の開発者向けに、IEC 60601-2-57とIEC 62471の適用範囲・違い・使い分けを実務担当者向けに解説します。

この記事の監修

山西 幸男

旭光通商株式会社 取締役

山西 幸男

光学技術製品の国際貿易におけるリーディングエキスパートとして、多くの日本企業の海外市場への進出をサポートしてきました。光安全性リスク評価の分野においても深い知識を有し、製品の国際基準適合性を確保するためのコンサルティングサービスを提供しています。

この記事でわかること

LED治療器・光線治療器・美容医療機器の開発で、「IEC 62471で評価すればよいのか、IEC 60601-2-57も必要なのか」という判断に迷う担当者は多くいます。

この記事では、非レーザー光源を搭載した医療・美容機器を対象に、両規格の適用範囲・違い・使い分けの考え方を実務視点で整理します。

要点まとめ:IEC 62471は広帯域光源全般の光生物学的安全性の基本的な枠組みを示します。IEC 60601-2-57は医療・美容目的で人体に光生物学的作用を意図する機器の個別安全規格です。医療・美容機器では両方の適用可能性を初期段階で確認することが推奨されます。

LED治療器・光線治療器とは

LED治療器・光線治療器は、特定波長の光エネルギーを人体の皮膚・組織に照射し、治療・緩和・美容目的の効果を得ることを意図した機器の総称です。主な用途例として以下が挙げられます(用途によって薬機法上の扱いが異なります。)。

  • 皮膚科・形成外科での光線療法(創傷治癒促進・炎症抑制等)
  • 美容医療・エステでの光照射(肌質改善・毛穴・色素沈着等)
  • 歯科での光重合・歯科用光線治療
  • 疼痛緩和・リハビリ領域での低出力レーザー療法(LLLT)に近い光線療法

これらの機器では、治療・美容効果を高めるために通常照明より高い出力・近い距離・長い照射時間が設定される場合があり、光安全性評価の考え方が一般照明と異なります。


IEC 62471 とは:非レーザー光源の光生物学的安全性の基本規格

IEC 62471(JIS C 7612に対応)は、レーザー以外の広帯域光源(LED・ランプ・IPL等)を対象とした光生物学的安全性評価の国際規格です。

IEC 62471で評価する主なハザード:

ハザード 主な対象波長 評価対象
紫外線ハザード 200〜400 nm 皮膚・眼
近紫外線ハザード 315〜400 nm 眼の水晶体
ブルーライトハザード 300〜700 nm 網膜
網膜熱ハザード 380〜1400 nm 網膜
赤外線ハザード 780〜3000 nm 眼の角膜・水晶体
皮膚熱ハザード 380〜3000 nm 皮膚

リスクグループ(Exempt/RG1〜RG3)に分類し、制限値との比較で評価します。

IEC 62471の主な適用対象: 照明器具・ディスプレイ・産業用光源・広帯域の医療機器全般


IEC 60601-2-57 とは:医療・美容目的機器の個別安全規格

IEC 60601-2-57(最新版:2023年)は、200〜3000 nmの非レーザー光源を用いて、人体に光生物学的作用を意図する医療・美容目的機器を対象とした個別安全規格です。IEC 60601-1(医療用電気機器の一般安全規格)の個別要求規格(Part 2)に位置付けられます。

IEC 60601-2-57では、以下の要素が特に重要視されます:

  • 治療出力と安全上の光放射出力の分離した管理
  • 照射面積・照射時間・インターバルの制限機能
  • 操作者・患者への誤照射に対する保護
  • 皮膚タイプ・使用部位に応じた安全設計の考え方
  • 添付文書・警告表示・使用者教育の要件

両規格の主な違いと関係

比較項目 IEC 62471 IEC 60601-2-57
対象光源 非レーザー広帯域光源全般 非レーザー光源(医療・美容目的機器)
対象機器 照明・産業・医療機器全般 医療・美容目的の光照射機器に特化
機器規制 光生物学的安全性評価の枠組み IEC 60601-1の個別要求規格
使用目的 光から人を守ること 医療・美容目的で人体に光を作用させること
電気安全 規定なし IEC 60601-1の電気安全要件に従う
適用文脈 一般安全規格として広く適用 医療機器の製品適合・試験計画に適用

関係性のイメージ: IEC 62471はすべての非レーザー光源機器に適用される光生物学的安全性の基本的な評価方法を提供し、IEC 60601-2-57は医療・美容目的機器に対してより詳細な要求事項を追加します。両規格は排他的ではなく、補完的に適用される場合があります。


使い分けの考え方:開発時の判断フロー

以下は一般的な判断の参考として示すものであり、最終的な適用規格の判断は製品の詳細仕様と試験機関・専門家との確認が必要です。

STEP 1:製品の使用目的を確認する

  • 照明や一般産業用途 → IEC 62471を主規格として検討
  • 医療・美容目的で人体に光を照射する機器 → STEP 2へ

STEP 2:薬機法上の医療機器該当性を確認する

  • 医療機器に該当する可能性がある → IEC 60601-2-57の適用を試験機関と協議
  • 医療機器に該当しない場合 → IEC 62471を主規格として適用可能か確認

STEP 3:試験機関と測定条件を事前合意する

  • 照射距離・時間・面積・モード(CW/パルス)を具体化
  • 両規格のどの項目を試験に含めるかを確定

開発・申請計画に組み込むポイント

  1. 試験計画は開発設計レビューと同時に立てる

光量・照射面積・波長が確定した段階で試験計画を策定することで、後工程の設計変更を防ぎやすくなります。

  1. IEC 60601-1の電気安全要件も並行確認

IEC 60601-2-57はIEC 60601-1(電気安全一般要求規格)の上位適用を前提としています。電気安全と光安全の試験は同時期に依頼することで試験効率が上がる場合があります。

  1. 添付文書・警告表示との整合

IEC 60601-2-57では使用者への情報提供(添付文書・ラベル・警告表示)についても要件があります。規格要件と製品表示の整合は量産設計前に確認します。


よくある質問(FAQ)

Q1. 美容目的のLED機器でも IEC 60601-2-57 は必要ですか?

製品の使用目的、薬機法上の医療機器該当性、販売市場(国内・EU・米国等)によって異なります。美容目的であっても、医療行為に該当する効能を標榜する場合や、EU市場ではMDR下でIEC 60601シリーズの適用が求められる場合があります。試験機関や薬事専門家への確認が推奨されます。

Q2. IEC 62471だけで国内市場には対応できますか?

国内の光安全性評価としてはIEC 62471(JIS C 7612)が基本的な評価規格ですが、製品が医療機器に該当する場合はPMDA手続きが別途必要です。また、PSE(電安法)対象製品の場合は電気安全の確認も必要です。

Q3. IEC 60601-2-57 の最新版(2023年版)で何が変わりましたか?

IEC 60601-2-57:2023は2011年版の改訂版です。適用範囲・定義・試験方法等が更新されていますが、具体的な変更点については規格原文および試験機関に確認することを推奨します。



参考文献・参考規格

IEC 60601-2-57:2023, IEC 62471:2006, IEC 60601-1:2005+AMD1:2012(各一次情報は公式サイト・IECウェブストアで確認してください。)

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